宮原元美


タイでの日本語インターン教師やアパレル、不動産業を経て現職。農、食、住まいの分野を主にクロスボーダー中。KIJ level3修了。

市街化区域内を自ら耕作しつつ、農林業被害から興味をもった狩猟(わな猟、銃猟免許保持)にも手を出し始めました。

工務店・不動産経営(家業)に関わったりもしています
(株式会社ミヤケン所属。宅建主任者)

菜園・太陽熱温水給湯、ペレットストーブ、共有井戸付きの賃貸物件「モーラの家」の企画運営もしています。
http://www.moora-house.net/

ハンターになるまで

(宮原元美:) 清水さん、狩猟に興味あるということだったので、
これを持ってきました。

(清水宣晶:) おおおおお!
「狩猟読本」!?


2冊持ってるので、
1冊、差し上げます。

(しばらく読みふける)

うーむ、これは・・
読み物としても、かなりクオリティー高いですよ。

狩猟免許試験の講習用テキストなんです。
あと、猟友会のベストを持ってきました。


かなりカラフルですね(笑)。

初めて見た時は、
「ダサっ!」って思ったんですけど(笑)、
無線機を入れられるポケットがついてたり、
かなり機能的な作りになってます。

山の中で誤射されないために、
目立つようになってるんですか?

そう、目立つこと優先ですね。

動物にも見つかっちゃうんじゃないかって
気もするんですけど。

ほんとかどうかわからないんですけど、
鹿が認識出来ない色らしいんですよね。

ああ、なるほど!

山の中で、黒い服でもぞもぞと動いていると
クマと間違えられて撃たれる、
という事故がときどき起こってるんです。


今、僕が着てるフリースなんかで行ったら、
確実に撃たれますよ。
このベストは、
支給されるんですか?

猟友会に加盟すると、支給されるんです。
私は、埼玉県と群馬県で登録しているので、
登録している都道府県のバッヂがついてます。

元美さんは、どういういきさつで、
狩猟(罠と猟銃)の免許を取ることになったんですか?

以前、山梨に住んでいる友人の
畑作りを手伝っていたんですけど、
畑を荒らされる獣害に遭っている地域で。
で、手伝うのに、
罠の免許を持っていたほうがいいかなあ、と。

あ、そういう理由でしたか。

なんにも知らない素人がただ手伝うっていっても、
足手まといになりそうだったので、
知識があるほうが、まだ、
迷惑にならないじゃないですか。

いや、その友達もまさか、
元美さんが罠免許まで取ってきてくれるとは、
期待してなかったでしょうね。

実際に使える場面があるかわからなかったんですけど、
いざとなったら役に立てるようになろうと思って。

どんな動物が出没する地域だったんですか?

サルとシカとイノシシですね。

罠っていうと、
金属のギザギザのついた、
ガチャンって挟まるやつでしょうか。


あれは、トラバサミって言うんですけど、
今は禁止猟具で使えないんですよ。

へええええ!
使っちゃダメなんですね。

捕獲しちゃいけない動物がかかった時、
殺傷能力が高すぎるというのと、
あと、人間が間違ってかかった時に危険なので。

なるほど。
今は、どういう罠を使うんです?

何種類かありますが、例えばくくり罠っていって、
足首だけをクイッてつかまえるような罠があります。
直径12cm以内(規定)で、人間が踏んでも作動しないように。

罠の世界も、
かなり奥が深いですね。

友人から聞いた話なんですが、
ある若い猟師さんがおっしゃっていたことで、
銃を使うのは卑怯な感じがする、と。

ぶはははは!
飛び道具ですからね。

罠って知恵比べなので、
対等な感じがするって言うんですよ。
針金を川にしばらく浸けて金属臭を取ったり、
いかに気づかれないように設置するか、とか。

熱いなあ。
タイマンでの真剣勝負ですね。

あと罠は、自分で作れるので、
銃と比べるとあまりお金がかからないっていうこともあって。

銃猟のほうは、
結構、危険な動物もいるでしょう。

イノシシは突進してきますし、
クマも出ますからね。

クマ、初めて会った時は、
怖いでしょうね。

私はまだ出会ったことないですけど、
会った人は、手が震えたって言ってましたね。
みんな、「大きいから当たるよ」って言うんですけど。
私なんて、撃ったって当たらないですから。


弾は、散弾じゃないんですか?

大型獣用だと、散弾銃でも
スラッグ弾っていって、
威力の大きい一発弾があるんです。

それは、まさに、
命を賭けたギャンブルですね・・。

銃ってけっこう重くて、
私は、立って銃を構えたまま保持し続けるのが
まだ出来ないんですよ。
スラッグ弾を試射したことがあるんですけど、
反動で、「うわーっ」って、上半身が反り返りました。

ぶはははは!
銃を構えたままでいるってのは、
キツいですよね。

狩猟のシーズンは冬で、
山登りだと、体を動かすから、
まだ暖かいんですけど、射手って、
身動きをしないで待ってないといけないので、
ものすごく寒いんですよ。

ライフル持って、
雪山でじっと待ってるってのは、
僕の中では完全に、ゴルゴのイメージですよ。


パキッていう音が少ししただけでも、
鹿って逃げちゃうらしいので、
無線で連絡する時も、声は出さずに、
発信ボタンを1回押したら「YES」とかで連絡取るんです。

あ、そんなにシビアなんですか。

何もしないで、ただひたすら待つので、
ときどき、フーッて眠りに落ちそうになったり。

そこで寝たら、
死んじゃいますよね(笑)。

その時は飯能(埼玉県)の山だったので、
死にはしないですけど、風邪は引きますよね(笑)。
私には銃の反動と、あの寒さが、
実猟のネックです。


女性のハンターの人っていうのは、
他にもいるんですか?

去年、北海道の西興部(オコッペ)村に行った時は、
女性ハンターの方にもお会いしたんですけど、
東京では、少ないと思いますよ。

やっぱり、そうですか。

ハンターって高齢化が進んでいて、
今、人手不足が深刻な問題なんです。
清水さんも、もし興味があれば、
(狩猟免許を)取ってみたらどうですか?

興味はかなりあります。
試験は、筆記と実技と両方ですか。

そうですね。
あと銃の場合は、筆記の後、実技の前の申し込みで、
精神科医の診断が必要になります。

そうか、銃を所持するわけですからね。
その時は、動機も問われるわけですか?

問われます。
私は、仕事で農林業に関わっていたので、
動機があったんですけど、
地域によって審査の厳しさは違うみたいで、
「アウトドアが好きで」とかいう理由でいくと、
「だったらゴルフでいいじゃない」って、
受け付けられなかったり。

(笑)「遊びじゃないんだから」って。
僕の場合、動機が完全に単なる興味なので、
そこで審査通らない可能性高いですよ。

ベジタリアンの視点

元美さんが、「モーラの家
(※天然建材を使用した、自給自足志向の家)
の企画を思いついたのは、
どういうきっかけだったんですか?

私は、子どもの頃、小児アトピーがあって。
その後、一度落ち着いたんですけど、
25歳ぐらいの、仕事が忙しかった時期に、
またバッと出たことがあったんです。

はい。


それで、まず、
食べ物のことを見直して考えて。
その時、自分が不動産業に関わっていたっていうこともあって、
建物とか、住まいのことも一緒に考えたんです。
で、化学物質を使わない、
天然建材を使った住宅に関心を持ったんですけど、
そういう家って、賃貸物件がまだほとんど無かったんですよね。

ああ!そうか、
天然建材の家って、注文住宅の形になっちゃうから。
「買えないけど、借りて住みたい」っていうニーズは、
すごくあると思います。

そう、20代で独身なのに家を買う、
っていう選択肢は私には無かったので、
賃貸であったらいいな、と思ったんです。

「モーラの家」が、普通の天然住宅に加えて、
プラスアルファされてる機能っていうのは、
どういうところなんです?


自然エネルギーを利用した、
太陽熱温水や、家庭菜園、井戸、
ペレットストーブが標準装備されてます。


あ、このストーブですね。
宮城の杉で作ったペレットですか。

そう、この家の建材と同じ材料です。

燃料を外国からわざわざ買うんじゃなく、
国産っていうのはいいですね。

地方の雇用とか事業って、
こういう、その土地にある資源を使った事業が、
一番ムリがないなって思うんです。

木の家の中に、
こういう無骨なストーブがあるっていうのは、
なんとなく、男のロマンを感じますよね。

そうなんですよ、
狩猟もそうですけど、なんか私、
男のロマンっぽいことばかりやってるなあって、
自覚したことあるんですけど(笑)。


ぶははははは!
たしかに、トピックだけ聞くと、
かなり男前ですよ。
農業に関わったのは、いつからだったんですか?

私、アトピーのことがあって、
ベジタリアンをやっていたことがあったんですけど、
動物性の脂質を抜くことをやっていたら、
世の中から食べるものがなくなってしまって(笑)。

そうですよね。

で、調べてるうちに、
マクロビオティックのことを知って、一時は、
非常に厳格なマクロビアンになったことがあって。
このお菓子みたいに砂糖がついてるものや、
コーヒーも断ってましたけど、
今は、そこまで気にしてないですね。

やってみて、
体質って変わりましたか?


だいぶ、変わりました。
アトピーも、完治とまではいってないんですけど、
それよりも、症状を緩和しながら、
上手くつきあっていったほうがいいなって思うようになって。

厳格にやろうとすると、
まず、外食が出来なくなるでしょう。

そう、外食を全然しないで
人づきあいをしていなかった時期があります(笑)。

(笑)人づきあい出来ないですよね。

自分が幹事になった時に店を選べれば、
なんとか外食が出来る、ぐらいで。
で、家で料理をしていた時、
農家さんも高齢化で、後継者が不足していて、
このままいくと、自分の食べるものがなくなるぞ、
っていう危機感を感じたことがあったんです。

市販の野菜だけだと、
間に合わないものがあるんですか?

「一物全体」っていって、
例えば野菜の皮をむかずに食べたりするので、
有機野菜とか無肥料野菜っていうことになると、
当時はまだ、かなり選択肢が限られてたんです。
それで、そういう野菜を作っている方たちの
お手伝いをしたい、っていうところから、
自分自身で農業に関わろうと思ったんですよね。

それで、農業だったんですね。
ベジタリアンとハンターっていう、
その振れ幅は、かなり面白いです。

野菜を追いかけてたら、
そのうちに、獣害被害のことを知ったり、
地方の農家で手伝いをすると、
鹿肉を出していただくことも結構あって。

野菜を追ううちに、
いつの間にか、肉にたどり着いたんですね。


何かいっつも、興味を持って入った場所で、
自分が知らなかった問題を知って、
そこに首をつっこんでる、っていう感じです(笑)。

生活の手触り

たとえば、船乗りだったら、
そこで習う紐の結び方が、船の上だけじゃなく、
実際の生活でも役立ったりするじゃないですか。

はい。

猟師の場合も、その知識が、
実際の生活面で何か役立つことってありますか?


直接役立つことは無さそうですけど、
解体っていうのは役に立つかもしれないです。
鳥を自分でつぶせる、とか、
お肉の部位を覚える、とか。

たしかに!
それは、サバイバルの技術ですね。

私、ベジタリアンだったところから、
お肉を食べるようになりましたけど、
それはジビエ(野生)のものなので、
畜産のお肉はあまり食べてないんですよ。

あ、そうですか!

草を食べて育った牛の肉っていうのは、
やっぱり、穀物飼料で育ったお肉とは
味がちょっと違うんです。
前に、狩った猪を、鍋でいただいたんですけど、
野生の猪はドングリなどを食べているので、
それも、全然クセがなくて、
滋味ある味がしました。

滋味。
僕はジビエって食べたことないんですけど、
そういう感じなんですね。


ベジタリアンをやっていて出会った方の中には、
動物愛護っていう理由で
野菜しか食べない人もいるんです。
お肉を食べるっていうことは殺生ですから、
それをどう、感情的、倫理的に納得するかっていうのが、
自分の中での課題としてあったんですけれど。

はい。
それは、とても興味がある話しです。

でも、野菜を育てていても、
その過程で、殺生はするんですよ。

そうですよね。
虫を駆除したり。

生命体を食べているっていうことで言えば、
植物も動物も一緒なんですけど、
野菜を収穫する時は、罪悪感て特にないじゃないですか。
でも、初めて解体を見た時は、
やっぱり、その実感がありましたね。

普通に生活をしていると、
加工済みの肉しか目にする機会がないから、
元の形って、知らないままですよね。

はじめて鹿の解体を見た時、最初は、
「死体だ」、っていう認識があったんですけど、
大ばらしっていって、
大きな部位ごとに分けていって、
モモの肉を切り分けた時、生ハムを連想して、
そこで、「あ、食品だ」って認識したんです。

見たことがある物の形だ、と。

最初は、その段階でそう思ったんですけど、
解体にだんだん慣れてくると、
「美味しそう」って思う段階が早くなってくるんです。

なるほど、
一連の過程を知ると、そうなるんでしょうね。

私の倫理感ていうのは、こういうものか、って、
そこでまた新しい発見がありました。
去年、姫路の猟友会の見学会に参加させてもらったんですけど、
その時は、家族連れの人もいたんですよ。
解体の時、最前列に小さなお兄ちゃんと妹が立って、
凝視しているのを見て、これは食育の一種だなと思ったんです。


そういう時でもないと、普通に生活していたら、
見る機会ないですからね。

ハンターって、おじいちゃんのような年の人が多いので、
それを見てる、孫ぐらいの子どもたちがいるのって、
コミュニティーとしても、いいなあと思って。
年長者を普通に、尊敬するじゃないですか。

たしかに。
パソコンとかを使うのと違って、
猟は、経験がものを言う世界ですからね。

獲るのにあれだけの苦労と手間がかかるもんなんだ、
っていうことを知って、
やっぱりお肉ってご馳走なんだな、って思いました。

原始時代は、肉が獲れた日なんか、
非日常的な、ハレのイベントだったんでしょうね。

私はまだ自らの手で止めさし(とどめをさすこと)を
やったことはないんですけど。
自分自身でやったら、もしかして、
またベジタリアンに戻ってしまうかも知れないですね。
いったいどこに行き着くか、私もまだわかってないんですけれど、
よくわからないから避けるんではなく、
わからないからこそ関わろう、っていう気持ちです。


それは、
素晴らしいことだと思います。

日常生活で何に役立つっていうことはないですし、
自分が凄腕ハンターになれるとも思ってないんですけど、
いざハンターが必要となった時、「行けるよ」って
言えるようになっていればいいかな、と。

「行けるよ」って言える人は、
なかなかいないですからね(笑)。

いざってなった時に、ヘタッピなりに、
とっかかれるスキルがあるっていうことは、
自分自身の中での安心感になってるところ
ではあるんです。

安心感。

まだ、20代の半ばぐらいの、
私が会社勤めをしていた頃に感じたことなんですけど、
仕事をして忙しくなっていた時、
生活の手触りがどんどん薄くなってるって思ったんです。

ああ、、
とてもよくわかります。


仕事の経験は積んでいても、
ご飯を作ったり、野菜を育てたりっていう、
人間として、生きるためのスキルを
身につけてないっていう自覚があったので、
すごく軟弱者な気がしてたんです。
生活の手触りを取り戻したい、っていうことで、
そっちの方面のことを学びたい、って気持ちがありましたね。

それが、農業とか、狩猟とかに
つながってるんですね。

農業って言っても、家庭菜園レベルですし、
ハンターとしてもヘナチョコなんですけど。
昔よりもずっと、手触りは持ててる感じがあるんです。


都会に住んでいると、
まったくそういう手触りを感じることなく
生活が出来ちゃいますからね。
今みたいに細かく分業されてない時代って、
みんな、生活上のひととおりの作業を、
自分自身でやっていたんだろうと思います。

その点、農村の人って、やっぱりすごくタフで。
手伝いに行くつもりで援農に行ったのに、
私のほうが全然ダメじゃん、って感じましたね。
最近までは、それを取り戻すためのプロセスで、
ようやく、それも一段落した気がしています。
(2013年1月 志木「モーラの家」にて)


清水宣晶からの紹介】
元美さんが通ってきた道は、舗装されたまっすぐな道ではなく、曲がりながら野山の中を通る、けもの道だ。
興味を持って出かけていった先で、「あれ?これは何か困ったことになってるな」という問題に出会い、その流れに乗る形で、自分の役割を見つけだしてきた。
農業、林業、狩猟と渡り歩いた後、ぐるりと一周して、元々の家業であった不動産業の視点に戻り、今は、自分自身でコンセプトを考えた家に住んでいる。

その軸になっているものは何なんだろうという問いを持って、今回元美さんにお話しを聞いたのだけれど、彼女が言った、「生活の手触りを取り戻したい」という言葉を聞いた時、実にしっくりと納得がいった気持ちだった。
元美さんは色々なことを経験してはいるけれども、すべての原点は、その一つの言葉の中に集約されていると思ったからだ。
昔から引き継がれてきた知恵と経験を持つ人たちが年々少なくなってゆく中、元美さんが求めたような、生きるための技術は、今後、何よりも必要なものになるだろうと思う。

宮原元美さんとつながりがある話し手の人


SPECIAL THANKS TO

上村実生上村実生さん
「モーラの家」と宮原元美さんをご紹介いただきました。


対話集


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