藤田伸一

2008年4月より2012年までオフショア開発会社代表としてベトナム・ホーチミンに駐在し、現在のベトナムオフショアソフトウェア開発の基盤を構築した。

現在、某教育系企業のシステム開発 統括部長。

前職の株式会社エボラブルアジア(2016年マザーズ上場)は、現在、東南アジア最大の日系オフショア会社である。

広島生まれ、神戸育ち。
早稲田大学 第一文学部 西洋哲学専修を卒業。

その後、日本のコンピューター・システム会社を経て、America Online(AOL)の日本法人で、技術部門の総責任者を務める。

その後、いくつかの会社を創業した後、株式会社デジパに取締役として参画し、単身でベトナムに渡り、オフショア開発ソフトウェア会社 Digiper Vietnam をホーチミンにて立ち上げる。
その後、同法人を売却後、いくつかの会社のベトナムオフショア開発企業の役員を歴任。

2012年には拠点をベトナムから日本に移し、2017年の今はAIやIoTに関心領域を移しつつ、デジタル学習サービスの基幹システムの開発総指揮を取っている。

参考資料:
ベトナム最大規模のオフショア開発会社をゼロから作った藤田伸一氏に聞く、開発プロジェクトを成功へ導く3つの要因
http://engineer.typemag.jp/article/offshore-dev

ベトナムに見た「三丁目の夕日」 単身乗り込みオフショア開発を成功させる 藤田 伸一 氏
http://webmagazine-globalmanager.com/feature/04/10.html

ホーチミン最大の日系大手IT企業をわずか3年で育成
http://kokorozasu.jp/results/interview03.shtml
@poetD 

可能世界宇宙論?

(清水宣晶:) 最近、気になってる思想ってある?

(藤田伸一:) なんといっても、可能世界宇宙論ですね。

えーと、、それはどういう?

いろんな<世界>の分岐がたくさんあったってことですね。
この、(目の前にある)カレーを僕が食べたっていう宇宙もあれば、
食べなかった宇宙もあるという。
それも、リアルに、物理的に、現実的に、「存在する」という意味で。

・・・・・・・うん、質問を変えましょう。
藤田さんは、エキサイティングな人生を望んでる?

・・・・逆に僕のほうから、ちょっと質問を変えたいんですが...

はい。

(※この後、藤田さんは「愛と結婚について」延々と語り始めた。ただし、このの話は、各所からあまりにも多くの反応があったらしく、藤田さんの要請で、2017年現在、公開を控えています。)

新天地ホーチミンへ

じゃあ、その話(愛と結婚についての話)はそこら辺にして、
ベトナムに(2008年)4月から行くっていう話を聞きたいな。

そうそう、これから、ホーチミンでソフトウェアの開発をするのと、日本にベトナムの技術者を送るっていう仕事をします。

また突然、面白いことをやることになったね。
どういう経緯で引き受けたの?

経緯は桐谷社長という方に声をかけられたことから始まるんですが、すごいと思うのは、今回お世話になる、この社長が<ベトナムありき>っていう、熱い信念を持ってることですね。
僕は、ほんと、この人のことを語らせたらいくらでも語れます。

その社長に惚れこんでるんだね。

だって、僕たちも、社長じゃないですか。(※)

それでいて、自分の会社を捨てて他の会社に入るって、なかなかないことですよ。

(※)藤田さんは2008年時点で3社の会社の代表、1社の関連会社の取締役を務めていた。

そうだよね。

もう完全にその社長の気合いとビジョンに敬服した形ですね。

社長はベトナムにかなりの将来性を感じてるんだ?

ベトナム、色々リスクがあるじゃないですか。
でもその社長は、「宝の山やなー!」としか言わないわけですよ。

もう、成功するイメージしかないんだね。

僕も、今まで住んでた鎌倉の家を引き払って向こうに行きますからね。
背水の陣ですよ。

藤田さんは、結構これまでも、その場その場の勢いで大きな決断をしてきた気がするけれど、今回のベトナム行きも、流れに乗って決めた感じなの?

「It’s ME」「It’s MY job!」「It's MY Business」っていう考え方が僕にはあって。

日本語だと、「それは、自分がやるべきことです」ってことですね。

「It’s None of my business」の逆の考え方だね。

そう、その言葉を、僕は絶対に口にしない。

今回のベトナムオフショアの話も、やるのは自分しかいない、って思ってるんです。

話のまとめ

どう?インタビュー、これでまとまる?

んー、もうちょっと材料が欲しいな・・。

うん、いやまあ、この際、話がまとまらないままでね。

ええ?!

だって、まとまるためには、僕の本気モード的に、可能世界宇宙論に行かないとだから。

んー、、そうか・・。
じゃあ、とりあえず今日のところは、To be continuedってことで。

最後に一言。

(ぐいっと赤ワインを飲んで)

「神はいません!」

もう、それだけ言えれば、今日はあとは酔っ払って寝るだけです。

(実際、この時点での藤田さんは相当酔っ払っていました。)

(2008年3月 自由が丘「Rude boy cafe」にて)

ネットの進化

(前回のインタビュー(2008年)からちょうど2年。ベトナムから一時帰国していた藤田さんと話をした)※このインタビューは2010年収録
僕は、twitterを最初に教えてもらったのは藤田さんからだったけど、
まだ、ほんとにリリースされたばっかりの時だったね。

twitterがリリースされた時は、ものすごく可能性を感じてました。
当時は、清水さんとSNSを作ってましたけど、
twitter的なサービスも始めたかったですね。
(※)実際、藤田さんは創業したSNSの企業を離れる直前(2007年)に、当時のガラケー上でtwitterライクなサービスを開発・開始した後にベトナムに旅立った。

FacebookとかLinkedinもそうだったし、
サービスが公開された瞬間に
藤田さんからインビテーション(招待)を受けて始めるっていうパターンは多いなあ。

やっぱり、新しい動きに興味があるからってのはあります。
でも、今は、いわゆる「インターネットサービス」に対して、昔ほどの関心はなくなってますね。

おお?
なんで?

インターネットのフロンティアっていうのは、
もう、完全に終わったと僕は思っていて。

全部、出尽くしたってこと?

細かいところを挙げれば、まだいっぱい出てくるかもしれないですけど、
人間の営みというのは、ある意味で、人と人とのコミュニケーションがすべてなので、
Googleがあって、Facebookがあって、twitterがあれば、
もう最終型ですよね。

たしかに、コミュニケーションの効率化という面では、
twitterというツールが極めてしまった感じがあるね。

あれ以上は、
キーボードを使わずに、考えたらすぐ伝わる、
っていう段階にいかないと、次はステージはないと僕は思います。

次は、ソフトウェアじゃなく、
デバイスの革命的な進化が起こる順番なのかな。

そうです。
最終的に、インターネットって、
キーボードというデバイスで人に入力させているうちはまだまだなんです。

Googleってサービスとしても事業としても確かにスゴいんですけど、あれは、
人に検索をさせることで情報を吸い取っているんですね。

僕から見ると、 Googleは人間に「労働」をさせて、「利益」を上げている。すごい搾取ですよ(笑)

たしかに。
今、すごく巧妙な形で、
ネット上で何を書いても、何を検索しても、
googleに養分を与えているようなシステムになってるよね。

FacebookといったSNSはそれよりもちょっとマシで、
友達とコミュニケーションをすることが、インプットになってる。
更にもう一歩進んでるのが、今ならLast.fmですかね。

音楽を聴いてるってだけで曲をリコメンドしてくれるんだから、それぐらいはいいよね。
さすがに、音楽は自分の楽しみで聴いてるわけだし。

その点、僕は「ヒトゴト」はすごく面白いと思っていて。
これ、言いたいことを言うだけで、
それが整理された形でまとめられるわけじゃないですか。

まあ、自動で整理されてるんじゃなくて、
人力でちまちまとまとめてるわけだけど。(笑)

音声認識とか、文字起こしの部分は、
将来、間違いなく自動化されます。
そうなったら、僕はもうブログとかはやらないですね。
月に一回、清水さんに電話して、
「ちょっと今から好きなことしゃべるから」って言って。

ぶははは!
なんか、妙な感じにアナログだね。

でもそれは、次の時代のメディアのあるべき姿だと思います。
「ヒトゴト」はたぶん、続けてると、
「自分もしゃべりたい」って人が出てくると思うんですよ。

しかし、清水さんが、何でこれをやり続けているのかってのは、興味ありますね。

僕は、最後まで自動化出来ない部分にこそ、意味があると思っていて。
音声を文字に起こす技術は、かなり進歩するかもしれないけど、
それを編集するっていうのは、人間にしか出来ない部分だから。
出来るまでに手間と時間がかかるものにしか、長期的には価値がないんだと思ってる。

人生のログ

ところで、「ライフログ」って興味ありますか?
自分の人生がすべて記録されていく、っていう。

すごく興味ある。
たとえば、初めて立って歩いた瞬間、みたいな時、
その状況が、音声付き動画で記録されてて、
後から再生することが出来たら面白いだろうな、って思うことあるよ。

ちょっとライフログとは違うんですけど、
僕ね、去年(2010年)、シェムリアップのアンコールワットに行った時から、
もう写真撮るのやめよう、と思って。

どうしたの?

アンコールワットって、
誰が撮ったってキレイなんですよ。
で、今までに何十万人、何百万人もの人が写真撮ってるわけでしょ。

うんうん。
しかもそれが、撮った直後に
flickerとかPicasaにアップされたりするわけだし。

そう、そう。
じゃあ、僕が撮る必要ないでしょう、と。

わかるわあ。
オレも、同じことをよく思う。
有名な観光地ほど、自分が写真を撮る意味ってのは薄いよね。

しかも、その時は、会社の部下とシュムリアップに一緒に行ったんですけど、
そいつが観てる場所と、僕が立っている場所は1メートルぐらいしか違わないわけですよ。
で、そいつが写真を撮ってるわけだから、よっぽど自分の写真の腕に自信があるとかじゃない限りは、彼が撮ってればいい。

(笑)同じような写真が二枚ずつあっても、
しょうがないからね。

ただし、ライフログ自体は、すごく面白いと思います。
僕とか清水さんの世代だと、小さい頃の記録って、写真しかないでしょう。
でも、今の子供はみんな、ビデオ(動画)が残ってるんですよ。

ああ、そういえばそうだ!
今、オレらの世代で子供がいたら、
ほぼ100%、何かしらの形で動画を撮るよね。

そうそう。
人間の記憶って、普通、3歳以前は覚えてないんですけど、
それを後から全部見ることが出来るっていうのは、別次元の人生体験への突入ですよね。

それ、見たいなあ。
3歳ぐらいまでの自分がどうだったかって、すごく興味あるよ。

バーチャルな世界に住むこと

人生を変えた本、っていう話をした時、
藤田さん、村上春樹のことを言ってたけど、
初期の作品のほうが好き?

初期のほうが好きですね。
一番大好きなのは、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」です。

あの小説って、
裏表の世界が絡み合う構造は「1Q84」と似てるけど、
結末が180度違うよね。

そう、リアルな世界とバーチャルな世界だったら、
「バーチャルでいいんです」っていうことを言った、記念碑的な作品でしたね。
僕はもう、バーチャルな世界に住んでもいいと、最近では思ってます。

面白い。
それは、バーチャルのほうが可能性が大きいっていうこと?

人間は、認識論的のABCから言っても「情報」の世界でしか生きていないし、
これをひっくり返すのはとても難しいので、僕はそれはそれでいいかな、と思い始めていて。
「リアル」(物理的現実)の世界を含めて、みんな、思い込みの世界で生きているので、
結局、本当の<リアル>なんてない、と思ってるんです。

「ハードボイルドワンダーランド」で言えば、
「世界の終わり」の側のほうが魅力的ってことだよね。

そうです、そうです。
僕はあの、「世界の終わり」で描かれた物語をひっくり返すような<リアル>はない、と思ってるんです。

なるほど。
面白い話だなあ。

そんなに「リアル」ってスゴいかな?と思っていて。
結局、みんな<バーチャル>じゃないですか、と言いたいんですよね。
それを真っ直ぐに認めましょうよ、と。

「モンスターハンター」みたいなオンラインゲームってあるじゃない?
あれは、サーバが、全プレイヤーの位置情報とか視点を管理していて、
そこから見えるであろう景色の情報を、それぞれのゲーム機に送っているでしょう。
人間の認識っていうのも、それと同じ構造なんじゃないかと思っていて。
人間の脳ってのは、そこで全部の処理をやってるわけじゃなく、
どこか別次元にあるサーバが処理してる情報を受け取ってるだけって感じがする。
そしたら、今経験しているものは、全部、一種のバーチャルだよね。

そうです。僕も全くそう思いますね。

大学時代にラスベガスに行った時の話なんですが、
砂漠で車を走らせて、遠くに見える人工都市の明かりが
だんだんと近づいてくる、っていう、その時の美しさには本当に感動しました。
これは「リアル」の感動ですよね。

もちろん、その「リアル感」はもちろんアリなんですけど、
中学校の時にやった「ブラックオニキス」っていうRPG(ロールプレイングゲーム)も、自分にとっては同じ感触を持つものなんですよ。

ああー。
「ブラックオニキス」って、ワイヤフレームの3D画像で、
ダンジョンとか、ものすごい臨場感があったね。

そう、夜中に家でそのゲームをプレイをしていて、そのダンジョンで、地下の4階ぐらいに降りて、
敵にやられて、もうメタメタになって途方にくれていたことがあったわけですよ。
で、頑張って、頑張って、「どうしても死ぬわけにはいかない」と。
自分の作ったマップを見ながら、どういうルートで帰れば生還出来るか、を考えて。
敵を倒して、道に迷って、それでも、なんとか「地上」に上がった時に、PCの画面の中には「星」が輝いてるんです。ディスプレイ上のドットですけどね(笑)。

でも、その「星」を見た時の、「安心感」や「感動」っていうのは、もう本当に、それを越えるものが現実にないぐらいに<リアル>だったんですよ。14歳の僕にとって。

わかるわあ。
感動ってさ、別に、現実世界の感動だからバーチャルの感動より上等、
とかっていう優劣のあるもんじゃないよね。

そう、
少なくとも同等に扱ったほうがいいかな、と思います。

でも、そういう時代になるには、しばらくかかるね。
現実を棄ててバーチャルに行こう、って言うことには、
まだ後ろめたさがあると思うんだよ。
今は、バーチャルに引きこもらず現実に回帰せよ、
っていうメッセージの作品ばかりでしょう。

「アバター」って面白い映画なんですけど、世界観に納得いかなくて。
この3D世界のほうが、現実世界より楽しいだろ?って、
自信をもって突きつけてほしかったんですよ。
あれ観た後は「おいおい、ジェームス・キャメロン(※)、どうしたの?」って感じでした(笑)。

(※)映画「タイタニック」で有名な映画監督。

その点、ティム・バートン監督は<バーチャル>の人ですから、
今後の新作映画の「アリス・イン・ワンダーランド」では、思いっきりやってくれるんじゃないかと思ってます。
(2010年3月 自由が丘「土間土間」にて)


清水宣晶からの紹介】
藤田さんとは、2年半の間、一緒にSNSのサイトの運営と開発に関わった。
藤田さんはたくさん本を読み、考え、次の時代のインターネットがどういう風に変わっていくかを常に考えている人で、そういう彼と一緒に一つのサイトを作ったことは、自分にとって大きな刺激になったし、学ぶところが多かった。
いつもユーモアを欠かさない人で、Skypeを使ってみんなでミーティングをする時にも、藤田さんがいると笑いが絶えず、シビアな話題の時でもなごやかな雰囲気でミーティングは進んでいった。
藤田さんは、突然の思いつきのように大胆な決断をすることが特徴だったけれど、一緒にやっていたサイトの社長を退いた後は、またすぐにベトナムという新天地に旅立つことになり、またもや僕を驚かせた。藤田さんとは、これからも、仕事とプライベートの両面で分け隔てなく関われる、貴重な友人になるだろうと思う。

対話集


参加型ワークショップ



ヒトゴト検索