森村泰明

株式会社オフィスバンク 代表取締役
1976年3月25日生れ
群馬県出身 神奈川大学卒
http://plaza.rakuten.co.jp/obmorimu

イバラの道を進め

(清水宣晶:) ごめん、
オレはお茶を飲ませてもらうんだけど、
ヤスは気にせず、好きなものを飲んでちょうだい。


(森村泰明:) じゃあ、生ビールを。

どうも、おつかれさま。
(乾杯)

初だね、サシ飲みは。

初だよ!
これを、ずっと待ち望んでいたよ。
あちこちの人から聞いてるわけだよ、
オレがこういうインタビューをしていることを知ると、
「それは、ヤスのところに話しを聞きに行ったほうがいいよ」と。

何を話せばいい?

ヤスの人生観と哲学をぜひ聞きたいんだけど、
その前に、仕事のことは聞こうかな。
会社を起業する前って、どこかに勤めてたことはあるの?

前は、同業の会社に勤めてた。
前職はもう、
オラー!みたいなゴリゴリ営業の会社で、
しょっちゅう怒鳴り声が聞こえて、
灰皿がぶんぶん飛んでるような職場で。

あ、そういうところだったのか。

俺はそういうのが当たり前だと思ってたんだけど、
結構優秀な先輩とかが辞めていく姿を見て、
なんか、これは違うのかなと思ってさ。

うんうん。

ビジネスモデルは優れてるんだけど、
離職率がとにかく激しい、と。
これでもし、人が定着する会社だったら、
すごくいい会社が出来るんじゃないかと思ったんだよね。

それで、そういう会社を自分で作ってみようと
思ったんだな。
業種としては、オフィステナントの仲介だよね?

そう、当時、
オフィス仲介のビジネスモデルにすごく感動して。
営業の仕事の中でも、
こんなに難易度が高い営業はないな、と
思ったんだよね。

それ、面白い話しだね!
難易度が高いことに感動したの?

借りる人は、だいたい百戦錬磨の、
ベンチャー企業の経営者だったり、
大企業の総務部長だったりするんだよ。

なるほど。

で、貸す側は、これまた変わってる、
大金持ちとか、不動産のベテランだったりする。
で、お互いが利益相反するわけだよね。
借りる側は少しでも安く借りたいし、
貸す側は少しでも高く貸したい。

そうだよね。

で、扱うのはウチの商品てわけじゃないから、
「よそからでも借りられるよ」って言われることもあって、
差別化もすごく難しい、と。
そういうことを考えると、
この世界で一人前の営業になれたら、
これはどこの世界にいってもやっていけるな、と思った。

難しいからこそ、やる価値がある、
っていう判断なんだね。

イバラの道と、ゆるやかな道があったら、
イバラの道のほうを進め、と。
これは、なんて難しいビジネスモデルなんだ!
と思ったんだよね。
不況も多いし、参入障壁は高いし。

そうすると、
どこで差別化すればいいの?

初めた当初は、
会社のブランドで差別化なんかできないから、
個人の営業マンの力で勝負だよね。
物件なんてどこで借りても一緒です、
僕とつきあうことに意味があるんです、
っていうわけ。

それは、、ほんと難しいな。

ほんと難しい。

住宅の不動産情報だと、
レインズみたいな共通のデータベースがあるけど、
オフィスの場合は、そういうの無いでしょう?

無い。
でも、そういう中でも、
ウチが知らない情報があっちゃいけないっていうことで、
どこよりも先に情報をつかむように動いてる。
死活問題だから。

どうやって情報をつかむわけ?

始めた最初は、データなんてなかったから、
たとえば、渋谷区渋谷1丁目でオフィスの物件を借りたい、
っていう人がいたとしたらさ、
住宅地図を持って、一軒一軒まわって、
オーナーを調べて聞いていくわけだよ。

うおお、
超アナログだね!

今空いてるのはこの物件で、
そのうち、条件に合うのはこれとこれです、と。
これ見に行きましょう、ってふうに。

やっぱり、
そういう地道な作業から
始める必要があるんだね。

今はもう、そういう、
主要な物件情報はデータ化してあるから、
一から全部まわるってことはないけどね。
基本的なところは、すごくアナログな仕事だよ。

愛情を持って怒ること

前の会社の、ゴリゴリの営業っていうのは、
ヤスの気質的には合ってたの?

合ってた。
その時は、
俺もしょっちゅう部下に怒鳴ってたしさ。

マジか!!
ヤスって、学生の時、
なにか体育会系の部活やってたの?

高校までね。
剣道やってた。
剣道部もそんな感じだったよ。

そうか。
じゃ、ヤス自身は、
前の会社の、怒鳴り声が飛び交う空気も、
抵抗はなかったんだ?

そんなになかった。
やるのも、やられるのも慣れてたから。

今はでも、
昔の光通信みたいな、
体育会的な営業の会社って、減ってるんだろうね。
厳しく怒鳴るよりも、個人を尊重して、
みたいな風潮になってきてるんだろうと思う。

だよね。
俺は、一人前にもなっていない個人なんか尊重しちゃいかんと思う。

おお!

新入社員が「マイペース」なんて言葉を使おうもんなら、
「お前のペースなんてあるわけねぇだろ!何様だ!」
って言うよ。

ぶはははは!

そこに愛情を持って叱れば、
それは響く人間には響くから。
俺、怒られないで育った人間て、
すごく不幸だと思うんだよ。

うんうん。

俺が恵まれてたのは、
今までの人生、すごくたくさんの人に
怒ってもらえてたことだと思うから。

そうだね。

だいたいみんな、権利ばっかり主張して、
自分は弱者であるみたいな立場で物を言ってさ、
過保護過ぎると思うよ。

今、学校でも、
すぐ保護者からクレームくるから、
昔みたいに、先生も怒れないしね。

おかしいよ、あんなの。
ウチの会社の文化として、
涙を流しながら怒る、っていうのがあってさ。

熱い!!
それは、ほんとスゴいことだな。

昔から比べると、だいぶゆるくなったと思うけど、
それでも毎年、決算発表の時なんかは、
みんな涙を流して。

それは、適当な仕事してたら、
絶対、涙なんて流れないよね。

甲子園なんかでも、
勝ったチームも負けたチームも涙を流す、っていうのは、
結果に対してじゃなくて、
それまでのプロセスに対して、
自然に涙が流れてくるものだと、俺は思うのね。

うんうん。

会社も一緒でさ、
楽な会社で感動なんて味わえないと思うんだよ。
どうせ仕事をやるんだったら、
そこまでやりたい、っていう思いがある。

そういう会社は、
今、なかなかないと思うよ。

ないよね。
俺もそう思うよ。
俺が言うのもなんだけれど、
超いい会社だよ。

オレは、人を叱るっていうことが苦手で。
嫌われたくないっていう気持ちもあって、
怒ることにためらいがあるんだな。

自分の子どもが悪さした時、
嫌われたくないからっていう理由で、
叱らなかったら、それはかわいそうじゃん。
それと一緒で、社員も、
怒られないのはかわいそうだと思うんだよね。

なるほど。

俺は、愛情を持ってればね、
叱っても、ぶん殴ってもいいと思う。
深い愛情さえ、そこにあればね。
あっ、ぶん殴ってないよ。

そんぐらいの気魄で、ってことだね。

リーダーの最も重要な要素としてさ、
メンバー以上に、メンバーの成長や成果に対してこだわる、
っていうことがあると思うんだよ。

そうだね。

それがもし伝わらなかったら、「やむなし」と。
日頃、愛情を伝えてればいい。
子どもに対しても、普段から、
ちゃんとスキンシップをして、ハグをして、
でも悪いことをやったら、
「だめだ!」と、ちゃんと怒る、と。

うんうん。

愛情をかけないで、
自分の利益とか保身ばっかり考えて叱ると、
人は離れていくし、
子どもも親のことを嫌いになったりするけどさ。
「そうじゃない、
お前のことが何よりも大事だから怒ってるんだ」と。
これは、絶対伝わると思うんだよ。
だから、怒る。

オレさ、
怒らずに相手に理解させる方法はないか、
っていうことを考えるんだよ。
嫌われたくない気持ちもあるんだけど、
単純に、怒るよりも、
対話をするほうが効果的なんじゃないかって思って。

俺も、昔はそう思ってたんだけどさ、
考え方が変わった。

お!
どう変わったの?

俺の場合は、なんだけどね。

もちろん、ヤスの場合を聞きたい。

怒ることの、いい効果ってのも結構あって。
喝を入れると、ピリッと空気が締まるんだよ。
常日頃から怒ってたらダメなんだけど、
怒ることに関しては、気分で怒るんじゃなくて、
一貫性を持つ。

それは大事だね。

この事象については必ず怒る、と。
ウチの場合は、
超怒られるのが、遅刻なんだよ。

あ、そう!

遅刻して、なんで遅刻したのかなんて聞かない。
遅刻は、無条件でアウトだと。

絶対悪なんだね。
それはわかりやすい。

「ふざけんな!」と。
理由なんて必要ないし、諭す必要もない。
そうすると、次に遅刻してきた時は、
超ビビって「すいませんでした!」って来るんだよ。
自分で、反省してるから。
で、遅刻は減る。

なるほどなあ。

大人になって初めて反省するんだよ。
大学生なんて、遅刻は当たり前だから。
「電車が遅れた」なんて理由は、
10分前に来ようとするから遅刻するんだ、と。
仕事に来るんだったら1時間前に来んかい、と。

そうだよね。

それを、
「どうやったら遅刻しないようになると思う?」
って聞いて、
「もうちょっと早く起きるようにしようと思います」
なんて答えが返ってきても、
絶対、直らない。

なっるほどなあ!

諭すとね、グジグジ聞こえちゃうんだよ。
「なんだよ、あいつ、うっせえなあ」とかいう感じになる。
だから、それよりも、ガツン!と言って、
「終わり!いいよ。」って。

それ、スゴいわーー!

普段の細かいことは、別にいい。
ちょっと失敗したとか、間違えちゃったとかは、
普通に「どうしてダメだった?」とか「どうすれば上手くいくと思う」
って聞くんだけど。

重要なポイントだけ、ピシャっと怒るんだな。
それはさっぱりしてていいね。

ウチ、普段はすごいアットホームな会社なんだよ。
昼休みなんかも、10合炊きの炊飯器で米炊いて、
みんなで和気あいあいと話してるんだけど、
でも、遅刻とか礼儀のこととか、いくつか地雷があって、
それを踏んだ時だけ、雷がガツン!と落ちる。

与えれば与えるだけ得られる

ヤスの思想っていうのは、
本とか、人とか、体験とかでいうと、
どこから学んだことが多いの?

全部だね。

全部!?

最近、啓けてさ。
昔は、本を読んだり、お偉いさんの話とか聞いて
「なるほど!」とかって学んでたんだけど、
今はね、いろんなことから学べるようになったんだ。

すべての事が師であると。

つまらないドラマ見ても、
「ああー、な る ほ どー(ダミ声)」と、
そんな感じ。

(笑)どうしちゃったんだ!

たとえば、人が辞める、とかいう時でもさ、
昔だったら、何がダメだったんだろう、とか
ガクッと落ち込んだりしたんだけど、
今は、そこにも気づきがあふれてる。

そうなんだろうね。
経営者っていう立場は、特に、
あらゆることに気づきが多いんだろうと思うよ。

ほんとだね。
これは、すごくハッピーなことだと思う。

ちょっと、
平凡な問いで恐縮なんだけど、
経営者に必要な資質って何なんだろうね?

俺は、覚悟だと思うんだよね。

おお!
即答するなあ、この人は。

たとえ社員に裏切られたとしても、
騙されたとしても、、、
「本望である」と。

本望である!?

社員がやっちまった事の、
尻拭いをしなくちゃいけない時、
「本望である」と。

(笑)その・・なんなの?
「本望である」ってのは?

自分のビジョンとか夢を掲げてさ、
それに、少なからず、
社員の方々に参加をしてもらってるわけだよ。

うん。
なるほど。

そいつらの人生とか、
そいつらの家族の人生を背負うってのは、
やっぱり覚悟が必要だし、
甘っちょろい考えだったら、
経営者になるべきじゃないと思うんだよ。

それは、ほんとに、そうだと思うな。

そういう意味で、
会社を倒産させる経営者っていうのは、
極端なこと言うと、犯罪者と同じだと思うんだよ。
まあ、俺もいつ犯罪者になるかわからないんだけどさ。

いや、わかるよ。
大変なプレッシャーだよね。

だから、草を食ってでも、
会社をつぶしちゃいかん、と。

それはたしかに、覚悟だよな。
間違いなく、経営者に必要な資質だと思うよ。

最初に、あっきー(清水)が、
俺の人生観や哲学を聞きたいって言ってたけど、
俺、哲学っていうのは結構好きでさ。

お!いいね。

会社の経営でも哲学があって、
やり方を学ぶ前に、心得を学べ、
っていうことは言ってる。

なるほど。

営業をやるにしても、
必要なスキルとかの前に、
どういう営業でありたいか、っていうことのほうが
大事と思うんだよ。

やりかたではなく、ありかたである」って話しだね。

その、「ありかた」っていうことで、
営業にも、「営業道」っていうものが
あるんじゃないかな、と思って。

それはわかるなあ。
「営業術」じゃなくて「営業道」
っていうことだよね。

そう!
剣道や柔道も、
もともとは剣術、柔術だったんだよね。
「術」ってのは、相手を策略で陥れてでも、
勝利を手に入れるっていう方法だったんだよ。

うんうん。

でも、それが、
人間形成のために、
自分自身を磨き上げる手段である、
っていうことになった時「道」になったんだ、と。

そういうことだね。

営業でも、営業術になると、
「Yes,but法を使え」とか言って、
お客さんが断ってきた時でも、
「そうですよね、でも、そういう方にこそ・・」
とか言ってるけど、
そんなテクニックを教えてるから売れないんだ、と。
営業は心得だと。
売り込もうとするんじゃなくて、
お客様のことをとにかく親身になって考えることが
営業の「道」なんだ、という哲学があってさ。

それは、まさしく、
経営哲学だな。

たとえば、オフィスを移転するっていうことも、
相手にとって、お金がかかることだからさ、
移転しなくてもいい方法をまず探す。
今の家賃が高いんだったら、代わりに大家さんに交渉して、
家賃を下げてもらう、とか。
ウチの利益にはならないんだけど、
めぐりめぐって、またお客さんになってくれたりするから。

なるほどなあ。

世の中の理(ことわり)としてさ、
「欲すれば欲するだけ失う、
与えれば与えるだけ得られる」っていうのが
あると思うんだよ。

そうだね。
それはほんとに、真理だと思う。

米を作る時なんかも、今の食べ物を惜しんで、
ちょっとしか種を撒かないと、実りも少ないわけじゃない。
でも、賢人は、たくさん種を巻いて、肥料もたくさんやって。
その分、秋になるとたくさん収穫もある。

うんうん。

会社の経営も一緒で、
安い人件費で、社員から搾取しようとすればするほど、
社員は逃げていくし、サボろうとする。
でも、社員に自由に権限を与えて、
一生懸命手をかけるほど、いろんな実りをもたらしてくれる。
すべて、世の中の理というのは、
こういうものだ、と思う。

難しいことだったろうと思うよ。
20代の時にそんなことを考えるっていうのはね。

会社を作った20代の時には、
まだ、そんな哲学はなかったんだけど、
一つだけ決めてたのは、社員のための会社を作ろう、
っていうことだった。
頑張った社員がハッピーになれて、
社員の夢を実現出来る会社を作ろう、と。
そこは今もブレてない方針だなあ。

おお!
これはもう、
ヤスの哲学的名言を追加でオーダーしよう。
他にも、これぞという座右の銘がある?

「笑うものは泣く、泣くものは笑う」
っていうのがある。

お!?
また、謎解きみたいな言葉が出てきたね。

どっちも同じようなことを言ってるんだけど、
でも、どっちが先かによって人生が大きく変わる、と。

うんうん。

先に泣く人間のほうがハッピーなんだ、と。
後で笑える日が必ず来るわけだからね。
だから常に、泣きながら仕事をしろ、と。

先取りでまず泣いておこう、ってことか。

そうそう。
でも、まだまだ、
俺は笑うつもりはないけどね。
だはははは(笑)。

(笑)スゴい根性だなあ。
でも、経営者ってのは、そうあるべきだと思うよ。
(2011年12月 渋谷「かつ吉」にて)


【ヒトゴトへの一言(森村泰明)】
会社説明会とか雑誌のインタビューとまったく違いました。インタビューというより、まさに友人と酒の席で戯言を話してた感じです。尊敬する友人と楽しく飲めたという感想です。

清水宣晶からの紹介】
こういうインタビューを続けていると、人の良い評判というのは自然に耳に入ってくるものだ。ヤスについては、様々な人から、話しを聞きに行ってみたほうがいいという勧めをうけた。

ヤスは、自分と同年代とは思えないほどに、古き時代の日本の「父」を想い起こさせる確固とした思想を持っていて、話しをしていると不思議な気分になる。
しかし、それもそのはずで、彼の視線の先は、現代の著名人やビジネスパーソンよりも、西郷隆盛や二宮尊徳や武田信玄のような、歴史的な偉人に焦点が当てられているからだ。

ヤスは説明が上手い男で、身振りや声音を駆使して、講談のようにわかりやすく話しをする。更にスゴいのは、ほとんどの問いにノータイムで即答をするということで、普段からよほど物事をよく考えているだろうことが伝わってくる気迫がある。

今回、話しをして、新たに発見した気づきもあったし、自分の考えを改めさせられて思わず背筋を伸ばしたところも多くあった。そういう風に、接しているうちに自然に感化をさせる力こそが、リーダーの器というものなのだろうと思う。

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