森村ゆき


12月30日神奈川県横須賀市生まれ。

Runforsmile(株)
「体を動かす喜びを」をテーマに事業展開

一般社団法人PARACUP代表理事
PARACUPは、毎年4月に「PARACUP~世界の子どもたちに贈るRUN」
http://www.paracup.info/
秋に「PARACUP SENDAI in SENDAI AIR PORT」
http://www.paracupsendai.info/
を開催

マラソンを走る&作る。
走る×チャリティー。
作る人を作る。
フルマラソンベストタイム3時間12分。
大阪国際女子マラソン出場。

県立八千代高校の体育科から
日本女子体育大学へ進学し、バスケットボール部に所属。
リクルートコスモス→さくら事務所→笹川スポーツ財団を経て
現在

趣味:ランニング、サイクリング、運動全般。
海が好き。
(2013年5月 自由が丘「ラ・ボエム」にて)

専門性を突き詰めすぎることは、人間の脳を退化させる

(清水宣晶:) 今日って、なに、
ここに来る前に水泳してきたの?

(森村ゆき:) そう、勝どきのプールで、
2000m泳いできた。

それスゴいね!
何時に起きたってこと?


5時22分の電車に乗ったから、
起きたのは4時過ぎくらいかな。

根性あるよなあ。
もう今日、午前中だけで既に
一日分の活動してるんだな。

私、8月にトライアスロンの大会に出るからさ。
それに向けてのトレーニング。

よくまた、本格的に
トライアスロンをやろうと思ったね。

幅が広がって、
面白そうだなと思って。

トライアスロンだと、
ランニングの走り方も変わるってこと?

走り方は違わないんだけど、
やってる人の層が変わる。
だから、出会う人が変わるっていうことだね。
それが楽しい。

あ、なるほど!
それはよくわかるよ。


ランニングばっかりの世界から、
ちょっと環境を変えてみようって思った。

相変わらず、
常に新しいフィールドを求めてる感じだよなあ。

この前、たかじん(佐々木孝仁)に教えてもらったんだけど、
専門性を突き詰めすぎることは、人間の脳を退化させるんだって。
それ聞いて、「そうそう!」と思って。

世界が狭くなっちゃうんだね。

そんなこと言いながら、いろんなことをやることを、
自分で正当化してるんだけどさ(笑)。

走ることでわかったこと

さて、、じゃあそろそろ、
話しを聞かせてもらおうかな。

なにを聞きたいの?

ゆきの、今に至るルーツみたいなことかな。
前回インタビューしたのは、
もう5年ぐらい前だけど、
その時は、あんまり踏み込めなかったから。

そうだっけ?
結構踏み込んでたような気もするけど。

今日はさらに、
森村ゆきの、根本のところから話しを
聞かせてもらおうと思って。

あはははは!
それ、なんか怖いね(笑)。


パラカップを一番最初に、
もりりん(森村隆行)たかまさ(池本多賀正)
立ちあげようと思った時ってさ、
一緒にホノルルマラソンを走ったのが
きっかけだったんだっけ?

私、2003年の4月にもりちゃんと出会って、
8月にいけちゃんと出会ってるのね。
その頃に、私が、
「ホノルルマラソン走ってみたいと思ってるんだよね」
って言ったら、いけちゃんも、
「僕も走ってみたいと思ってるんだよ」って言ってて。
で、翌年の12月にみんなで参加することになったの。

うんうん。

今でも忘れられないんだけど、渋谷の「権八」にいた時、
締切ギリギリで、いけちゃんだけ申込が終わってなくて。
「今すぐ申し込まないと間に合わない」って言って、
その場ですぐにエントリーして、飛行機予約してさ。

ぶははは!
ギリギリ、申込み間に合ったんだね。

それで、みんな完走したんだけど、
初めてだったし、やっぱり、感動するよね。
達成出来てよかったっていうのがあるじゃん。

フルマラソンの初完走の時って、
すごく記憶に残るだろうね。

そのとき何を感じるかっていうのは、
人によって、それぞれ違うと思うんだけど。
私は、学生の時からずっとスポーツをやってきて、
スポーツって、ほんとに素晴らしい人間性を作ってくれる、
って思ってたから、純粋に、嬉しかったのね。


それは、どういうんだろう、
「スポーツが、人の人生に影響を与えてる」
っていうような嬉しさなのかな。

そうそう。
世の中で、スポーツの地位が低いっていうか、
あんまり価値が認められてないことが、
すごくイヤだったの。

その頃はまだ、マラソンをする人の数も、
今ほど多くなかったからね。

今の時代はちょっと変わってきてるけど、
自分が就職活動をした時って、
スポーツをしてたってことが全然評価されなくて。
その辺で遊んでた学生のほうが評価が高かったっていうことが、
私は気にくわなかったし、コンプレックスだった。

それは、かなり興味ある話しだよ。
そんなコンプレックスを持ってたことあったんだな。

だから、悔しくて仕事を一生懸命やってたの。
仕事が出来るようになることが、
自分を認めなかった人たちを見返すことで、
人生を幸せに生きるための手段だと思ってたから、
ほんとに、仕事ばっかりやってて、
それ以外の選択肢がなかった。

うんうん。


でも、走ったら、
それだけじゃないかもな、って思って。
やっぱり、頑張るっていうこと自体は、
素晴らしいことだし、必要なことだ、
って、その時に感じたのね。

自分の、身体の実感として、
そういうことを感じたんだな。

同じように、仕事ばっかり頑張ってる人とか、
頑張りたくても頑張りきれない人にも、
こういう、走る達成感を味わうことで、
なにかが芽生えるかもしれないって思った。

高校時代や大学時代の同級生たちって、みんな、
全国大会目指して死ぬ気で、バスケットとかサッカーとかやってたけど、
その子たちが社会人になった時に、しがないオヤジになって、
「仕事が大変でさあ」とか言って、
自分の限界を決めちゃってるのとかを見たくないわけ。

飲み屋でグチを言ってるような
オヤジになってほしくないんだな。

もう一回、体使って走れば、当時の気持ちが蘇って、
頑張れる気持ちになれるかもしれないと思ったから、
そういう人たちこそ、私は走ってほしいって思ったの。
そんな欲求で、私はもっとたくさんの人に、
この感覚を味わってほしい、って思ったのね。
昔持ってた、頑張る気持ちとかを思い出してほしいな、と。

それは、昔の同級生たちが走って、
何か変化が生まれたら、嬉しいだろうね。


そう、みんなが口ぐちに
「走るってすごい気持ちいいね」って言うことに対して、
「ほら、やっぱりそうじゃん」って思いながら、
そういうふうに言ってくれて嬉しいなって思ってるわけ。

根性の使い方

ゆき、大学までずっと、
バスケットボールやってたでしょう。
その時っていうのは、将来どうするって、
何か考えてたことあったの?

その時は、
何にも考えてなかった。
私、高校にはバスケの推薦で入って、
それで、部のキャプテンをやってたんだけど、
なんか、あまり結果を出せなかったっていう、
不完全燃焼な感じが残って。
自分がどこまで出来るのか試したくて、
体育大学に進学したんだよね。

熱い!!

その期間にしか出来ないことに集中したい、
っていうのが理由だったから、
大学でバスケットやって、
その後どうする、っていうことは考えずに、
とにかく入っちゃった感じなんだよね。

じゃあ、バスケを大学でやりきった後、
突然、現実がやってきたような感じだった?


終わった時点で、さてどうしよう、だよね。
就職の仕方っていうのが、わからなかったの。
世の中のことがわかってないから、
業種とか言われてもわかんないし。
バカみたいな話しなんだけど、
会社で何やってるのかとかまったく知らなかったから、
会社なんてどこも同じじゃん、って。

そうか、わかんなすぎて、
もう、どこ行っても一緒じゃん、と。

OB訪問すれば、とか言われたんだけど、
周りの先輩で就職してる人っていなかったし、
アルバイトなんかをする時間もなかったから、
社会のことがわからないままなんだよね。

それで、
就職活動はどうなったの?


結局、その時は就職しなかったの。
一社だけ受けて、
これは私には向かない、って思って。

(笑)一社だけでわかっちゃった?

はなから私が相手にされてないっていうのを実感した。
興味を持たれてないのって、雰囲気でわかるじゃん。
それがわかったら、傷つくだけ馬鹿馬鹿しいと思って、
そこでやめちゃった。

そんなことがあったのか。

あと、昔って、
電話で会社説明会を申し込んでたじゃない?
電話した時、人事の担当の人に
「文系ですか?理系ですか?」って聞かれて、
困ってモゴモゴ言ってたら、
「何学部なんですか?」
「体育学部です。」
「受け付けておりません!」って言われて。

ぶはははは!
人事の人からしたら、
完全に異色の学生だったんだろうね。

明らかに土俵に乗れてないなって実感した。
こりゃ、やるだけ無駄だなと。
で、もう、就職のことはいったんリセットして、
自分の好きなことを考えた時、
住宅とかインテリアかな、って思って。
バイトしながら、インテリアの専門学校に入ったの。
その時、リクルートコスモスの、
モデルルームの受付のバイトとかもしてて。
欠員が出たから、契約社員として入ったんだよね。

それは、事務職として入ったの?

そう、その時は、
総合職と事務職の違いも知らずに入ったんだけど、
3ヶ月くらい仕事して、
この仕事は私じゃなくて他の人でも出来る、って感じちゃって。
同時に、同期の子たちがガンガン活躍してるのがうらやましくて、
別のフィールドでがんばりたい!って、
こっそり転職活動をしたりしてた。
結局、転職せずに、
同じ会社で営業職に転向することになったんだけどね。

ゆきに、そんな時代があったとは、
知らなかった。
なんか、想像つかないよ。


そういう意味では、ほんとに、
私は落ちこぼれだったんだと思う。
とにかく、世の中のことを知らなすぎる、っていう。

学生時代ずっと、遊びもせず、バイトもせず、
ひたすらバスケだけをやりつづけてたわけだからなあ。

社会との接点が無さすぎだったんだよね。
仕事をし始めてから、
毎日が「へぇ~」の連続だった。

社会人一年目でも、わからないなりに、
こなすのが上手い人ってのもいるよね。

そう、今、学生と話しすると、
自分がどんな仕事したいかとか、
結構みんなわかってるじゃん?
それがスゴいなと思って。
それはやっぱり、
いろんな人との関わりの中でわかるんだよね、と思う。

そうだね。

専門性に特化しすぎるっていうのは、
やっぱりよくないよ。
いろんなことしたほうがいいよ。

でも、一つのことをひたすらやり続けたことで
得られたものっていうのもあるんじゃない?

そうね・・あるとしたら、
根性がついた、っていうことかな。

それも重要なことなんじゃないかな。
知識とか経験は後から補えても、
根性って、後からそう簡単には身につかないから。
だから、大手の商社とかで、
体育会系出身の人を採用したいって会社、
たくさんあるでしょう。

その、根性の使い方が難しいんだよ。
そこがブレークスルー出来るかどうかの大きな壁で。

ほうほうほう!
根性の使い方。

スポーツはさ、全員がルールを設定されていて、
コートの中でこういう違反をしちゃいけませんよ、
同じ時間の中でたくさん点が取れたほうが勝ちですよ、
っていうルールがあるじゃない?

そうだね。


私はそれが染み付いちゃってて。
だけど、就職活動においては、ルールも違うじゃない?
開始する時期もよくわからずに、
あれ?スタートしていいって言われてなかった
気がするんだけど
」、みたいな。

(笑)開始の合図を待ってたのに。

仕事もそうじゃん、ルールなんてなくて、
新人で入ったばかりで、やる事わからなかったら、
自分だけ先輩にノウハウを聞きに行くことも
出来るわけだし。

なんでもありだからね。

そう、なんでもあり。
世の中ってそういうもんなんだ、って最初は馴染めなくて。
それで出遅れる、っていうところがあって。
半分ズルいって思う感情もあるんだよね。

そんな勝手にやってよかったんだ!?って。


根性しかない人は、根性の使い方がわかってないからさ、
言われなきゃ出来ないとか、そういう感じなんだよ。
だから、根性がすわってて、プラス、
頭の転換も出来る人っていうのが、
伸びていくんだと思う。

自分でやり方を考える人ってことだね。

そうそう。
為末選手って、スポーツ選手の中でも異端で、
自分で練習メニューを考えて、
クリエイティブなことをし続けてるんだけど、
スポーツ選手って、ほとんどコーチ頼りだったりするからさ。
言われたことをやることで強くなれる、って思ってると、
言われないと出来ないと思う。
私もそういうことあったし、今もたまにあるな。

うんうん。

やり方を教えてさえくれれば、頑張れる自信はあるわけ。
でも、世の中そんなに甘くなくて、やり方なんていうのは、
隣りでは、どんどん先輩たちに聞いてやってるわけだし。

たしかに、社会に出て、
いきなり「何でもあり」の状況になると、
何すればいいかわからなくて戸惑うよなあ。

だから、学生時代に、
一つのことだけをやるんじゃなくて、
ボランティアするでもいいし、
人に会いに行くでもいいし、
世の中のこと見たほうがいいよね、って思う。

どこかで、ゆき自身が、
そのことに気づいた時があったんだね。

私の場合、ありがたかったと思うのは、
リクルートという会社にものすごく手をかけてもらったから、
そこで育ててもらって、救ってもらったっていうのはあるかもね。
あんなにだめな私を、嫌がらずに育ててくれたから、
今は、自分がしてもらったことを
下の世代に、何とか恩返ししなきゃ、って思ってる。

現状維持から外に出る

トライアスロンのこともそうだけどさ、
ゆきは、いつ会っても、
何か新しいことをやろうとしてる感じがして、
それがほんとスゴいと思うよ。

やっぱり、私、
現状維持がすごく嫌いなんだって自覚してて。

回遊魚だからね。
(※「回遊魚」は前回の話しで出たキーワード)

もりちゃんも、いけちゃんも、幸いにも、
次から次へもっと成長しなきゃって頑張ってる人たちだから、
一緒にやってこれたのかなって思う。
これがもし、俺たちはこれでいいよってなってたら、
私はたぶんイヤになっちゃってたし、飽きてたと思うんだけど。

たしかに、そうだな。
あの2人は、いつも、
目標を持って頑張り続けてる感じがするよ。


「自分てスゴいかも」って錯覚するのって気持ち悪いじゃん。
そう思いそうになったら、そうじゃないところに身を置きたい。
もっとスゴい人とか、違う考えの人がいるところに。
そういうほうが、自分を客観的に、
私は何者なのかが見えるっていうかさ。

自分が知らない世界とか、
アウェーな環境に行くのって好き?

そうだね、
もうわかってる世界が好きじゃないのかな。
自分の力を錯覚しちゃうから。
パラカップの仲間でも、チームワークを大事にして、
みんなすごく楽しいのはいいと思うんだけど、
私、それだけを人生の楽しみにしてほしくない。
ものすごく深く関わってほしいけど、
ものすごく外にも出ていってほしいの。

なるほど、なるほど。
なんか、子どもを旅に出す親の気持ちだね。

パラカップの中では素敵な人でも、
外に出たら全然つまんない人ではいてほしくない。
他の団体でも通用する人でいてほしいし、
それって、同じ所に居続けたって得られないんだから。

そうだね。

たとえば、コモンビートに行ってみたら
「全然俺じゃだめかも」ってなったり、
逆にコモンビートで力を発揮するかもしれないし。
それで、戻ってきてもいいし、戻ってこなくてもいい。
戻ってきてほしいけど(笑)。
どこでも生きていけるような素敵な人材に、
私もなりたいし、そういう人たちとつきあいたい。

そういう関係、いいねえ。

「俺たちって、こういうところがスゴいよね」
みたいな会話を聞いてると、壊したくなるよね。


さらに上を目指そう、と。

もっと他を見て「これは面白かったよ」とか教えてほしいし、
「見にいったけど、俺たちここは全然負けてるよ」とか、
そういうことをちゃんと客観的に見てほしいって思う。
なんか、井の中の蛙になってるのってイヤじゃない?
自分もそういうふうになっちゃいけないって思うし。
そういう感じ。
(2013年5月 自由が丘「ラ・ボエム」にて)

清水宣晶からの紹介】
ゆきといると、何をしていても楽しくなってしまう。
常に新しいことを求めて、同じ場所に停滞しているということがなく、その周りにはいつも新鮮な風が吹いているような感じがする。

よく笑い、よくしゃべり、そして、よく動く。
ゆき自身は、自分のやりたいことをやっているだけなのだろうけれど、だからこそ、僕も彼女の前では好きなようにくつろぐことが出来て、それもまた、一緒にいて居心地がいい理由の一つだ。

ゆきはスポーツ・ウーマンの見本のような人で、はきはきとしていて気持ちがいい。
ダンナのもりりんに向かって厳しいことを言うような時には、傍で聞いていてヒヤヒヤすることもあるのだけれど、そこに何の悪意も嫌味もないので、実にあっけらかんとしていて、それで場の空気が悪くなるようなこともない。
これは、ゆきのベースに常に愛情があるからこそ発揮される、大きな才能なんだろうと思う。

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