山口夏海

リクルートで働いてます。主務はネットアライアンス交渉。
美味しいお店と、うさぎの「うさ」が大好き。
マンガは累計8000冊ほど購入履歴があります。

好きな食べ物:(1)おうどん (2)鶏肉 (3)スイカ
好きなマンガ:(1)「雲出づるところ」 (2)「MASTERキートン」 (3)「サンクチュアリ」
好きなゲーム:(1)「MJ」 (2)「zookeeper」
好きなうさぎ:グレーで白いソックスの、うちの「うさ」
(2010年3月 新橋にて)

本屋で買う本

(清水宣晶:) やっぱり、
夏海にはマンガの話しから聞こうかな。

(山口夏海:) あはははは!
やっぱマンガの話しなの!?

一番、深い話しが聞けそうなのは、
そこなんだよね。

いいよ。
(どっからでも来なさい、という自信の表情で)

(笑)スゴい余裕だね!
あれだけ色々買ってるとさ、
買うタイトルってのは、
どうやって選んでるの?

作者名買いが多いね。
知ってる作者はそれでいいとして、
知らない作者は、前は勘で選んでたんだけど、
最近は、amazonかブクログで評価を検索してから買ってる。

一応調べるんだ?
本屋でいきなり買うってのはない?

最近ない。
前は完全に、表紙を見てピンときたのを選んでたんだけどね。

ジャケ買いだね。

わかってきたのは、amzaonの評価は、
マンガに関して言うと、あまり参考にならない。
総じて、評価が高めに出る傾向があるから。

たしかにね。
amazonと比べて、ブクログは率直なコメントが多い気がする。

そうそう。
ブクログのほうが、みんな気どってないのよ。
コメントが人に評価されると思ってないから。

「俺、この主人公ダメだったー」とか、
一行、二行だけ、さらっと書いてあるのも多いしね。

「○○ちゃんに勧められたから読んでみた」とか。
素でしゃべってる人が多くて、
小難しいこと言ったり、分析しようとかって人があんまりいないから、
参考になるのは、ブクログのほう。

個人のメモ書き的な使い方多いよね。

最近思うのは、
書店は、本のQRコードを作っておくべきだなーと思って。
amazonとかブクログの評価が見れるように。

どうなんだろうな。
評価を確認するんだったら、買うところまで
ネットで完結させちゃったほうがいいんじゃない?

ネットと書店の差は、偶然の出会いが極端に少ないの。

評価を見てじっくり買う時はネットにして、
偶然を求めるんだったら本屋で、って使い分けるってのだとどう?

なんだろう。
amazonで買ったことってほとんどないの。

amazonで見て、いいなーって思う本があったら、
書店に行かないでそのままamazonで買っちゃうことない?

私、必ず本屋に行ってる。
本屋が好きなんだと思う。

やっぱり、それはあるんだろうね。
なんとなく、わかるな。
つい本屋に入ってしまうっていうのは、あるよね。

amazonでポチッと押して買えてしまうのは、なんか味気ないんだよね。
ビジネス書はamazonでよく買うんだけど、
マンガは買ったことないわ。

あ!そういえば、オレもそうだ。
マンガって、amazonで買ったことない。

なんか、思い入れのせいなのか何なのか、
手に取って買いたい。
本屋にフラーって入って、
「あー、『よつばと』ー!」とかいう喜びがいい。


(笑)本屋で、好きなマンガの新刊が
ふっと目に入ってきた時の喜びはあるよね。

amazonで「よつばと」が、事前予約出来ます、発売日当日に届きます、
って言ったって、やっぱり本屋に買いに行きたくない?
マンガってもっとさ、私の中で神々しいもので、
それをワンクリックとかで済ませてほしくないのよ。

その感覚、わかるわあ。
ビジネス書とか新書だと、まったく問題ないんだけど、
マンガはネットで買う気がおこらないね。

マンガがズラーっと並んでる、大きな本屋に行くのが好きで。
その空間が、すごくワクワクする。

紙ならではの魅力

オレ、青山ブックセンターみたいな、
マンガが立ち読み出来る本屋が近所に欲しいな。
知らない作者のに手を出すと、明らかに失敗ってあるじゃない。

わかるわかる。
大失敗!系ね。
なんかでも、私、マンガで失敗するのって、
それも糧になってると思ってるタイプで。
わー、これひどいもんつかまされた、って思ってるんだけど、
それも楽しい、みたいな。

なるほど、なるほど。
それはやっぱり、好きだからこそ
思えることだと思うよ。

マンガ読んでる時が至福だと思ってるからね。
どんな便利になっても、紙じゃなかったらヤダなーって思っちゃう。
iPadの生き残る道はマンガだ、みたいなこと言ってる人いるじゃない。
でもそれは、マンガを愛してない人の発言だよね。

そうそう!
マンガこそ、紙じゃないと伝わらないものだよな。
活字本とか新聞はiPadでいいか、とも思うけど。
マンガはたしかに、カバーとか、持った感触も含めてマンガなんだよね。

たとえば、表紙のカバーがトレーシングペーパーぽくなってますとか、
「宇宙兄弟」みたいな、これ超カネかかってるよね、っていうラメがいっぱい入ったりとか。

なんでこだわってるのかっていったら、紙だからなんだよね。
あんなんさ、iPadの中にマンガが入りましたっていっても、
こだわりのFlashにしてみました、とかじゃ、全然刺さらないの。
そうじゃねんだよ~、みたいな。

刺さらないね。
そうじゃねんだよな。

私、本買ってさ、最初にやるのって、
カバーの裏を見ることでさ。

なんなのそれ!?
隠しがないかを見てるの?

そう、まずカバーをめくって、
「あー、そういうことね」みたいな。

(笑)そういう楽しみか。
ときどき、すごい隠しに凝ってるのあるよね。
「海月姫」とか「おおきく振りかぶって」みたいに、
おまけマンガがついてたり。


TSUTAYAで本借りたりすると、
カバーが付いてないから、その楽しみがなくって。
やっぱり、私は本とかマンガっていう物全体が好きなんだろうな。

図書館の本ってのも、
なんか、物としてのワクワク感は減ってしまってるね。

味気ないんだよね。
図書館の本だと、汚れないように、
本全体にビニールテープ貼り付けちゃってたりとか。

表紙でいうと、オレ、
森博嗣の「スカイ・クロラ」シリーズはすごく好きで、
全部空の写真なんだけど、それが巻によって違うの。
1巻は青空、2巻は夕暮れ、3巻は雷曇、とか、話しの内容に合った空の写真になってる。


ほーー
面白ーーい。

それが、絵本みたいに、本の表紙に直接印刷されてて、
透明のケースに入ってるわけですよ!

なに、その、
「どや?」みたいな得意な顔は(笑)。
そういう本って、手元に置いておきたいと思わない?

思うね。
すごく思うんだけど、
そういう本でも、断腸の思いで手放す。
手元に置いておきたいと思う本はたくさんあるんだけど、
それを言い出すとキリがなくなっちゃうから。

しみさん(清水)に、「どうしても読みたくなったら、また買えばいい」って言われてから、なるほどって思って、手放せるようになってきたけど、
それでも絶版本はどうしても手放せない。
「雲出ずるところ」と「MASTERキートン」は、

どこに引っ越す時も、たぶん生涯持っていくんだろうなーと思う。

「MASTERキートン」は、ネットカフェとかにもあるだろうけど、
「雲出づるところ」は、絶滅危惧種だからね。
扱ってそうなのって、ヴィレッジヴァンガードぐらいだよ。

マンガを売る時ってさ、
作者の人たちが、どんだけ苦しい思いをしてあのマンガを描いてんだって想像すると、中古で買った時って、作者に対して1円も対価が渡ってないわけじゃん。
そういう輪に私が加担してしまうっていうのが、すごく胸が痛くて。
なるべく考えないようにしてるんだけど、
突き詰めて考えると、それはほんとツラい。

あー、そこを考えちゃうのか。

考えるよ。
これだけの作品を作るってどんだけ大変かって、思うじゃない。
思いを馳せるじゃない。

それはほんと、思い入れの強さを感じるなあ。

言葉なしで伝わるもの

小さい頃から、私、
妹と、ものすっごい一緒にいて。
よく同じ夢見てたの。

まったく同じ夢?

そう。
そういうのって普通のことだと思ってたんだけど、
ちょっと大きくなってから、珍しいことなんだって知って。
そういう経験、ない?

オレは一回もないなー。

小学校一年くらいまでなんだけどね。
夢の中で起こった出来事も、
細かいディテールとかも全部一緒なの。
覚えてるので、面白い夢があって。
イトコのお兄ちゃんに連れられて、私と朝海(妹)が車でアメリカに行くのよ。

太平洋の上を車で?

そこからしておかしいんだけど、
その頃って、アメリカがどういう国かなんてまったく知らないからさ。
で、お兄ちゃんの家についたら、土足で中に入れるってことにビビるわけ。

それは!
それは、スゴいね!
知識として知るより先に、夢でアメリカを経験しちゃってるんだ?

そうそうそう。
土足で入っていいってことに、まず、二人で超びっくりして。
家でおもてなしされて、缶のオレンジジュースが出てくるんだけど、
私たちが小さい頃って、細長い形の缶ジュースしかなかったじゃない?

それ、懐かしいな。
昔って、細長くて、フタが取れる缶だったよね。

で、そこで出てきた缶が、
350ミリリットルの、見たことない大きさので、
しかも、フタが外れないタイプの缶だったのよ。

ぶははははは!

「開けた後、こうやって戻すんだよ」って教えられて、
何これ!アメリカってすげーー!とか二人で言ってるわけよ。

双子とかでは、そういうのあるって聞くけど、
姉妹でもあるんだね。

あと、怪獣みたいなのに追いかけられた夢があって、
コンビニのトイレに逃げ込むんだけど、
そのトイレがすっごく大きくて、
「怪獣でもなんでも来ーい」みたいな気分になったのね。
そんで、大声を出したら、怪獣がギャオーッて入ってきて。
目が覚めた後に、朝海に「おねえちゃん、考えなさすぎ」って怒られた。

それ、夏海が話した言葉が、
朝海ちゃんの夢の中でもちゃんと共有されてるの?

そう、まったく一緒。

(笑)オンラインゲームみたいだね。
どっか、共通のサーバみたいのにアクセスしてるんだろうな。

前から思ってたんだけど、
人が名前つけてないだけで、
電話とかメールとか会話するとかではない、
別の通信手段があると思ってて。
私は、それなんだろうって思ってる。

テレパシーみたいな?

すっごく遠くにいる人と思いが通じてることとかあるでしょう。
電話がほしいなと思ったら電話がかかってくるとかさ。
何も言ってたないのに、横にいる人に言葉が通じてるとか。
私、小さい頃から、そういうことがすっごい多かったから、
あんまり不思議なこととも思ってなかったんだよね。

オレも、そういうこと思うことあるな。
たとえば、この携帯から携帯にメール送る時って、
携帯同士で直接通信してるんじゃなくて、
遠くのサーバを経由してるじゃない?
オレと夏海がこうやって話している時でもさ、
その意識ってのは、直接コミュニケーションをしているんじゃなくて、
どこか別の何かを経由して、そこが共有されてるってイメージがある。
だから、言葉を話さずに伝わっても、不思議はないかもね。

あるよね。
考えてることが伝わってくることが。
表情が豊かだからわかっちゃうとかいうレベルじゃなく。
普段は、一人一人の考えが別々に仕切られてるのが、
たまに一緒になって混線しちゃうことがあるんじゃないかと思う。

それが、子供の時のほうが起こりやすいのかもな。

そう、子供の時って、それを不思議と思わないからさ。
人の考えてることが自分にはわからないはず、っていう固定概念がないから、ヒョイっと隣の壁を抜けていっちゃったりっていうのが起こってたんじゃないかな。
(2010年3月 新橋にて)

清水宣晶からの紹介】
夏海が持つセンスの良さと感受性の豊かさには、いつも驚かされる。
小さい頃から自然に、良いものにたくさん触れてきたことでのみ培われる、ブレの無い圧倒的な審美眼を持っているのだと思う。

面白いものを自分自身で見つけてくる才能に加えて、彼女自身に面白いものを惹きつける強い磁場があって、常にそこを中心に、賑やかで活気のある場が出来上がる、天性の華を持っている。

食べ物からファッションやインテリアにいたるまで、独自の見識があり、夏海が「これいいよ!」と勧めてくれるものは、厳選されたものばかりで、実際にほとんどハズレがない。

好きな物事に対して傾ける熱意と集中力には並外れたものがあって、ひとつひとつのことに真剣に取り組む夏海の目を通じて、僕は本当にたくさんの世界を見させてもらった。まだ見知らぬ新鮮な味わいを翻訳して伝えてくれる、人生全般のソムリエのような存在だ。

対話集


公開インタビュー


参加型ワークショップ