谷澤裕美

食べ歩き、特にスイーツが大好き。趣味が高じてデパートに就職、全国の和洋菓子を担当した経験も。その後自分だけでなく、おいしいものや素敵なものをより多くの人に紹介したい!と広報、宣伝を担当。

伝えるからにはもっと深く知って自信をつけたい!と思い「衣・食・住」に関わる資格を勉強し「インテリアコーディネーター」「フードコーディネーター」「カラーコーディネーター」を取得。

現在はウインドーショッピングや散歩をしながら情報収集する毎日です。


(2010年9月 神楽坂「スタジオーネ」にて)

その場での役割

(清水宣晶:) 今日はさ、ちょっと、
美菜から、谷澤さんにインタビューしてみてもらっていい?

(大槻美菜:) えええー?
どうやればいいの?

ここが谷澤さんの魅力だ、
って思うところを、美菜から紹介してほしいんだよ。

谷澤さんは、私がイクスピアリに勤めていた時代の同僚で、
自分にすごく似てるところと、まったく違うところと、
両方を持ってる不思議な存在なんだよね。

うんうん。

私はすごく、好き嫌いがはっきりしてるし、顔に出るから、
味方も作る代わりに、敵も作ることが多いんだけど、
谷澤さんは、敵を作るっていうことがまったくなくて、
私一人だったらうまくいかなかったことが、
谷澤さんが一緒にいてくれたことで、救われたことがすごくあった。

谷澤さんは、仕事やってて、
腹立つことありました?

(谷澤裕美:) イヤなこともある時はあったけど、割り切ってたのかな。

なんで割り切れてたんですか?

仕事は仕事、って思っちゃうからかな。

それがスゴいって思っちゃうんですよね。
私の場合は、仕事でなんかあると、
家に帰ってからも一日それで気分が落ち着かなくなっちゃうんだけど、
谷澤さんは、切り替わっちゃうんでしょう?

それがいいか悪いかわからないんだけど、
女優??? になれちゃうというか、
演じられちゃう。

ああーー!
それはよくわかります。
いる場所によって、自分が演じる役割が違うってことでしょう。

そう、
新卒で入った、デパートの和洋菓子売場で働いてた時は、
よく怒ってたんじゃないかと思う。

ほんとですか!?
想像つかない。
イクスピアリの時と、何が違ったんですか?

やっぱり、役割が違ったんじゃないかな。
広報の仕事の時は、周りとうまく協調しないと仕事が進まないけど、
売場にいる時は、新店立ち上げを若い時期に任されたこともあって、
逆に威厳がないと舐められちゃう、っていう。

それを考えられるってのは、
感情より理性が勝つってことですか?

そうなのかな。

是非聞きたい。
私もそう出来るのか。
イライラしてたらやってられない、
と思いつつも、私だったらイライラしちゃう。
だって、腹立つものは腹立ちません?

どっちかっていうと、美菜が普通の人以上に
感情に影響される人だから、そこを基準にすると、
たいがいの人は理性のほうが勝ってるんじゃないかな。

マジすか。
新卒の頃、先輩に、「表情に『キライ』って出しすぎ」って言われたことある。

その感情表現能力も、
それはそれで、スゴいことだよね。

その人としゃべるときに、
顔に出さないように、いっかい落ち着く、とかない?

それが出来ないの。
フガー!ってなっちゃって。

新店立ち上げの勉強のために老舗のデパートへ出向することになった時、
そのデパートの上司に、
「マネージャーが優しい人だったら、それをサポートするお前は厳しく
ならなくちゃいけないし、逆に厳しい人だったら、お前は優しく周りに
接しないと売場は上手くまとまらない」って教えてもらったことがあって。

いい上司ですね!

その時言われたことは、
仕事の考え方の根底にあると思う。

美菜と同じ部署で仕事してた時は、
「隣にきっつい子がいるから、私は穏やかにいかないと」
って思ってたんじゃないかな。

そういうことだったのか!

谷澤さん、その場で与えられた配役みたいなのを意識して、
「今回はこの役割でいくんだ!」って、自覚を持ってるんですね。

うまく出来てるかわからないけど、
結構それは、意識の中にあるかもしれないな。

ディズニーランドが目標

谷澤さん、東京ディズニーランドはよく行ったんですか?

小さい頃、ものすごく好きだった。
「ディズニーファン」っていう雑誌を創刊号から全部買ってて。

私が知り合った頃は、全然そんな素振りはなくて、
後から聞いて、「え?好きだったんですか!?」って、びっくりした。

そう、前は部屋の中がミッキーミッキーしてたんだけど、
今はその熱が冷めて、2~3個あるぐらい。

岐阜から行くのは、遠かったでしょう。

小学生の時に東京ディズニーランドが出来て。
それから必ず毎年一回、一年間お小遣いを貯めて、
夜行バスで東京ディズニーランドに行くっていうのが楽しみだったんですよ。

すごい一大イベントだなあ!

行くその日までの一年間、
どこに行こうとか、どういう順番でまわろう、って
雑誌や本で勉強?したりして。

そういう特集、テレビとかでもよくやってるよね。
先にお土産買って、
ロッカーにいれとく、とかね。

いかに効率的にアトラクション乗ったり、ショーを見るかってことに
興味を持って、
自作のスケジュール表みたいのを一緒に行ったみんなに配って、
「今日はこれで行くからね」って。

(笑)スゴい!
毎年の楽しみがあるっていいなあ。
そういう希望がある人って、絶対に自殺しないでしょう。

なんか、壮大な話しだね。

昔でいう、お伊勢参りとか、
メッカへの巡礼みたいな感じだよね。

もう、生活の中心がディズニーだったから。
あだ名も「ヒロミッキーって呼んで」とか
周りに言ってたり。

(二人、爆笑)

初めて聞きましたよ、それ。
イクスピアリにいた時に言ってくれれば、そう呼んだのに!

学生時代やデパート時代の同期はそう呼んでたんだけど、
もうイクスピアリにいた頃は、熱が冷めてたからね。

おっもしろい!

デパート時代に作られた、
社員募集用の冊子のインタビューで
「どんな会社にしたいですか?」って質問に、
「ディズニーランドみたいな会社にしたいです」って答えてたし、
すべての目指すものが、それだった。

非日常というか、年に一度訪れる、
お祭りみたいな特別感が良かったんでしょうね。

そう、近くに勤めるようになってからは、
毎日シンデレラ城は見えるし、
行きたい時にいつでも行ける、って思っちゃって、
その分、特別感はなくなっちゃったのかも。

ちなみに私も、小さい頃から、春夏秋冬の
年に4回はディズニーランドって行ってたの。

ほんと!?

だけど、イクスピアリで働いてた時は、4年の間で1~2回くらいしか行ってないの。

本来なら、16回ぐらい行っててもおかしくないんだよね。

仕事が終わった後に、アフターファイブのパスとかで
ガンガン行っちゃうんだろうなーとか、入社した頃は思ってたんだけど。

それも不思議だね。

私もやっぱり、いつでも行けると思って、行かないうちに
なんとなく行く気がうせちゃったんだろうね。

谷澤さんは、入社した頃は、どうだった?

入った頃はまだ、すごい好きで。
東京ディズニーランドの内側の部分が見られる機会があるっていうから、
それが、すごく楽しみだった。

ミッキーマウスの内側とかも見れるってことですか?

それは、見れない(笑)。

それはほんと厳重だから。

社員ですら見れないの!?

バックステージでも社員に対して、ちゃんと手を振って見送ってくれるし。

さすがだなあ。
じゃあ、社員同士でも、
何の仕事をしてるのかわからない人がいるのかな。

社員多いし、ぜんぜんいるでしょう。

合コンとか行って、仕事なにやってるか聞かれた時、
「俺、実は、あれやってる人なんだけど」って、
言いたくなっちゃわないのかな。

そういうこと言っちゃうような人は、
たぶん、面接で落とされてるから。

一人っ子論

新卒の時にデパートに入ったっていうのは、
やっぱり、サービス業とか接客業をやりたかったんですか?

というよりも、甘いモノが大好きで。
食べ物がたくさん集まるデパートの催事に興味があったんです。
京都で過ごした大学時代一番頑張ったことは、
関西のケーキ屋とパン屋を何百軒も回ったことなんですよ。

食べ物っていうところから興味持ったんですね。

母親がパン教室をやってて、
その影響で、すごく好きだったんですね。
パンも、甘いパンのほうが好きで。

谷澤さん、ケーキだけじゃなくて、パンも作るの?

いや、ケーキだけ。
パンは、特別な機械や道具がたくさん要るんですよ。発酵器とか。

最近は、いいオーブンだと「発酵」とか色々出来るけど、
昔はなかったから。
うちのお父さんも、発泡スチロールにお湯入れて、温度計見ながら作ってた。

パン作ってたの?
なに、そのお父さん!?

いや、なんか、お父さん、
時期によって、凝ってるものがあるのよ。

そういえば、谷澤さんも美菜も、
一人っ子っていう共通点があるんだよね。
そこでは、何か似たもの感じる?

旦那様と一人っ子論てのをよく話すんだけど、
何か自分と違う行動や考えがあると
「一人っ子だからだ」ってよく言われる。

プリン食べちゃうとかね。

そう!
冷蔵庫にプリンが一個あると、私、勝手に食べちゃうんだけど、
旦那様に「買ってきた人に確認しなきゃ」って言われる。

でも、一人っ子の場合は、
冷蔵庫にあるのは「食べていい」ってことなのよ。

そういうことなの!?

見つけたら基本的には確認する人もいないし、
親が私のおやつのために買ってきてくれたものだったから
単純に見つけて→食べるっていう感覚で。
でも「食べる前に、一度周りの人に訊くもんなんだ」って言われた。

谷澤さんのプリン話を聞いたら、
「たしかに」ってあらためて思って、おっかしかった。

この前やってた番組で、
一人っ子の特徴みたいなのを説明してて。

見た!
あれ、超そのとおりだと思った!

一人っ子は、圧倒的に世間に馴染めない、って言われてて。

マイペースで、一人遊びが苦じゃなくて、
一人でご飯食べに行ける、とか。
あと、末っ子と似てるってよく言われるけど、
末っ子は助けてくれる人がいるのに対して、
一人っ子は、基本、自分で勝手にやっちゃう、とかね。

末っ子は、やっぱり、
プリン勝手に食べる、はしないよね。

食べたとしても、周りを気にして、うまく甘えて食べる。
一人っ子は、堂々と食べるからね。

旦那様に言われてから、
あ、食べる前に聞くもんなんだ、って思うようになったけどね。

美菜は、貴志さん(美菜のダンナさん)から
何か言われることあるの?

「気を遣え」とか言われることは、まったくないなあ。

勝手にプリン食べちゃった場合、どうなる?

「えーーー。。。。」て言われると思う。

(笑)それで終わり。

私の中では、プリンでもケーキでも、
一番美味しい時に食べてあげなきゃ、って思いがあるのよ。
なるべく早いうちに食べないとって。

気を遣える人

谷澤さんは、強いですよね。

強いっていうのは、どういう感じ?

精神的にしっかりしているというか、
そういう存在があったことに、すごく救われた。

安定感があるってことかな?

そう、安定してる。
なんでだろう。
規則正しい生活だからですかね。

カルシウムとか関係ありますか。

あ、でも骨太って言われた。
この前骨密度測ったら、平均より「密度が高い」って判定された

(二人、爆笑)

そういえば、父親にきいたんだけど、
「お前は兄弟がいないんだから、一人でも生きていけるようになれ」って、私を育てたらしくて。

それ、普通、女の子に言わなくない?

よく言われるのが幼少の頃、冬の田んぼ道を歩いてた時、
凍った冷たい地面の上で転んだことあったらしいんですよ。
普通だったら「だいじょうぶ?」って駆け寄ってすぐ立たせるんだけど、
うちの父は「立て!」って遠くから言うだけで、自ら立ち上がるのを待ってたみたいですよ。

ぶははははは!
その教育の成果で、
強くなったんですね。

そうなんだと思う!

この前、父に「一般的に一人っ子は気を遣わないらしいよ」って言ったら
旦那様が「それ、わかるな~」って頷いてて、
そしたらそのことにショック受けちゃって。
「俺は、気を遣える子に育てたつもりだったのに」って。

いや、でも、
谷澤さんは、世間一般から見たらかなり気を遣える人だと思う。
家族から見た視点だから厳しくなってるだけで。

ダンナさんが、さらに高いレベルで
気配りが出来る人だからだろうね。

確かに、すごく気を遣う人ですね。
「食べる前に人に確認するようにする」みたいな
アドバイスをくれるっていうこともあるし、
以前に仕事でちょっと嫌なことがあった時、
それを旦那様に話したら、プッと笑える話をしてくれて
な~んだって思えるようになった。

考えても仕方ないことは忘れて、
面白いことを考えるようにするって、大事なことですよね。
谷澤さんが、家で仕事から気持ちを切り替えられるのは、ダンナさんの存在も大きいんだと思います。
(2010年9月 神楽坂「スタジオーネ」にて)

【大槻美菜さんからの紹介】
大槻美菜彼女は私にとって、とっても面白い存在。
彼女と私がそっくりだ。と思うこともあれば、真逆だ。と思うこともよくある。

彼女のことを紹介するとき、「私に似ています」と言うとなんだか嘘になるし、「正反対のキャラです」と言ってもこれまた嘘になり、いつも悩む。

一人っ子。マイペース。甘い物好き。食べることが好き。正義感が強い。主婦。住んでるところ。
こんなところがそっくりだ。

冷静。喜怒哀楽が激しくない。割り切り上手。掃除好き。敵を作らない。こだわらない。
こんなところが私と真逆だ。

彼女は前の会社の同僚。当時は仕事も同じ。席も隣。
一人っ子同士なので、基本的にマイペース。1人でしゃべって1人で解決して、相手が聞いてなくてもあまり気にしないで、どんどん次の話題へと進んで行く。

例えばランチに行っても、それぞれ好きなものを選び、あまりシェアはしない。どんなにいろんな話をしていても、お互い心地よい距離感以上は踏み込まない。
だから、私は彼女と一緒にいて、とても楽だ。

そして彼女は、仕事の能力がとても高いが、あっけらかんとしているので、仕事がしやすい。
私がこだわるところに彼女はあまりこだわらず、私が苦手なところが彼女の得意分野だったりする。

私は、言いたいことは言わなければ気がすまず、時に周囲を敵に回すが、彼女は敵を作らず、誰とでも上手につきあうことができる。
一方、彼女はあまり冒険をしない分、私が特攻隊長を務めて、新しい風を起こすこともある。

私は彼女のことを、ちょうど裏表のような存在に感じることがある。
「鏡」とも言えるが、いわゆる「鏡のような存在」とはちょっと違う。

目指したいゴールや大切にしたい価値観、仕事に対する熱い思いは同じなのに、不思議なくらい、表現の仕方は180度違ったりする。
同じ問題に直面しても、受けとめ方が全く異なっていたりする。

例えば、毎日見慣れた部屋の景色も、鏡から覗き込んでみてみると、なんだか別人の部屋のように感じる。
ずっと見つめすぎて善し悪しが分からなくなってしまったデザインも、鏡を当てて見てみると、客観的に善し悪しを感じることができる。
そんな風に使うときの「鏡」に、とてもよく似ている。

だからこそ私は、彼女の判断がとても気になる。
彼女の意見を聞いてみたくなる。

事がうまく進まずに行き詰まった時。自分の中で追い込まれてしまった時。
彼女のことがふと頭に浮かぶ。

彼女ならどう乗り切るだろう。
彼女ならこの状況をどう捉えるのだろう。

そう思うと、いま自分の中に広がっている、絶対にゴールが無さそうな大問題
も、どこかに思いがけない光があるような気がしてくる。

視点を180度変えて、自分ではない視点で物事をとらえることで、気づける糸口があったりする。

居心地が良くて、気楽で、話が楽しくて、甘い物、おいしいもの好き同士だか
ら、ちょいちょいランチやお茶に出かけるのがとても楽しい。そして、他愛ない会話の中で、ときどきハッとさせられる気づきがもらえる。

こんな存在はそうそういないような気がする。

私は彼女に、会社でも、会社を辞めてからも、実は何度となく心を救われてい
る。でもそれに、彼女はあまり気づいていない。

そんな彼女がまた、気楽でありがたい。


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