新井有美

昭和49年生まれのフォーティーナイナーズ。
大学卒業後、番組制作会社勤務を経て、2004年に同僚と制作会社を立ち上げる。
現在も、主婦と経営者の2足のわらじ生活中。

大切にしているものは、無理しすぎないこと、未知なるものへの好奇心、直感、早い決断、具体的な目標、それに向かっていく行動力、仕事、仕事を忘れる時間、人と人との繋がり、スタッフ、顧客、友達、家族。

現在に続く一本の道

(清水宣晶:) 有美ちゃんさ、大学生の時に、
横浜のジョイポリスでバイトしてたことあったじゃない?
あれは、どういう理由で選んだの?

(新井有美:) 私ね、学生の時、お芝居をずっとやってて。

おぉ!?
そうだったんだ?

中学で演劇部をやって、
高校生の時も、会場を借りて自主公演みたいなのをやって。
だから、あの当時は、人前で役割を演じるようなバイトをやってみたかったんだね。

ディズニーランドのキャストみたいなもんだね。

そうそう。
千葉に住んでたら、ディズニーランドに応募してたんだろうけど。
大学生の時、ジョイポリスのオープニングスタッフの広告を見て、その案内にすごく惹かれたの。

そうか。
横浜にジョイポリスが出来た当時って、
オレ、よく行った覚えあるなあ。
オープニングのスタッフやるのって、楽しいよね。

自分が担当してたアトラクションの部署は特に、
バイトが色々な企画を出したりっていう裁量権がすごくあって。
新しいイベントをやったり、マニュアルを作ったり、かなり自由にさせてもらってた。

ますます、いい職場だね。

話しを聞く時にはちゃんとメモを取りなさい、
みたいな基本的なことから始まって、
社会人に対するような感じで教育をしてくれて。
その部署には、私を含めて4人、女の子がいたんだけど、
4人のうち3人が今、経営者になってるの。

起業家養成所みたいになってるな。

だから、あの時の経験は、
今考えると、大きかったんだと思う。

その当時ってのは、
芝居とか演劇関係の道に進もうと思ってたの?

もともとは、小さい時から、
脚本家になりたかったんだよね。

脚本を書くことに興味あったんだ!?

小学生の頃から、シナリオに興味があって。
学芸会で台本を書いたりね。

それはすごいなあ。
ある意味、小さい頃から現在までずっと、
一本の道でつながってるんだな。

そうなんだよね。
今、映画の吹き替えの仕事をしているっていうのも、
脚本を書くことに関わりたいっていう動機からだからね。
そこは、ずっとブレてない。

そのさ、小学生で脚本に興味を持つっていうのは、
一体、どういうきっかけなわけ?

たぶん、戯曲みたいなやつを読んでたからじゃないかな。

戯曲なんて、子供の時に読む?

ウチ、両親が大学のシナリオ研究会っていうところで出会ってるから、
まわりに、そういう本がたくさんあったんだと思う。

そういう縁があったのか!
そうなると、生まれる前から、
既に道が決まってたような感じがするね。

まあ、同じ家に育っても、
妹たちは全然そういうのに興味持たなかったわけだから、
必然ていうわけでもないんだろうけど(笑)。

同じ舞台関係でもさ、
役者として演じたいっていう気持ちはなかったの?

中学生まではそれも考えてて、
その時は、宝塚に入りたかったの。
で、しょっちゅう宝塚劇場に通ってて。

それはまた衝撃の事実だな!
最初どういうきっかけで、通うようになったの?

部活で一緒だった子が兵庫の出身で、
その子に連れてってもらって、好きになったんだね。
で、中学三年生の時に、親に「宝塚に入りたい」っていったら、
ものすごい怒られて。

中学三年生か。
んー、、まあ、
普通はやっぱり反対するかな。

宝塚の受験資格って中三から高三までで、
やっぱり早いほうがいい、って思ってたんだけど。
高校に入ったら、いったんその熱はさめて、自分で脚本を書いて芝居をやる、っていう方にまた関心が向いてきて。
大学の時は、シナリオの専門学校とダブルスクールで通って勉強した。

そこでまた、脚本に戻ってくるのか。
なんで、小説じゃなくて、脚本っていう形を選んだんだろうね。

脚本の場合、小説との違いは、
書いたものが視覚化される、っていうところなんだと思う。

そうか、作品が最終的には、
舞台の上で演じられることで完成するってことかな。

そう。
場所があって、音楽があって、観客がいて、
そういうのが組み合わさったものをイメージしているから、
それを観たいんだろうと思う。

有美ちゃん、歌舞伎とか人形浄瑠璃とか色々観に行ってるけど、
舞台のものはだいたい興味あるの?

5年ぐらい前に、
お笑いの舞台にしょっちゅう行ってたことあった。

5年前だと、お笑いブームよりも前だよね?

そう、M1が始まったくらいの頃で。
朝から晩まで、100組ぐらいの漫才をずーっと聴いて、全部メモを取ったりして、「お笑い批評」っていうメルマガを出してたのよ。

ぶははははは!
そんなことやってたんだ!?

当時、そういうメルマガって珍しかったから、読者もすごく多くて。
そのまま続けてて、お笑いブームが来るぐらいまでやってたら、
また別の展開もあったかもしれないんだけどね。

「お笑い評論家」としてデビューしてた可能性もあるな。

舞台のライブ感

舞台の作品って、
生で観るのとビデオで観るのって、どのぐらい違うと思う?

私、ビデオで観るってことがほとんどないんだよね。

やっぱり、そう?

去年、新宿THEATER/TOPSがつぶれることになった時、
三谷幸喜が、東京サンシャインボーイズで上演した舞台があったんだけど。

30年間封印した劇団を、特別に再結成したってやつだよね?

そう、あれは本当に、どうしてもチケットが取れなくて。
その映像が三ヶ月後にWOWWOWで放映されたから、それだけは観た。
そういうのじゃなければ、基本的に、舞台のものを録画で観るのはナンセンスと思って、観てないね。

ナンセンスっていうぐらいに、全然違う?

舞台は、お客さんまでいて完結していると思っているからね。

自分が何かを作るとしても、
やっぱり、舞台という場でやりたいと思うかな?

うん。一期一会というか、
とどめておけない、流れていくものに良さを感じるんだろうと思う。

お笑いが好きっていうのも、
その、ライブ感が好きなの?

そうだろうね。
お笑いは特にそうなんだけど、
同じネタを見ても、その時によってまったく違うからさ。

それはあるだろうな。
今の時代、YouTubeとかDVDで観やすい環境になってるから、
ライブで観に行くことってのは、どんどん貴重な機会になってるよね。

そう、だから、行く人が少なくなると、
新宿のTHEATER/TOPSがつぶれてしまったみたいに、
ライブの文化が消えていってしまいそうな気がするから、
頑張って私が行って支えないと!っていう使命感もあるの。

タニマチ的な義侠心だな。
それ、カッコいいなあ!

やっぱり、マスに受け入れられる世界じゃないっていうことも、どこかでわかっていて。
だから、みんなに広めていくっていうよりは、私自身が通い続けることで、陰ながら支えたいって思ってる。

マスに向けて発信していないからこそ表現出来るものもあるよね。
オレ、今までに観た舞台で一番それを感じたのは、
三谷幸喜の「マトリョーシカ」だったな。

あれを生で観られたのは幸せだね!
私が一番印象に残ってるのは、「十二人の優しい日本人」で。

映画でしか観たことないんだけど、
あの舞台も、いつもPARCO劇場でやるんだよね?

そう、昔私が見たときは、真ん中に「ロの字」形にテーブルが並んだ陪審員席があって。
それを四方から囲む形で客席が設置されてるのよ。

スタンド席から俯瞰して観るようなレイアウトなのか。
すごい面白いね、それ!

だから、座る位置によって全然見え方が違うの。
「今まで舞台って観たことがないけど、どんな感じかな」って興味を持ってる人には、ぜひ体験してほしいって思う。

それは衝撃的だろうなあ。
映画とは違う、舞台ならではの体験だからね。
また、再演されるのかな?

PARCO劇場の目玉企画だから、またいつか、やると思うんだけど。
ただ、2006年にキャストを一新して再演されたときは、
普通のレイアウトだったみたいだから、客席数の関係上、もう難しいかもしれないね。
もし私が、初めて舞台を観るっていう人をエスコートするとしたら、あの舞台に連れて行きたい。
でも、連れて行きたくても、チケットがまったく取れないんだけどね(笑)。

観客の存在が与える影響

去年、「ヘア・スプレー」っていうミュージカルの舞台がアメリカから来て、観に行ったんだけど、
幕間の時間にダンサーの人が出てきて、フィナーレのダンスの振付をお客さんに教えて、みんなで練習するんだよね。

うんうん。

おじさんとかおばあちゃんとか色んな年齢層の人が、
舞台がフィナーレの時に、みんな立って一緒に踊るのよ。

それ、すっごくいいね!

みんな立ってるから、そのまま全員でスタンディングオベーションになって、会場が一体になって盛り上がって。
そういうのが好きなんだろうな、と思う。

それは、まさに、
ライブならではの良さだなあ。

歌舞伎でも、客席から「成駒屋!」とかって掛け声が入るじゃない?
お笑いも、今日はここでドッと笑って、ここで滑ったな、とか。
お客がいることで舞台が変わる、っていう感じがある。

たしかに、お笑いは一番、
そういう変化がわかりやすいよね。

わかりやすいね。
DVDと違って、ライブだと、
同じことをやっても、ウケる時とウケない時があって。
ほんとに、その時の空気によって違うんだよね。

なるほど、なるほど。
ライブの面白さがわかってきたよ。

「M1」は年末に終わっちゃったんだけど、
来月、「R1」っていうのがあって。
それとかは、コンビじゃなくて、ピンの大会だから、
自分もピンで観に行こう、って思っててね。

ぎゃははははは!
そこまで合わせるんだ!?

だって、やってる人たちは、ステージ上で孤独じゃない?
だから、私もその気持を共有するために、
孤独な状態で観たいのよ。

こだわってるなあ、ほんと。

自分の存在がそこに与えている影響、
っていうのを過剰に意識するようになると、
自分が行く意味っていうのが出てくるのよ。

そこまで考えたことなかったな。
オレ、講演会みたいな形で人の話しを聞く時も、
大勢の中の一人、として聞いてると、
あんまりその話しに身が入らないんだよ。

私は、大勢のなかのたった一人でも、
その人が欠けたら同じ空気にならないって思ってるんだよね。
そこが、一期一会だな、って思って。

そうか!
そう思ってるんだ?

同じ時間を共有するために集まってる人たちだから、
どこが欠けても、違ってきちゃうんだと思う。
講演会っていうのも、お笑いと同じくらい、聴き手の反応によって話しの内容も変わってくるんだろうし。

ただその場にいるっていうだけでもね。

そう、そのぐらい、観客の存在っていうのは、
ライブの舞台には影響があると思う。
(2010年1月 新橋にて)


【ヒトゴトへの一言(新井有美)】
人に話をすると、自分が漠然と考えていたことが整理されてクリアになることはよくありますが、今回はその域を超えて、それぞれ分断されていた思考がひとつに繋がった感じがしました。清水くんという一流の聞き手が、点と点を線で繋いでくれたイメージで、「私ってこういう思考回路でこういう行動していたんだなぁ」と新たな発見があり面白かったです。

清水宣晶からの紹介】
有美ちゃんは、自分が楽しむことにかけても、人を楽しませることにかけても、超一流の腕を持っている。スキーに興味があるという人がいれば、一番いいシーズンのベストコンディションのゲレンデに連れて行くし、ミュージカルに興味があるという人がいれば、今観ることが出来る舞台の中で、一番いい演目の、一番いい席に連れていって、最高のエスコートで紹介をしてくれる。

有美ちゃんが書くメールやブログを読んでいても、読み手を楽しませようというサービス精神にあふれていて、とてもいい文章を書く。
エンターテイメントにかけて、全般的に幅広い知識と興味を持っているし、僕と共通の趣味も多いので、話しをしていて、いつまでも話題が尽きるということがない。
一緒に何かをしたり遊んだりする時に、これほど頼りになって、その場を最大限に面白く過ごすことが出来る相手というのは、ものすごく有り難い存在だ。

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