巻山春菜

2005年、和光大学表現学部イメージ文化学科を卒業。

二年間のフリーター生活を経て、

現在、畳職人修行中!

畳職人への道

(清水宣晶:) まっきーは、畳職人になろうと思ったのは、
いつ頃からだった?

(巻山春菜:) 大学出た後、フリーターをやりながら。
何をやろうかとずっと考えてたんだけど、
物を作る人がいいなーと思って、いろんな職人さんに会いに行ったりしてて。
大学の時、サークルで畑をやってたのね。

畑?
サークルで、畑?

土を耕して、野菜を作ったりね。
それと同時に、学校では仏教美術をやってたり、
学芸員の実習で、日本民藝館に行ったりしてて。

面白いこと色々やってるね。

好きなことは、そうやって色々あったんだけど。
結局、一本にまとめるとしたら何なんだろう、ってずっと考えてたの。
そしたら、ある時、
「これ、畳じゃね?」と。

「畳じゃね?」と(笑)。
その結論に至る過程がオレ、全然わからないんだけど。

手作りで作るものだし、
材料も全部自然の物で出来てるし、
伝統的なものだし。

あー、なるほどなあ。
そう言われてみれば、つながってるわ。

野菜作る時にも無農薬っていうのがあるように、
畳のイグサにも、無農薬や減農薬っていうのがあるのね。

イグサでも、そういうこだわりがある
農家の人がいるんだね。

そういうつながりで知り合ったイグサ農家の人たちが、すごくいい人で、
「お前、畳やろうぜ!」って言ってくれて。

「畳やろうぜ」って言われても・・
「スノボやろうぜ」とかとは、ちょっと違うからな。

で、私も、「そうっスね!」って乗り気になって。

えぇ!?
それで乗り気になっちゃったの?

そう。
畳に関する仕事をしたいと思ったのは、その時からだね。
で、本格的に勉強するために、学校に行こうって決めて。

畳の学校?

全国に何箇所かあって、東京には湯島にあるんだけど。
そこに入ろうと思ったら、「女だから無理」って言われた。

別に禁止されてるわけじゃないのに、
「女には無理だろう」って言われたの?

そう。
「出来ます!畳も作れます!」って何回も言ったんだけど、
聞いてもらえず、門前払いをくらって。

男女の壁ってのが残ってる世界なんだな。

そこで、メラメラと燃えて。
東京がダメなら、本場の京都に行ったるわ、と。

やっぱり本場は京都なんだ?

もともと、都は向こうのほうが先だったわけだからね。
で、学校は「入学してもいいですよ」って言ってくれたんだけど。
でも、京都は、店で既に働いてる人が通う規則になっていて。

業務経験みたいなのが必要なんだね。

それで京都まで乗り込んでいって、
働かせてくれるところを探したんだけど、
その時は、働き口が見つからなかった。

今働いてる、千葉の畳屋で仕事を始めたのは、
どういうきっかけだったの?

すごくよくしてくれてる、福岡の、イグサ問屋さんがあるんだけど、
「知り合いに、いい畳屋さんがあるよ」って紹介してくれて。
で、会ってみたら、江戸時代からタイムスリップしてきたみたいなおじいさんで、スゴい人だったのよ。

その人が、例の、まっきーの大親方か。

そう。
後日、そのおじいさんから熱烈な手紙が送られてきたんだけど、
「一緒に暗いトンネルに入って出口を探しましょう」みたいな。

どういう熱烈コールなんだよ(笑)!

わたしは、それで、「きたー!」と思ったのよ。
ずっと、どこの店でも断られ続けてきたから、
こんな手紙をもらったら行くしかないな、と思って。
それから、その大親方のいる畳屋で職人として働いてる。

周りの人のこと

まっきーの周りは、なんだか面白い人ばっかりいるんだよな。
よく話しに出てくる、小松先生って人のこと、ちょっと聞かせてよ。

大学の先生で、社会教育学を教えてるんだけど。
卒業したばっかりの4月に大井町を歩いてたらね、
ばったり会ったのよ。

最初っから、運命的な感じだね。

「今何やってるの?」って先生が聞くから、
フリーターとボランティアしながら自分探し中です、みたいなこと言ったら、
「じゃあ、明日ウチで飲み会やるからおいでよ」って。

なにが「じゃあ」なんだか・・。

そこから始まった仲なんだけど、
一緒に飲み行ったり、タイの少数民族のフィールドワークに行ったりね。
小松先生の家に初めて行った時に、
「こまっちゃクレズマ」の曲が流れてて。

こまっちゃ・・?
まあいいか。
それで?

私、それ聴いた時に、
「渋さ知らズ」の曲かと思って、
これ『渋さ』ですか?って聞いたら、
「君、『渋さ』知ってるの?」って、それで盛り上がって。

しぶさ・・?
いや、でもそれ、スゴいね!
詳細はよくわからないんだけど、
フィーリングがぴったり合ってる感じが伝わってくるよ。

もう、先生死んじゃったら
私、生きていけないんじゃないかと。

その先生は、畳には興味あるの?

特に興味はないと思う。
そんなに一緒に遊んでても、
「畳やってるヤツ」ぐらいの認識だよ、私のことは。

それ、いいねえ。
小学校の友達みたいな感覚だね。
なんかよくわかんないけど、畳やってるヤツ、っていう。
大人のつきあいじゃない、
「友達」って感じで、最高にいいよ。

タイのフィールドワークで一緒に行った学生からは
「おじいちゃん」て呼ばれるぐらい年上の人なんだけどね。
本当に人生を楽しんでる人で、その人からの影響は大きい。

まっきー、インドにも行ったことあるって言ってたけど、
ガンジス川の流域に行ったの?

西のほうの、マハラシュトラ州っていうところで、
ひたすら石窟寺院にあるストゥーパを観る旅。

またそれも、渋いなあ!
そんなテーマでインド行った人って、初めて聞くよ。
ストゥーパって、塔みたいな形してるやつ?

塔なんだけど、初期仏教のは、
丸い石があって、その上に角みたいなのが伸びて、
「おぼっちゃまくん」みたいなシルエットのやつ。


ああ、そのたとえは、非常にわかりやすいです。
一人で行ったの?

ドイツ人のインド美術の研究家の先生と、
日本人のドイツ文学やってる写真家と、
女の小説家の先生と、学生たちで一緒に行った。

むちゃくちゃな組み合わせだね。

みんなで遊んでた時に、写真家の人が縄跳びを跳んだの。
そしたら、パーン!っていう音がして。
アキレス腱が切れちゃって。

アキレス腱て、パーン、ていうんだ!?

旅行が始まって早々、リタイアになっちゃって。
私、そのツアーのリーダーをやってたもんだから、
もういっぱいいっぱいになりすぎて、超泣いちゃった。

そもそも、旅のトラブルと違うしな・・
完全に想定外だよね。

硬派でいきたい

まっきーは、畳作るのは得意なの?

私、手先は器用なほうなんだけど、
畳って手先で作るもんじゃないし。

手先で作るものではないんだ?

でっかいじゃん。
力が要るし、身体能力も必要だし、
むしろスポーツ。

むしろスポーツ!
それ、新しいよ。
オレの、畳職人についての認識が大きく変わった。

身体能力が高い人のほうが、あれは上手に機敏に作れる。
もともと私、のんびりだから、
「手のろい!」とかって怒られる。
そこは、向いてないなあって思うけどね。

機械を使うっていうのは、アリなの?

畳屋さんによっては、全部機械を使って作ってて、
手作業では作ってないっていうところもたくさんある。

機械を使ったほうがキレイだったりとか?

あるある。
私が作るのよりも、機械のほうが全然キレイだったりする。
熟練した職人さんが作れば、手の感覚で微調整できるからやっぱり機械よりも良くできるんだけど。

そうすると、手で作る意味ってのは、
「伝統を残す」ってところになってきちゃうのかな。

難しいところだね。
最初は、「機械より手作りがいい」ってイメージで勝手に思ってたけど、
やっぱり、職人さんも、生活しなきゃいけないからね。
手作業と機械じゃ、一日に作れる量が全然違うから。
それをどうとらえていいか、自分の中でも考え中。

なるほどなあ。
でも、まっきーみたいな若い子が畳作りに関わり続けていれば、
手作りの畳に注目される時代が来るような気もするけどな。

意識高い人もいっぱいいるから、
きっかけがあれば、変わっていくんじゃないかとも思う。

畳でアートをしてみるっていうのは、どうなんだろう?
「タタミペインティング」みたいな感じで。

そういうのやってる人もいる。
ヘリをピンクにしてみたりね、
赤や黒の畳を作ったり。

ああ、やっぱりあるのか。
そういうのをやるってのは、興味あるの?

私は、硬派でいきたい。
本物に近いものを作り続けたいな。

わかるなあ。
まっきーには、正統派で行って欲しい気がするよ。

これだけ畳を熱く語ったにもかかわらずね、
私の一番の夢は「大家族を作ること」なの。

大家族?
子だくさんてこと?

子っていうより、孫が欲しいのね。
「孫100人」っていうキャッチコピーで、
中学生の頃から言い続けてることなんだけど。

熱い!!
孫100人いる人は、さすがに周りでは知らないな・・
ラムセス2世とかの世界になってくるんじゃないかな。

うちの父方のおじいちゃんとおばあちゃんは、孫が11人いて。
それで幸せそうだったのを見て育ってるから、
孫が多いっていうのは幸せなこと、っていうイメージがあるんだと思う。
それが、畳より何より、一番の夢。
(2009年5月 自由が丘「afternoon tea」にて)


清水宣晶からの紹介】
まっきーは、大井町で三代続く畳屋に生まれて、今は毎日、千葉の畳屋まで通って大親方の下で修行をしている。修行中の身なので、給料は出ない。だから、畳屋が休みの日には、夜明け前から駅の売店でアルバイトをしている。まるで、ボクシングの特訓をしながら新聞配達で体を鍛えているようなストイックさだ。

まっきーが面白いのは、そんなことをまったく想像させない、どこから見ても普通の女の子であることだ。厳しい職人の世界に身を投じて、朝夕、重い畳を担ぎながら畳の張替えを続けるという、大の男であっても音を上げてしまいそうな環境にあって、彼女は常に面白いことを見つけて、毎日を楽しく過ごしている。世の流行に左右されず、自分の征く道を硬派に貫く姿は、ほれぼれするほどにカッコいい。

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