佐藤愛

小さい頃から、各地を点々としてきました。
生まれは、熊本県荒尾市
育ちは、
幼稚園まで、静岡県浜松市
小学校/中学校は、愛知県名古屋市
高校は、東京都保谷市(現西東京市)
大学は、茨城県つくば市

そして、いま、東京に戻ってきています。
(2008年2月 渋谷「鳥良」にて)

さとあいとピアノの関係

(清水宣晶:) さとあいが、子どもの頃にずっとピアノをやってたのって、どういうきっかけだったの?

(佐藤愛:) 幼稚園の時に住んでた社宅が浜松だったんだけど、ヤマハのエレクトーン教室に友達が周りに多かった。それで、友達の家で遊びで弾いてたら、そのお母さんが「愛ちゃんすごく上手に弾けるよ」ってウチの人に言って。それがきっかけ。

ピアノをやったことで、それが自分に与えた影響ってあった?

学生の時、一つ誰にも負けないものがあるってのはすごく良かったかな。「これだけは絶対負けない」って思ってたから。それ以外には、特別足が速いとか勉強が出来るとかなかったから、それが自分の自信にはなったと思う。

高校は、音楽の学校じゃなくて、普通の高校に行ったんだよね?

うん、高校からそういう専門の学校に行っちゃうと世界が狭くなっちゃいそうな気がして、高校は普通校に行ったんだよね。でも、高校で伸び悩みを感じて、そこでピアノの道はやめちゃったな。

どこか、自分がプロとしてのピアノの道を断念した時のきっかけになる出来事ってあったの?「この人には絶対にかなわない」って思ったようなこととか。

身近にいた、妹を見てそう思った。
妹は普通の学校じゃなくて、音高と音大に通ったんだけど、私は、妹が初めて3歳でピアノを弾いた時から「音が違う」って思った。

そういうものなんだ?
ピアノの演奏って、鍵盤を叩くっていうシンプルな動作だから、要素に分解すれば、鍵盤を叩く強さとタイミングっていうことになりそうな気がするんだけど、それは他の人には真似出来ないものなの?

そう。それはもう、歌声と同じで、持って生まれた才能としか言えないものなの。
その時にどんな気分かっていう心理的な状態によっても、音ってすごく変わってくるし、単純に要素に分解しただけでは取り出せないものが、必ずある。

そうなんだな。オレは、その「心理的な状態で変わる」って感覚、言葉ではわかるけど、本当の実感としてはどういうものかわからない。その感覚をさとあいが身をもって知っているってことは、ピアノをやってた大きな意味だと思うよ。その感覚を知ってることが、うらやましい。

そっか、そうだね。考えたことなかったな。

自分の力が発揮されるポジション

尚志(多苗尚志)がさ、ベトナムに行っちゃったじゃない?

うん、行ってしまったね。

私、尚志と似てるところがあってさ、「これやりたい!」って思って何かを始めても、結構すぐに飽きちゃって、長続きしないのね。
でも、今度彼がやろうとしてることってのは、自分に向いてると思ったことが見つかったんじゃないかって気がして、「やられた!先を越されたなー」って思って。

確かに。尚志が今やろうとしている仕事は、すごく合ってる感じがあるね。
さとあいは、やりたいことがあって出来てないんじゃなくて、やりたいことがまだ見つかってないのか。

そうだね。でもさ、人生って自分のやりたいことばっかりで構成されてるわけじゃないから、たとえやりたくないことであってもガムシャラに頑張るっていう時期も必要だろうって思うんだよね。

そうだな。やりたいことがまだ見つかってないんだったら、目の前のことを頑張ってるうちに、やりたいことが見つかるかも知れないしな。

そうそう。きっと頑張ってるうちに見つかるだろうって思うんだけど、私が今、頑張れてない。ちゃんとしなきゃなあって思うよ。

さとあいは、組織の中にいる時、どういうポジションで何をやってるのが一番自分の力が発揮されると思う?

ドンと構えてるリーダーがいる脇で、鉄砲玉みたいに突っ込んでいくのが向いてるんじゃないかな。

ヤクザのカチコミみたいのか(笑)

そう、言われたことに向かってピューン!って飛んでいくの。
しかも、それが自分のやりたいこととマッチしている時が一番力を発揮するかな。やりたいと思ったことには、どこの誰よりも速く走る自信がある。

なるほどなー。上手にさとあいを使いこなせるだけの器がある人の下にいれば、最強の組み合わせになりそうだな。

頼られるのがすごく好き。頼られてないと生きていけない。

そういうことか。あー!たしかに、そんな感じはあるな。
そう考えると、さとあいは奥さんにも向いてるんじゃないか?

いや、家庭に閉じこもってたらやってられないな。

え?そう?社会と関わってたいってこと?

うん。
わかんないけどね。子どもとか生まれたら変わるかも知れないけど。
必要とされていることを、家族がきちんと示してくれればいいかもしれない。でも、家族って、そういうことを基本的には示さないじゃない?ご飯を作っても、それが当たり前っていう雰囲気になる。

そうだな、家族って基本は無償の愛だからな。

たとえば会社の場合って、それが示されるのよ。給料を払ってくれるってのが、まず、そういうことだし。だから、家庭でも、ちゃんと感謝が示されればいいんだろうと思う。

さとあいが人に見せない部分

さとあいは、パラサイヨで班長をやってた時も、とにかく「ちゃんとしなきゃ」っていう姿勢がすごく強かった気がしたな。

そうだね。ちゃんとしてない部分を人に見せるのが、すごくイヤだ。
最近は、弱い部分も周りにバレちゃってる気がするけど、弱い部分を見せるのがイヤで、見せてしまうと、その後自己嫌悪になる。

そうか。それは結構、さとあいの特徴かもしれないな。
なんでそういう風に思うの?

いっぺん、そうやって「いいや」ってなっちゃうと、どんどん怠惰なほうに流れていって、歯止めがきかないと思うからかな。

なんなんだろうな、その、自分への厳しさは?

自分が成長するためには、常に上を目指さないとって思うんだね。もっといけるはず、って常に思ってたい。

ダメなところも、かわいいと思うけどね。
さとあいってのは、聞けば聞くほど、かわいい部分が色々と出てくるのに、それをなかなか他人に見せようとしないよな。
さっき話してた、会社の帰りに、期間限定のエビスビールとミミガーをコンビニで楽しみに買って帰って、それが毎日の支えだった、って話しとか、すごくいいと思うよ。

あー、でも今、それをやっちゃダメだな。ダメなところを見せちゃうと、自分自身がそれを容認することになっちゃう気がするんだよね。

オレはその、ダメな部分を見せるってことと、成長って両立すると思うんだけどね。ガードは固めずに、でも目標は下げないってことも出来るんじゃない?

私の場合、目標を下げるっていうよりも、目標そのものがまだ見つかってないからね。こういう自分になりたい、っていう明確なものがないから。いったんダメな自分を容認しちゃうと、そこからガラガラと崩れていってしまう気がするの。
だから、崩れてしまいなりそうになると、スキーとかバイクとか、我を忘れるほど没頭する出来事を見つけようとしてしまう。

麻薬みたいなものを求めてるんだね。

そう!まさに、麻薬なんだと思う。しかも、充実感のある麻薬。やっちゃった後に罪悪感がある麻薬じゃなくて。
スキーの場合は、充実感があるし、没頭も出来るんだけど、パチスロとかは没頭した後に、時間をムダにしたって感じがあるから。
その場その場で、とりあえずの目標を見つけて、それに走ってるんだね。

まあ、でも、みんな結構そうなんじゃないかな。
みんな別に、自分が本当の本当に大好きなことをやっているわけじゃなくて、なんとなく自分のやってることを「自分のやるべきこと」だと思い込んで、とりあえずの気持ちをまぎらわせてることって多いんじゃないかって思うよ。
さとあいは、そうやって自分をだませない性格だから、その分、冷静に自分を見てしまってるんだろうと思うな。

うん。結局、自分自身を客観的に見て、「出来ない」っていうことがやっぱりイヤなんだね。出来ないことでも「出来ます!」ってつい言っちゃう。
ドラマの「HERO」って見てた?
あのバーの店長ってさ、これはムリでしょうっていう注文をしても、何を頼んでも「出来るよ」ってあっさり言うじゃない。

(爆笑)わかる、わかる!あの店長は確かにカッコいいけど、でもあれを目標にするのはムリがあるだろ。

0から1と、1から10

さとあいは、映像の編集って、好きなこと?

うん。もともとある脚本に従ってモノを作っていくのは好きだし、得意なんだけど、脚本そのものとか世界観を創りだすっていうところは苦手。

1から10の部分じゃなく、0から1を創り出す部分っていうことだよな。そこはまた、別の才能が必要だよね。

そう。すべてのことについて言えるんだけど、0から1を創り出せる人に、私はすごく憧れる。

それは、わかるな。オレも同じく、何もないところから混沌を創り出せる人に憧れるから。だから、組み合わせとしては、0から1を創る人といるのがベストなんだろうな。

自分が、1から10をやるほうに向いていることはわかってるんだけど、0から1の部分までも自分自身でやりたいって思っちゃう。

きっと、ないものねだりなんだよね。
逆に、0から1を創るところが得意で、そこで止めてしまう人ってのは、1から10をきっちりやる人に憧れるんだろうしね。
さとあいの周りでいうと、0から1の人ってのは誰なの?

ミニが、まさにそうだと思うよ。

ああ、確かに。全体のビジョンをうち出す人っていう感じだね。

池本さん(池本多賀正)や、藍ちゃん(五十川藍子)もそうだと思う。

そうだな。0から1が創れる人ってのは、数は少ないよね。
1から10の人は数も多いし、他の人で替えがききやすいっていうこともあるし。

だから、0から1っていう部分に憧れるんだよね。替えがきくっていうのも、自分でわかってるし。

そうだね。オレは、自分が1から10の部分に向いてるって自覚があるから、0から1の人といると、すごくしっくりくるし、自分の価値が引き出されているって感じがする。

あっきーは、自分でそういう人を見出すことが得意だと思う?

どちらかというと、今までのことを考えると、オレが見出すというよりも、相手がオレのことを見出してくれたことが多かったかな。
そういう人といると居心地がいいし、それは、相手にとっても同じように感じられるものだろうと思うし。

そうか。そこまでわかっていれば、いいのか。
私は、初動の0から1の部分もやりたいっていう部分があるから、がっちりはまらないというか、自分からも探そうとしていなかったし、相手からも見つけてもらえないし、ってのがある。

なるほどな。足りない部分を、お互いにゆだねられれば楽かもな。
反発するんじゃなくて、相手の力をお互いに利用出来るようになれば。

そう出来ればいいね。私は、0から1で止めちゃう人をみると、どうしてそこまでで止めちゃうの、って考えちゃってストレスになっちゃう。

0から1で止めてしまった、という言い方も出来るけど、別の見方をすると、自分が苦手な0から1の部分を相手がやってくれて、自分に引き渡してくれた、っていう風にも言えると思うんだよな。

最初のきっかけをくれた、ってことだよね。
なるほど、そう思えばストレスにならないね。
(2008年2月 渋谷「鳥良」にて)

【もがみたかふみさんからの紹介】
もがみたかふみ小さくてさ すばしっこい
かわいいやつ キャロットさ
約束したね
いついついつまでも 友だち

……ニルスの不思議な旅エンディング・テーマ「いつまでも友だち」より引用

清水宣晶からの紹介】
さとあいに話しを聞いた時は、夜に渋谷の居酒屋で話しはじめて、終電が終わってもまだ話しは終わらず、そのまま始発の電車が動くまで8時間以上続いた。
さとあいは不器用でぶっきらぼうなところがあるけれども、僕は、そこがさとあいのカッコよさだと思う。義理を欠かすことがないし、聞かれたことや頼まれたことには何でも応えるという、まっすぐな素直さがある。
さとあいには、「かわいカッコいい」という形容詞を贈りたい。

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