大橋南菜


わくわくが餌。
活字とことば、哲学が好物。
本が好き。舞台も好き。空手も好き。

昨日の自分よりも素敵な自分に。
わくわくときらきらを代名詞にしたい。

高校2年生。こどなひろば代表。

【こどなひろば】
「世代を越えて、自由に対話し理解すること」を目的とした学生団体。主催者、実行委員は皆高校生。2012年2月の補足以来、「偏見をなくし、世代関係なく協力できる社会をつくる」ために、大人と子どもが世代にとらわれず、お互いに一人の人として向き合う場づくりを行なっている。
https://twitter.com/kodona_hiroba
(2013年2月 新宿「MOVE CAFE」にて)

好きなものたち

(清水宣晶:) 今日は雪の予報だったですけど、
いつの間にか、雨もやんだみたいですね。


(大橋南菜:) 雪が降ると、
朝、電車が止まったりで大変なので、
やんでくれて良かったです。

でも、明日、
学校は休みでしょう?

土曜日も毎週、
授業があるんです。

土曜日、毎週!?
今、そんなことになってるんですか?

学校によって違うと思うんですけど、
前よりも、授業数は増えてると思います。
7時限目や、0時限目がある学校もあったり。

0時限目って・・
朝8時ぐらいからってことでしょう。

福岡の友達は、土曜日の代わりに、
朝早くから授業をやるって言ってました。
それは、ちょっとツラいですよね。

それでも、ナナさん、
いつ時間があるんだってぐらい、
いろんな活動をやってますね。
空手もやってるんですか?

空手は、小4の時からやっていて、
今、黒帯です。

うわあ・・その小さな体で、
さらにもっと小さかった時から。

でも、
瓦割りをするような流派ではないんです。

あ、そういう、
荒っぽいことはやらないわけですね。


こう、腕に力を入れたところに、
バットで叩きつけてもらって、
そうするとバットのほうが折れる、っていう。

もっと荒っぽいじゃないですか!

私がやってるのは、沖縄の武道で、
ストイックに体を鍛えるみたいな感じがあります。
古武道も一緒にやってる道場で、
鎌で戦う方法とかもやってたり。

琉球空手ですね。
鎌の武器っていうのは、
興味あるなあ。

それと、亀の甲羅を使うんです。

ぶはははは!
甲羅を盾にするんですね。


えぇ!?みたいな。
私は使ったことないですけど。
攻撃するっていうよりも、
受けたり流すほうに重点を置いた流派で。
私は、痛いの嫌いなので、組手をやるよりも、
自分と向き合うっていう部分が好きですね。

空手は、どういうきっかけで
始めることになったんですか?

小さい時からピアノを習ってたんですけど、
そのピアノを、どうしてもやめたかったんです。

あ、ピアノをやめる代わりに、
空手をやるから、っていう交換条件を
出したわけですか?

そう、子どもなりに懸命に考えたアイデアが、
それだったんですね。
親はすぐやめるだろうと思ってたみたいですけど、
気がついたらもう8年やってました。

結果的には、ピアノよりずっと、
向いてたってことなんでしょうね。
本も、よく読むって聞きました。

本は「読む」というよりも、
「食べる」という感じです。

生きるための養分を摂る、
みたいなものですか?

そう、主食とまではいかなくて、
デザートのようなものですね。
私、外国語はまったく苦手ですけど、
日本語の言葉がすごく好きなんです。

ああ!いいですね。


だから、本にかぎらず、
活字と紙っていうものが、好きです。
Macに入ってるFontBookっていうアプリで、
フォントを眺めていたりとか。

そうか、じゃあ、
装丁とかデザインも含めた、
「本」っていう物そのものが好きなわけですね。

そうなんだと思います。
ポスターとか広告みたいな印刷物も好きで、
あと、扉が好きです。

扉!
デザインや装飾っていう面から見ると、
かなりバラエティーがありますよね。

今、一番ほしい本は、
「世界のドア」っていう写真集なんです。

近所の本屋に置いてあって、
よく、それを眺めてるんですけど。

自分がそういうものに惹かれるんだっていうことに、
いつ気づきました?

もともと、建築系の雑誌が好きでよく見てたんですけど、
自分が「これいい!」って気に入った写真を
抜き出して並べてみたら、
全部、写真の中にドアが写ってたんです。

ぶはははは!
無意識のうちに、ドアを見てたんですね。

いい感じの扉があると、そこに目がいっちゃうみたいで。
長崎に旅行に行ったことがあるんですけど、
印象に残っているのは扉のことばっかりでした。

長崎の扉っていうのは、
異国風なんですか?

出島に行ったんですけど、
聖堂のドアがすごく魅力的だったり、
あと、カピタン部屋に、緑色のドアがあって。
O・ヘンリの「緑の扉」っていう短編を思い出して、
一人でテンション上がってました。

O・ヘンリにそんな小説があるんですか。
なんか、ドアと縁があるんでしょうね。

なんだかわからないんですけど、
惹かれるんですよね。

今、進路のことをいろいろ考える時期と思いますけど、
何か、将来やりたいことって浮かんでますか?

やっぱり、紙もののレイアウトデザインはやりたくて。
あと、デザインを使って人と人とつなげる、
コミュニティー作りをしたいなって思ってます。

ほうほう。


すごい具体的なことになっちゃうんですけど、
日本の各地域の写真を撮って
ガイドブックみたいなものを作れたら
楽しいんじゃないかって思います。

それはまさに、レイアウトデザインでもあり、
コミュニティーデザインでもありますね。

好きなものを詰め込んで考えてみたら、
そういうことになりました。

ナナさん、コミュニティー作りの部分で、
人と話をするっていうことも好きですか?

好きです。
でも、一人の時間もすごく好きで、
その時間がないとダメです。

相反するものが混ざり合ってる感じですね。
けど、その気持ちは、すごくよくわかるなあ。
一人の時間は、ないとキツいですよね。
本も読めないし。

みんなでわいわいするというよりも、
わいわいしてるのを、
ちょっと引いて見ていたいんでしょうね。
一人で美術館とか、水族館とか
行くのも好きです。

ああ、それもわかります。
興味を持つものって人それぞれ違うから、
ペースを合わせるのが、ちょっと面倒で。

そうなんですよね。
私は、水槽の貝とかを見てたいんです。

誰かと行くなら、そこを共有して、
一緒に貝を見てくれる人と行かないと、
楽しめないですね。

この前行った水族館では、
手乗りサイズのタコみたいなのが、
タニシと同じ水槽にいて。
タコが手を伸ばしてつんつん突いて、
タニシがそれに抵抗してるのが、
めっちゃかわいかったんですよ。

(笑)それはもう、
かなりマニアックな領域にいってますよ。


30分くらいは、そればっかり見てられます。
ちょっと、思い出すとニヤけちゃうんで、
水槽の話しは、このあたりでやめときます。

対話をする場

今日の本題の話しを聞かせてもらおうと思うんですけど、
僕が先日、「こどなひろば」
(※ナナさんが代表をつとめる、世代を超えて、
自由に対話し理解することを目的にした団体)

の会に参加した時、かなり面白かったんです。

楽しんでいただけてたなら、
よかったです。


世代が違う人が集まっているのに、
随分スムーズに話せる場だなっていうことに、
おどろきました。

運営メンバーの仲がいいからっていうのは、
あるんじゃないかなと思います。
どうしたら楽しくなるかっていうことを
考えながら企画を立てているので。

そう、運営メンバーの人も含めて、
集まっている参加者の姿勢が前向き、
っていうのは感じました。

あと、誰にとっても身近な話題を、話し合いの
テーマにしたからっていうのはあると思います。
(※この時のテーマは「理想のくらし」だった)
社会問題をテーマにすると、
仕事をしてるかどうかの違いとかで、
ちょっと意識が合わないところも出てきますから。

なんで場が盛り上がるのかってナナさんに聞いた時、
「前向きな話題を選んでるから」って言ってて、
なるほどと思いました。

それもありますよね。
暗い話題の話をしていても、楽しくないじゃないですか。
楽しいことしたい、わくわくしたい、っていうことが、
基本的なスタンスなんです。

そうか、
楽しいことをしよう、っていうことが、
メンバーの共通認識としてあるんですね。


世代が違う人たちが結構楽しそうに話をしているのを、
私、前から見ていてニマニマしていることが多くて、
ちょっと自分でも気持ち悪いなって思うんですけど(笑)。

だんだんと、雰囲気が変わっていくのを眺める
面白さっていうのは、わかります。

最初は硬かった表情が、
いつの間にか、リラックスしていったりするのを
見ているのが楽しいし、嬉しいですね。
こどなひろばは、
あんまり崇高な目的があってやっているわけではなくて、
楽しいからやる、でやっていることが多いです。

こどなひろばを作った時は、
どういうふうな伝え方で、旗を掲げたんですか?

高校生と大人が対話をする場を作りたい、
っていうことだったですね。
それで、集まってきた人たちと、
じゃあどうしようか、って話しをして。

そこから、具体的に考えていったんですね。
その、対話をする場を作りたいっていうのは、
どうして思いついたんでしょう。

自分の中で、
きっかけになった出来事があったんです。

きっかけになった出来事。
それはぜひ、聞きたいです。


塾の先輩と電車に乗ってた時のことで。
その先輩は、金髪に近いぐらいに髪を染めてて、
一見チャラいんですけど、すごく真面目で、
考え方もしっかりした人なんです。

はい。

私は、もともと髪が茶色くて、
染めてると思われることがよくあるんですけど、
電車に乗ってきた人が、私たちのほうをチラッと見て、
「今どきの高校生は何も考えてないよな」
って言ったんです。

えええ!?
見た目だけで?

見た目やファッションのことって、
世代ごとのスタンスみたいなものもあるから、
それで判断するのは、なんか違うって思うし、
両親の時代の話しなんかを聞くと、
今より真面目だったのかっていったら、
私たちとそんなに変わらないような気もするし。

あんまり変わらないでしょうね。

なんでそういうことを言われたんだろうって
考えたのが、最初のきっかけですね。
話をする場があれば、
お互い、理解出来るんじゃないかと思って。

そうですね。
実際に話しをしてみれば、
さすがに、見た目だけで勝手に
判断するってことはないと思いますよ。


わたしたちの世代って、
これからの未来を担うんだ、とか言われてるわりに、
あまり自分たちの意見が反映されていない、とか、
そもそも意見すら聞かれていない、って思うんです。
大人が「これがいい」と思ってるものと、
自分たちにとっていいものって違うことがあるので。

ゆとり教育なんかは、その最たる例ですよね。

たしかに。
べつに、自分たちが望んでなったわけじゃないのに、
「ゆとり世代」とか言われてね。

そうなんです。
「あれ?それ私たちのせいなの?」って。

そういうことを、思っても、
伝える方法がないっていうのはありますよね。

話しをしながら、少しずつそれが、
上の世代の人たちに届くようにしたいって思います。

居場所を作る

高校生からしても、
大人の方と関わる時間が圧倒的に少ないと思っていて。
学校の先生や、親が、いることはいるんですけど。

先生や親っていうのは、
役割があるし、どうしても、
対等な立場では話しにくいでしょうね。

やっぱり、「大人」っていう存在というよりは、
上の立場の存在になってしまう気がします。

それで、フラットに話しあえる場を作る団体を
作ろうと思ったんですか?

団体を作ろうっていうことは、
最初はまったく考えてなかったんですけど、
「こういうことをやりたいと思ってる」って、
twitterでつぶやいたら、
「やってみたらいいよ」って言ってくれた人がいて。

おお!
そうでしたか。

知らない高校生からも、
それで、メッセージをもらったんですけど、
話をしてみて、一緒にやることになったり。

じゃあ、twitterがなかったら、
つながらなかった縁ですね。

それは、本当にそうです。
すごく不思議な縁だなと思います。
facebookでも、発信をしているうちに、
連絡をもらったりして、じゃあ一緒にやりますか、
っていう感じで少しずつ広がっていった感じです。


大阪とか福岡とか、
全国に広がってるっていうのも、
スゴイことですよね。

年明けに、全国のメンバーで、
大阪に集まって合宿をやったんですけど、
一年前はただの思いつきだったものが、
こうして現実になってるっていうのは、
ありがたいことだなあと思いながらも、
なんか、変な感じでした。

全然違う学校の人どうしが集まって構成されてる
っていうのは、面白いですね。

同じ学校の人じゃないから、
話せることっていうのもあると思うんです。

ああ、なるほど。
ある程度離れた場所にいる相手だったほうが。

学校の中って、社会が狭いじゃないですか。
その中で自分を出しすぎて、共同体に入れなかった時、
それから後が長いので。

たしかに、どうしても毎日顔を合わせるし、
逃げ場がないですからね。


そういう、ちょっと息苦しさを感じていた高校生たちが、
こどなひろばの運営メンバーとして集まっているから、
お互いに気が合うっていうのもあると思います。

学校でも会社でも同じと思うんですけど、
人間関係のこととかで追い詰められてしまうのって、
その場所が人生の大部分を占めていて、そこ以外に
居場所がないからっていうのはあるでしょうね。

居場所は、何個あってもいいと思うんですよ。
で、そういう場所の一つを作れたらいいっていう
気持ちがあります。

それは、素晴らしいことですよ。
大人になると、選択肢もたくさんあるし、
自分次第で、逃げ場もいろいろ持てると思うんです。
でも、高校生までの時期って、学校と家以外に、
新しい居場所をなかなか持ちにくいですよね。

そうですね。
私も、精神的にツラくなって、
学校に行きたくないって思った時期もあったんですけど、
そういう時って、なんか、
自分に価値が無いのかなって思っちゃうんですよね。

うんうん。

そういう時、学校の外にミーティングに出て行って、
他に自分が認められる場所があるっていうことや、
話せる人がいたことが、自分にとって、
すごく救いになったことがありました。

こどなひろばを始めて、
実際に、肩書き抜きで社会人と話をしてみて、
なにか感じましたか?

経験の量の違いはもちろんあるんですけど、
考えていることや価値観って、
そんなに大きく変わらないなって思いました。


僕も、この前の話し合いの時、同じことを思いました。
高校生もそれぞれ自分の考えを持ってると思ったし、
なんか、そんなに変わらないな、と。

同じ国に住んで、同じようなニュースを見て、
同じようなものを食べているわけだから、
感じてることが変わらないのは、
当たり前かもしれないなと思うんです。

そうですよね。
やっぱり、世代に関係なく、
日本人として共有している感覚っていうのが
あるんだと思いました。

でも、その共通の感覚とは別に、
今の私たちの年代じゃなきゃ見えないもの
っていうのもあると思うんです。
それは、そのうち忘れちゃうと思うんですよ。
で、忘れちゃうから、絶対解決しないんです。

解決出来るようになってる頃には忘れちゃってる、
っていうパラドックスがあるわけですね。

それを、忘れないようにする努力をするより、
今変えちゃったほうが早い、
って思うんです。

おおお!たしかに。
大人になったらやってやろう、よりも、
ずっと話しが早いですよ。


高校生が主体的に行動することで、
「いまどきの高校生は」って言われないように
することにもつながると思いますし、
これからの日本って意外と大丈夫なんじゃない?って
思ってもらえたらいいなと思ってます。
(2013年2月 新宿「MOVE CAFE」にて)

清水宣晶からの紹介】
初めて会った時も、今回話しをしている最中も、ナナさんは常に笑顔を絶やさず、とても柔らかいホスピタリティーが伝わってきた。
ナナさんが代表をつとめている「こどなひろば」のイベントに参加して、高校生から社会人まで幅広い年代の人たちと一緒に話しをした時、その活気に僕は、今までに感じたことのなかった種類の、驚きと面白さを感じた。

社会人と学生とが同じテーブルにつくという場合、つい、社会人が学生に教えてあげる、とか、手助けしてあげる、といった、上からのスタンスになってしまいがちだ。しかし、ナナさんが作ろうとしたのは、年齢の差や立場の違いを取り去った、対等な人間としてのフラットな場で、そういう関係でしか生まれないものがあるのだということを、僕は知った。

ナナさんは、電車の中で耳にした声をきっかけに、世代間のコミュニケーション不足という現実について考え始めた。
同じような気持ちを持ちながら、でもどうしていいかわからない高校生が、他にもたくさんいたからこそ、彼女が起こした行動に賛同する学生が全国に現れて、具体的な動きとして形になったのだと思う。

重要なのは、自分に起こった出来事を前向きに解釈することだ。
ナナさんから聞いて知った、或る男が自分に渡されたビラを運命のお告げと思いこんで扉をノックする、O・ヘンリの「緑の扉」という小説を読み、僕はそんなことを思った。

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