ひらつかけいこ


(社)ドゥーラ協会 認定産後ドゥーラ。
東京都杉並区で産前産後のおかあさんの暮らしをサポートしています。
主にごはん作り、洗濯、沐浴やお掃除をおこなっています。
おかあさんの心配ごともまるごと受けとめていくことを大切にしています。
プロフィール https://www.doulajapan.com/member-page/?doula_id=0206
インスタグラム https://www.instagram.com/doula_keico/

官公庁ではたらいていた時に初の産休育休を取得。
その後、保育園とカフェの運営の立ち上げや国際協力の組織、『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』というプロジェクトに仕事として関わってきました。

人に会うことがすき、山登り、本、お酒、パンづくりをこよなく愛しています。

ドゥーラという仕事

(ひらつかけいこ:) ランチ安くない!?サイゼリヤ。

(清水宣晶:) そうそう。
あと、こういう大きいテーブル、話し聞く時やりやすいんだよ。
ファミレスはジャマされないし、ドリンクバーもあるし、いいなあ。

気楽だよね。
「飲むのは無しだよ」って感じ?
飲んでもいい?


あ、もう全っ然大丈夫。
これ仕事じゃなくて、雑談の場だから(笑)。
むしろ飲んでもらったほうがいい。

うわぁー!
飲もう、飲もう。

サイゼリヤはワインが美味しいって評判、結構聞くよ。

あっきーも、気にせず食べてね。
甘いものでも、辛いものでも。

じゃあ、オレはチョリソーとドリンクバーを。

私はサラミと、ドリンクバーと、グラスワインの赤と白を。


そのオーダーの仕方すごいね!?
赤と白を同時に注文するの?

だって、今日長いでしょ。
どうせ両方飲むから。笑
お店の人もいっぺんに持ってきたほうが大変じゃないじゃん。



ドゥーラってさ、オレは、けいこりんがやっているから知ってたけど、あまり一般には知られてないよね?

そうなの。
産後ケアとか、産後ヘルパーとか、ベビーシッターって言葉はよく耳にするでしょ。

うん、よく聞くし、何をやっているか想像がつく。

「ドゥーラ」はギリシア語で、「他の女性を支援する、経験豊かな女性」っていう意味があってね。
海外では、出産ドゥーラといって日本でいう助産師みたいな職業として確立されていて、ドゥーラって言えばすぐにわかるぐらい。

あ、そうなんだ!?

でもね、日本にはなかなか浸透してなくて。
「ドゥーラ」って言うと人の名前だと勘違いされたり、説明が必要になるから「ベビーシッター」とかに言葉が変わってたりすることが多いんだよね。

ぶはははは!
ドゥーラさん、っていう名前の人のことだと思われちゃうのか。

お母さんたちであれば、「産後サポート」とかっていうワードで検索したりして、「産後ドゥーラ」の情報にたどり着く人もいるけど、まあ、一般的には知らないよね。

(※一般社団法人ドゥーラ協会HP

そうか、自分が「産後どうしよう」って思った人が調べて知るんだね。
今まで、何人ぐらいのお母さんのところに通ったの?

1年半で50人超えたくらい。
伺う頻度はまちまちだけど、常時7人くらいの方のサポートに行ってるよ。

あ、そんなに!
行ってみて、なんとなくお互いに感じが合わなかったみたいなことはないのかな?

ホームページのプロフィールに、以前の職業とか考えていること、好きな事なんかをありのまま書いていて。
連絡が来る前に、まずそれを見てくれてるっていうのがあるから。

そうか、そこでフィルタリングされてるから、合わなそうな人はそもそも依頼してこないんだね。

そう、だから今まで、合わないなって感じる人に会ったことはないね。

産後サポートっていつまでっていう期間は決まってるの?

厳密にはなくて、産後から8週間の産褥期を含めて3~4ヶ月の方が多いかな。
その時期に集中して使われる方もいるけれど。
でも、子育てって、その時その時で大変なことはいつでもあるじゃない。


そうだね、人によって状況も違うだろうし。

だから継続して半年とか、二人目が生まれるまでとか、長く使われる方がほとんどなの。

けいこりん、料理を作るっていうだけじゃなくて、お母さんが寝ている間に子どもをみる、っていうこともあるんだよね?

あるある。
お母さんが産後間もない時期は「眠りたい」っていうときも多いから、見守りしつつ、簡単な家事をやったりとか。
私の背中は、子どもが寝るのよ。

ぶはははは!
安心できる背中なんだね。


今みている8ヶ月のお子さんは、おんぶヒモを見せるとニコッて笑うの。
眠いんだけどさ、でもうまく眠れない時、抱っこよりもおんぶのほうが寝るから。
よいしょって背負うと、すぐにぐっすり寝て。


(※掲載の許可をいただいています)

ぐっすり寝てるなあ。

かわいいでしょ。
背中はだから、なかなか便利で。

そうか、しかも手が自由になるから家事もしやすいし。

暮らしの中に入っていく

そもそも、けいこりんが産後ケアに関心を持ったのって、なにかきっかけはあったの?

私、10年前に志村季世恵さんの講演会を主催したことがあって。
(※バース・セラピスト。多くの方々のカウンセリングやターミナルケアをされてきた。)

あ、そうだったんだ!?
そこから出産のことに興味が出てきたのかな。


そうかもね。
季世恵さんに出会ったことは大きかったと思う。
講演会をお願いしますって言った時に、「じゃあ一度ウチに遊びにいらしてください」って言ってもらって。
さやちゃん(和田清華)と恭子ちゃん(山本恭子)と、一緒に行ったことがあったのね。

うんうん。

私はその頃、結果思考というか、働いて成果を出すことに気持ちが向いてたから、
「季世恵さんは、カウンセリングをしたり、本を出したり、たくさんの活動をしていて、どうやって時間をまわしているんですか?」って聞いたの。
そしたら、「時間をまわしているって感覚はないの。すべてが暮らし、すべてが成長」って言われて。

ああ!なるほどなあ。

それと、「時間をぶつ切りにして考えないことかな」っていうお話しをされていたのが衝撃的で、そこから私の人生が始まったんじゃないかっていうぐらい、意識が変わった。
大変だなっていうことも、すべて成長や栄養につながるんだなって思って、それからは私、大変って言わなくなったのね。
その時は漠然とだったけど、暮らしの中に入っていける仕事をしたいって思った。

暮らしの中に。

私、「暮らしの手帳」も大好きで(笑)。
暮らしの中をどうにかしたいっていう思いになっていったんだよね。

そこはオレも、とても興味があるところだけれど、
でもあんまり、人の暮らしの中に踏み込んでいける仕事ってなくない?

そう。
衣食住の、見えない部分の、大変なこともいっぱいあるっていう意味での「暮らし」はあんまりないかもね。


そうだよね。

だって大変だもん。
関わる人も、関わられる人も。

そう思う。

ドゥーラをやっていることを言うと、「人の家に入っていくって大変じゃない?」って言われるの。
「他人の家に行って、冷蔵庫の中身で料理作るとか、考えただけで大変」って。

それぞれの家庭の中って、実はかなりブラックボックスだよね。
出産したばかりの時ってとくに、子どもとお母さんだけの世界になって、世間から切り離されることが多いわけでしょう。
どうなっているか周りからはわからない場所だし、そこに入っていくのは大変そうっていうのもわかる。

たしかに。
でも、そのしんどさが、私にとってはしんどくなくて。
むしろ、楽しみとか、喜びの方が大きいから。

おおお!そうなんだね。

産後って、とにかくいろいろな事が押し寄せてくるでしょう?
必ずしも赤ちゃんを生んで祝福されて幸せいっぱいっていう状態とは限らないし、夫婦関係や家族の問題もあるだろうし。
しかもお母さんは、出産っていう身体に負担のかかることを終えたばかりだから。


人生の一大イベントだからなあ。

骨盤がグッラグラの状態で寝てなきゃいけない時期に、結構みんな頑張っていろいろやろうとしちゃう人が多いし。
そんなにがんばらなくていいよ!」って思うんだけど。
そういう、暮らしの中の、一番助けを必要としている部分に関わりたいっていうのが、私がドゥーラをやっている理由なんだと思う。

そうか、それはやっぱり、ベビーシッターとは全然違う仕事だね。

うんうん。
赤ちゃんも子どもも好きだけど、それよりも、どちらかというと、お母さんとか暮らしのサポートをしたい、っていうところからだった。
それで、出来るだけ早い段階から関われるっていうことを考えたらドゥーラかなあ、っていう。

出産直後ほど大変な時は、なかなかないもんね。

でしょ?
出産の後って、どうだった?
あっきーは家にいられる時間が長いから、子育てにもそのぶん関われたのかな。


一緒にいられた時間は長かったと思うけどね。
でも、やっぱり母親の大変さは別格だと思う。
出産したばかりで体がしんどいところに、授乳みたいに母親じゃないと出来ないことがあるわけだし。

そうなんだよね。

二人目の子が生まれた後とくに実感したんだけど、二人がかりで育ててすらこんなに大変なのに、「ワンオペ育児」とか言われてるのって、物理的にどうやって回してるわけ?ってほんと不思議になるよ。

そう、それが正しい感覚だよ。
それを実際に体験してわかってるだけでも、ちゃんと奥さんとパートナーになってると思う。

自分の気配を消す

ドゥーラっていうのは、どういう人が向いてるんだと思う?

そうだなぁ・・常に自分にベクトルが向いていると、出来ないと思うんだよね、この職業は。

ほうほうほう!
それ面白いね。

「自分」が愛されたいとか、「自分」を認めてほしいとか、その気持ちはあっていいんだけど、過剰に自分に意識が向きすぎていると、お母さんや子どもや、ご家庭に目を向ける余裕がないでしょう。
普段、私自身にも大変なことがないわけじゃないんだけど、ドゥーラに行く時はそういうのをいったんおうちに置いて、無になるというか。
自分を消さないと、いるー!っていう存在感があったらイヤじゃん。

わかるわかる。
自分の家に人が入ってきているわけだからね。
存在感があったら気になるよ。

私は、気配を消すのが得意みたい。

そうなんだ!

動物にもあんまり、警戒されない(笑)。


ぶははははは!
なにか、草木みたいな自然のオーラが出てるのかもな。

私がドゥーラで行っているとき、家の中でお母さんがくつろいでいるのを見た時は、私の中ではガッツポーズで。

わかるなあ。
ちゃんと私の存在が消えている、っていうことだよね。

あれやこれやと私に気を使ってもらってたら、ダメだと思ってるの。
本来だったら、私が行くことによって楽になって、くつろいでいただかなきゃいけないわけだから。
あたかも私がいないかのように、普段の感じにしてもらえてると、よしっ!って思う。

裏方に徹するんだな。


たとえば、ドゥーラで行った家の中の冷蔵庫を見て、
「あれ、このリンゴは先週から数が減ってない」って気づいたとするじゃない?
リンゴって、意外とむくの面倒なんだよね。
だから、お料理とかしたついでに、リンゴをむいておく、とか。
なんかそういう、些細なことなんだけど。

サービスのあり方としては、一段高度だよね。
お店の店員なんかは、お客さんにいろいろ話しかけたり、もてなしたりがサービスだけれど、
そうじゃなくて、相手が何を望んでいるかを、察するっていうことでしょ。

そう!
まさに、ドゥーラ協会の代表の宗先生は、「日本人は察する力があるから、ドゥーラに向いている」っていうことを言っていて。
ただ、どうしても場合によっては「察する」だけだと現場で確実なコミュニケーションが取れないことも出てくる。
『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』(※暗闇の中にグループを組んで入り、中を探検しながら様々なシーンを体験するワークショップ)ではさ、真っ暗闇の中では察することが出来ないから、言葉にする必要があるのね。
私は両方大事にしたらいいかも!と。
察するけど、言葉にはちゃんとするというかさ。

なるほどね。
どっちも重要だなあ。
産後の時期は、本当にそういう助けを必要としている人は多いんじゃないかな。

そう思うんだけど、依頼する時は、結構勇気がいるんじゃないかなと思ってて。

ああ、そうだろうね。
人に頼るっていうことの後ろめたさもあるだろうし。

そう!
ほんとにそうなのよ。
奥さんが使いたいと思っても、旦那さんが人を呼ぶことに抵抗があることもある。


あるだろうなあ。
「自分たちで頑張ろうよ」って旦那に言われたら、なかなかお母さんは頼めないよね。

日本の文化的に、他人に頼りにくいこともあって。
産後が大変だからドゥーラに頼もう、っていうことをなかなか実行しにくいと思う。

そうだね。
ドゥーラに協力してもらうっていうことが、普通の選択肢として広まったらいいな。

そして時は流れ

あっきー、そろそろ、お子さんたちをお風呂に入れる時間じゃない?

おお、もうこんな時間か。
ずいぶん長いこと話しちゃったね。

ああ、なんかいろいろ話したから、浄化された気がする。
春の野菜を食べてデトックスをしているような感じ。


あ、そんなに(笑)!?

なかなか、こうやってまとめて人に話す機会ってなかったから、自分の考えを整理出来たよ。
ありがとう。

いやいや、こちらこそだよ。
けいこりんと、ゆっくり話しが出来てよかった。
また次も、お酒が飲める店でね。
(2018年4月 中目黒「サイゼリヤ」にて)


【ヒトゴトへの一言(ひらつかけいこ)】
念願の夢が叶いました!ありがとう、ありがとう!!
聞き上手なあっきーとたのしく対話ができてうれしかったです。
またまたまた、たくさん対話の機会があったらいいな。
よろしくね!

清水宣晶からの紹介】
けいこりんは旧くからの友人で、共通の友だちがたくさんいる。
今年の初めに、皆で新年会で集まる機会があった時、けいこりんから「ヒトゴトで話しを聞いてもらうのが私の夢なの」と言っていただき、「そんな夢なら、大歓迎で速攻で実現可能ですよ!」と今回話しをする場を設けさせていただいた。

僕自身が二度の出産に立ち会って以来、けいこりんがやっているドゥーラというものにとても興味を持っていた。
一緒にいる人をくつろがせる、天性の「母」なる資質を持っている彼女のためにあるような職業だ。

面白いのは、けいこりんが一般的な常識の枠を軽々と超えていく柔軟な考え方を持っていることで、今回のインタビューの中ではそのくだりは書き起こしていないのだけれど、固定観念に縛られない彼女の生き方を聞く都度、僕は「人生はまだまだ、あらゆる可能性にあふれているな」とワクワクして元気になる。

これから出産をむかえる人や、産後間もないお母さんの中には、きっと誰かの助けが必要になる人がたくさんいるだろう。
そういうお母さんたちに、ドゥーラという存在があることが伝わってほしいと思っている。

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