高杉なつみ

アートディレクター・デザイナー
1980年11月30日生まれ


見た目が重要なものを 作るしごとをしています。


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(2010年8月 麻布十番にて)

欠点こそが私

(清水宣晶:) なつみへのインタビューは、
早くまとめたいと思ってるんだけど、
なかなか上手くいかないね。
いっぺんまとめてはみたものの、
なんか、本質をつかんでる感じじゃないんだよな。

(高杉なつみ:) ダメ。
もう一押し。

なつみの話し、ものすごい面白いんだけど、
ほとんど公開出来ないんだよ。
他の人にお聞かせ出来ない内容ばっかりで。

あっきーって、
インタビューで相手の欠点を書かないじゃない?
でも、おそらく私は、欠点こそ私だから。

あっ!

「いいとこ一個もない」みたいに、よく言われる。
しかも私を一番愛してくれる人にこそ、そう言われる。

面白い話しだなあ。

今までつきあった人からは、
「なんで俺はお前のことが好きなんだかわからない」って
必ず言われるの。

すごいなそれ!

それが、メロい感じで
「どうして君をこんなに好きになったんだろう」とかいうんじゃなくて、
「一体なんでお前のこと好きなんだ・・」って。

(笑)マジな雰囲気で。

マジで悩まれる。
しかも、蔑んだ眼で「なんでなんだ・・」って。

それ、最高の褒め言葉だと思うよ。
「条件的にはいいのに、なんか好きになれない」
っていうのと対極なわけでしょ。
条件で好きになってるんじゃないっていうのは、本物だよ。

それは、ありがたいんだけどね。
そしてなぜか、つきあってるうちに、
「ほんと冷たい人だよね」って言われちゃう。

それは、第一段階のなつみと、
第二段階のなつみが違ってるってことなんだよな。

違うんだろうね。
前に言われたことで、よく覚えてるのが、
「なつみは男を六角形のチェックシートで評価してるんだろうけど、
それでいうと、お前は0点だ!」って言われた。

ぶはははははは!
それ、名言だな。

男が求める、
女のチェックシートってのがあるじゃない?
そのシートで採点すると0点なの。

世間一般で、
「あるといい」と言われてる項目ってことだね。

私の場合、その項目の逆で、
胸がないとか、色が白くない、とか。

うん。

そこで「うん」って言わない!

否定はしないよ。

頑ななまでにフォローするのが、
あっきーのキャラでしょう?

(笑)そうか。
ごめん。

あっきーって、
インタビューで相手の欠点は
書かないことにしてるの?

もし、欠点が見えたとしても、
なるべく、そこは無視して、
いい部分を意図的に取り出そうとはしてる。

いいところって、だいたい、悪いところと同じじゃない?
たとえば、あっきーの、人の話しに合わせようとするっていうのも、
言い方を変えると、自分の意見をはっきり出さないっていうことだったり。

そういうことだね。

普通は、そうやって、一緒なんだけど、
私の場合、私を表現する言葉が、
そのまま悪口になってしまう可能性はあるよね。

おぉ!
どういうことだ、それ?

たとえば同じことを、「毒舌」っていう言い方と、
「率直に表現する」っていう言い方があるとしたら、
私が発している言葉は、どう解釈しても「毒舌」で、
いい言い方にするのは難しいと思うんだよね。

なるほどなあ。
でも、そここそが、なつみの本質的なところで、
他の人から好まれるところでもあるんだよな。

だから、あっきーは、
言葉にしにくいんじゃないかな。

すごい!
すごい鋭いと思うよ、それ。

それで、
私の話しを取り出すのに苦労してるんだろうね。

なつみって、第一段階と第二段階で、
印象が結構変わってくるからさ、
なつみに関わった人って、途中で、
「ん?なんか、想像してたのと違うな」ってなった時、
離れていってしまう人と、
より近づいてくる人に分かれるんじゃない?

そうだね。
離れてっちゃう人もわりといる。
でも、アリ地獄みたいにハマってしまう人もいる。

アリ地獄!
それは、無意識のうちに、
相手を依存させてしまってるとこあるのかな。

依存させたい私のエゴ、みたいなのがあるんだろうね。
甘えていいんだよ、っていうことをしながら、
でもここまでね、っていう線がじつはあって、
そこ以上に来ると、「甘えんなボケ!」って。

ぶははははは!
それ、ほんと、アリ地獄だよ。

奥まで行ってしまうクセ

なつみは、
話してる相手への興味を、すごく持ってるよね。

相手の中のほうを、
掘り返したくなるんだよね。

それをやってるから、アリ地獄なんだと思うよ。
開けちゃいけない箱を開けてるんじゃないの?

そう、開けたいのー。

(笑)開けたいのかー!
ああ、自業自得だな。

開けてほしいとも思うけどね。
あっきーは、開けてほしいって思わない?

そりゃあ、思う。

開けてくれないと、心が動かないし。

やっぱり、どっかで求めてるよね。
自分がまだ知らない自分を掘り出されることを。

私は無差別に開けたくなるんだと思う。
あっきーは開けたくならないの?

どうなんだろうな。
オレは、ここに箱があるぞ、ってのを見つけたとしても、
見なかったことにしてスルーしちゃうかもな。

なんでスルーするの!?
中、超見たくない?

それは、もちろん見たい。
でも、出来れば、本人が気づかないうちに、
中を見てフタをして、開けた跡を残さないようにしたい。
ズルいんだけど。

ズルいなー(笑)。
責任取んないよ、みたいな。

それで依存されることを、無意識に避けてるのかもね。
そこで関係が壊れて修復出来なくなることを恐れてる。

いい距離感を保ちたいってことだよね。

言葉は、一度言ったことは、言わなかったことに出来ないし、
箱も、正面から開けた箱を開けなかったことには出来ないからさ。

出来ない。
でも、箱を開けた上での関係のほうが本質じゃない?

それが、わかんないんだよな。
なんでも本音をさらけ出す関係がベストとも思ってないし。

私も、そう言いながら、後悔も多々あるんだけどね。
あっきーの言う通りで、
箱を開けてしまうと取り返しがつかないから。
一定の距離のほうが居心地はいいんだけど、
どうすればいいんだろう、奥まで行っちゃうクセ。

そういうのって、魂のクセだから、変えるの難しいよね。
オレは、無意識にブレーキを踏むのがクセなんだろうし。

相手の中に入るのと、
相手に合わせるっていうのは、
似てるんだけど、ちょっと違って。
私は、入りたがりなんだよね。

攻めていくんだな。

あっきーは合わせたがりで、寄り添うタイプじゃない。
寄り添ってれば、箱はいつも一定の距離にあるままだけど、
入りたがってると、いつか、箱に行き着いちゃうんだよね。

ああ!
なるほどなあ。

私は、人と話してると、入る方向に進むから、
箱までの距離が近い人は、一回で開いちゃうの。

(笑)ピッキングのプロみたいだな。

それが、私の中ではいつもしてるコミュニケーションだから、標準なんだよね。
そうしないと、ちゃんと話した気分にならないというか。

なつみが「冷たい」って思われることがあるのは、
本当に冷たいわけじゃなくて、
相手からしたら、すごく距離が縮まったと思ってたのに、
なつみにとってはそれが特別じゃなくて普通のことで、その温度差から来てるんだろうな。

そう!
そうなると「冷たいポイント」入る。
だから、長く続いてる関係っていうのは、
「まあ、なつみはそういう性格だから」って、
知ってくれてる人なのかもしれないね。

箱の開け方

なつみが、そうやって、
人の箱を開けられるってのは、なんなんだろう。
何か、やり方があるの?

誰かが言ってたけど、人はみんな「自分好き」だから、
何かのコンテンツを作る時でも、自分診断みたいのが流行るじゃない?

占いとか、脳内メーカーとかね。

だから、自分の気付かなかった自分のことを指摘されるのとか、
掘り出されるのが好きだったりすると思うんだけど、
そういう話しにもっていくからじゃないかな?

相手のことを知りたいっていう気持ちが強いのかな。

もちろん、知りたくて話してるんだけど、
その人のことを知りたいっていうんじゃなくて、
「何でもいいから、今日何かを知って帰りたい」って思ってるの。

ぶはははははは!
それもまた、エゴだね。

たぶん、貪欲なんだよ。
新しい事を得たいとか、知りたい、とかってことに。
でも、引き出した結果、興味がないものはすぐ忘れちゃう。

貪欲といっても、相手そのものへの執着とは違うんだな。

「聞いた感じ」になりたいんだと思うんだよね。
で、その感じになると、「ふーん」て、割とそこで満足しちゃう。

でも、なつみにとってはその場限りの興味であったとしても、
その本人にとっては、自分についての気づきっていうのは一生ものだから、すごく印象に残るんだろうね。

そう!
相手にとっては、忘れられないような
「気付きの日」になったりすることある。

「なんでお前のことを好きなのかわからない」って言われるのは、
たぶんその、箱を開けてしまってるのと関係があると思うよ。

これ、あっきーに書かれたら、
その秘密が、秘密じゃなくなっちゃうね。

いやいや、たとえ理由がわかったとしても、
箱の開け方自体は、すごく個人的なことで、
理屈じゃないわけだから、謎のままなんだよ。
なつみって実は、峰不二子バリの、魔性の女なんじゃないか?

峰不二子と私じゃ、
ほら、プロポーションが・・

ああ・・

「ああ・・」じゃなくて!
ちょっと!
ちゃんとフォローしなさい(笑)

否定はしないよ。
(2010年8月 麻布十番にて)

清水宣晶からの紹介】
奈津美は、身長148cmの小さくて大きなデザイナーだ。スペインのセニョリータのような、エキゾチックな雰囲気に隠れてあまり気づかないけれど、実は結構スモールサイズでありながら、はっきりとした存在感があったりする。
場の盛り上げ方や、話しの進め方がものすごく上手で、どんな相手であっても、その人の好みを瞬時に理解して、自由な発想で全力をもって楽しませようとする天性のサービス精神をもっている。

今までに、ほんの少しでも怒ったところは見たことはないけれど、色々な種類の感情を涙とともに流していってしまう気質らしく、そのせいか、常に周りの人にあれこれと気遣われるというのは、友達を大事にする彼女の、生まれながらの人徳と言っていいと思う。

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