中村真広

株式会社ツクルバ 代表取締役・CCO
南池袋【A.P.T. lounge】共同オーナー

1984年11月生まれ。
東京工業大学大学院 建築学専攻修了。
建築設計の前段階から関わるべく、(株)コスモスイニシアに新卒入社。その後、ミュージアムデザイン事務所(株)ア・プリオリにて、ミュージアムの常設展示の企画など、空間を埋めるコンテンツづくりを経験し、2011年6月に独立。フリーランスで活動後、2011年8月に(株)ツクルバを設立。
同12月、クリエイターのためのCoworking Space【co-ba shibuya】をオープン。
あたらしい「場」の発明を通じた、ソーシャル・キャピタルのデザインを目指して活動している。

コワーキングスペースという場

(清水宣晶:) 今日は、話す機会を持てて嬉しいです。
「co-ba」のことは、前から興味を持っていて、
話しを聞きに行きたいと思ってたんです。

(中村真広:) 僕も、「伝助」は、
飲み会の時とかに使ってて、知ってました。
(※伝助→スケジュール調整サービス)
伝助は、どうして作ろうと思ったんですか?

最初は、僕自身が、
ああいうwebサービスがあったら便利だろうと思って、
身内で使うために作ったものだったんです。
それを他でも使いたいっていう人がいたので、
公開することにしました。


co-baもそんな感じなんですよ。
僕もフリーランスで仕事をしてる期間があって、
プリンターとか、自分で買うよりも、
シェアをしたいと思ったんですけど、
なかなかいいと思えるシェアオフィスってなくて。
もっと手軽なのがあればいいと思ってたんですよね。
それなら、自分たちでそういう場所を作ろうと思って。

中村さん、前の会社を辞めた時は、
次にやることは決めてたんですか?

どっちかっていうと、見切り発車で辞めてしまって。
まだ、前の会社で働いている時に、
僕と、今の相方の村上と、あと二人ぐらいとで、
去年(2011年)の2月に、池袋でカフェを立ち上げたんです。
それをやってるうちに、すごい楽しくなってしまって。
本職との主従が逆になってきちゃったんですね。

ああ、それは、
なんか悶々としますよね。

で、これからどうしようかなって思ってる時に、
あの、3.11の地震が起こって。
そしたら、その翌々日に肺に穴が空いて、緊急入院をして。
それで、管をつながれながら、
余震にさいなまれる間、いろいろ考えるじゃないですか。
悶々と考えてる場合じゃないなと思って、
カフェをやるかどうかはわからなかったし、
あてがあったわけじゃないんですけど、
会社には辞めます、って言って。

じゃあ、肺に穴が開かなかったら、
どうなってたかわからないですね。

わからないですね。
co-baも、やってなかったかもしれない。

基本的な質問になっちゃうんですけど、
コワーキングスペースっていうのは、
シェアオフィスとは、違うものなんですか?

似たものではあるんですけど、
「コワーキングスペース」っていう旗を設けておくことで、
集まる人が、ちょっと違ってくるんですよ。

なるほど。

たとえばこのカフェでも、
コワーキングっていうことは出来ると思うんですけど、
隣りの席の話題が気になっても、
話しかけると、ちょっとナンパみたいじゃないですか。

ああ!
それ、すごいわかりますよ。

シェアオフィスだと、まだ、
そういう雰囲気があると思うんですよ。
みんなそれぞれ独立して入っているから、
隣りで面白そうな話題を話してても、
絡んでいいのかな、これ?みたいな。

そうか。
でも、コワーキングスペースは、
むしろ絡んでいくもの、っていう。

そう、その前提をみんなが共有しているんですよ。
好きに音を出してもいい空間なので、
そこらへんでブレストしてもいいし、
スカイプミーティングしてもいいし、
で、そこに話しかけても違和感がないんですよね。
海外のゲストハウスに近い雰囲気なんです。

ゲストハウスとかユースホステルって、
ロビーとか食堂に集まってる人同士、初対面でも、
気軽に話しかけられる空気がありますよね。

コワーキングスペースの場合は、
そういう空気感に近いのかな、と思って。

いいなあ。
僕は、よくカフェで仕事してるんですけど、
隣りの席から面白そうな話が聞こえてきたら、
会話に入りたくなること、よくありますよ。
いきなり話しに参加したら、変な人と思われるだろうから、
なかなか出来ないけれど。

スペースの入居者の人には、
入る前に全員、面談をするんですけど、
場所をシェアするだけじゃなくて、
考え方とかアイデアとか人脈もシェアして
イノベーションを起こしたい、っていう理念に
賛同する人が入ってるので、
誰でも気軽に話しかけてOKな集まりなんです。


「コワーキングスペース」っていう概念は、
もともと、以前からあったものなんですか?

ありますね。
最初は僕らも全然知らなくて、調べてたら、
サンフランシスコでの事例があったんです。
これだ!と。
もともとは、ある人の家で始まったみたいで、
ギークな人たちが集まって、
夜な夜な好きなプログラムを作ってるところに
どんどん人が増えて、みたいな感じで。
人の家だと気まずいから、どっかでやろう、
ってなったのが始まりみたいですね。

アメリカだったら、
自宅で集まってパーティーも多いから、
そういう文化が、普通にありそうですよね。

アメリカの場合はパーティーで、
まあ、日本でいうと、
高校生がテスト前に勉強しに集まってるような。

そんな感じですよね。
co-baにいる人同士は、
顔見知りが多いんですか?

だいたい、顔見知りです。
今日の夜にもあるんですけど、
メンバー懇親会っていうのが時々あって、
それで、新しく入ってきた人は紹介を
したりもするので。

あ、そういう場もあるんですね。

そんなに、アメリカのようにフランクな感じで、
いきなり話が出来るとは思ってなくて。
普段仕事をしてる時って、
隣の人の会話が気になっても、
突然話しかけるって出来ないじゃないですか。

そうですね。
話かけるのOKという前提はあっても、
知らない人相手には、結構むずかしいと思います。

ましてや、自分が入りたての頃って特にそうで。
そういう時に、懇親会みたいな場があれば、
「そういえば○○さん、
この前の会話、気になってたんですけど」
みたいに話しかけることが出来るかな、と思って。

なるほど。
そこは、日本人的な気質も考慮して。

コワーキングスペース×日本的飲みニケーション、
みたいな感じです。

ノイズを生み出す

僕は、清水さんが言う、カフェの空間のような、
人の会話がある環境っていうのが面白いと思っていて。
それは、津田大介さんが「情報の呼吸法」で、
twitterについて書いてたことと似てると思います。


ノイズの話ですね。

そう、「ノイズ」っていうのは、
僕の中ですごく響いた言葉でしたね。
同じ興味や関心を持っている人をフォローしてるはずが、
そこから発せられる、ちょっとノイジーなものが、
実は自分の世界を広げてくれるから面白いわけで。
僕はそれは、コワーキングスペースにも
通じるものがあると思うんです。
だから最近、
コワーキングスペースのことを人に説明するときは、
「twitter的な空間です」って言っちゃってます。

ぶははははは!
でも、たしかにそうですね。
twitterのタイムラインがそのまま、
現実空間に存在してるっていう感じですよ。

まさに。
入居者の人は、やっぱり、
ソーシャルメディアを活用してる人が多いので、
「今渋谷だけど、打ち合わせする?」なんてつぶやいた直後に、
その相手がco-baに来たりして。
タイムラインの盛り上がりと、
現実の盛り上がりがシンクロしてる感じなんですよね。

いいなあ。
すごく面白い。

最近、Pinterestとか、
ノイズを排除する方向のサービスが増えてるじゃないですか。

自分の好きなものだけを純粋に集めた、
箱庭を作り上げる、っていう指向ですね。

でも、僕は、そうじゃなくて、
もっと泥くさい、ノイズが生まれてきてしまう世界を
楽しみたいなと思って。
なので、週末にはイベントをやったりしてるんですけど、
イベントって最大級のノイズだと思ってるんです。

おお!?
それ、ちょっと詳しく聞いていいですか。

co-baのスペースって、縦に細長い四角形なんですけど、
その、3分の1の場所でイベントをやってる時、
残り3分の2では、普段通りに仕事をやってたりするんですね。


そうなんですか。

プレゼン大会とか、ワークショップとかをやって、
ワーッと拍手が起こったりしてる中で、
もう一方では、黙々と作業をしてる人がいたりするんです。

参加してもしなくてもいいっていう、
ゆるいイベントが、その場でおこなわれてるんですね。

そう、どっちでもいいっていう。
強制参加っていうのも、この歳になってなんで?
って気もするし、
一人一人に選択権があるっていうか、
そういうのを目指してますね。

超いいですよ!

いいノイズを生み出すためのイベントとか、
皆さんの興味や関心に引っかかりそうなものを用意はするんですけど、
積極的に参加する、までいかなくても、
「ああ、なるほどね」みたいなことを思ってくれればいい、って。

それ、すごく好きな距離感です。
僕は、自分が今、大学生だったら、
後ろの隅っこの席で、
なんか作業しながら授業を聴いてる学生になってると思うんです。
でもそれって、授業に興味がないんじゃなくて、
自分が、一番感度を上げてレシーブ出来る体勢なんですよ。

僕も、小学校から高校ぐらいまで、
後ろの隅のほうにいました。
それがいいんですよね。
話を聴きながら考え事してる、みたいのが。

講演会なんかでも、運営の人は親切心で、
「どうぞ一番前に座ってください」って言ってくれるんですけど、
人によって、丁度いい距離って違うと思うんです。

サンフランシスコのコワーキングスペースを見ても、
やっぱり、積極的なんですよね、向こうの人は。
どでかいキッチンがあって、夜になると、
「ピザ頼む?頼む?」とかみんなに聞いて、
ビール飲みながら、ワーッてブレストして。
でも、同じことは、
日本ではあんまり起こり得ないだろうなって。


うんうん。

それは、逆にノイズでカバーするというか、
参加してるんだかなんだかわからない距離感で聴いてると、
なんか楽しい、ってのは日本人的だと思うんですよ。
僕はそれ、すごい好きですね。

ガッと距離が縮まる感じではないですけど、
毎日顔をあわせてるうちに、
自然に少しずつ近くなっていきますよね。

co-baをスタートしてから3ヶ月ぐらい経つんですけど、
そこで実際に知り合って、映画の趣味が似てる人同士、
一緒にwebサービスを作っている、っていうのもあるんですよ。

それは、楽しいなあ。

僕と、もう一人の管理人の村上は、
入居者全員と面談をしてるので、
自分たちがカタリスト(触媒)として、
お互いがスムーズにつながるように、
何かあった時には、相談に乗ったり、
他の入居者の人を紹介したりってこともやってます。

そういう管理人がスペースの中にいるっていうのも、
なんか安心ですね。

最近、co-baもアルバイトスタッフを雇い始めて。
仕事としては、入居者の皆さんのお世話をする役目なんですよね。
でも、入居者の皆さんのほうがco-ba歴が長いので、
逆にスタッフのほうがお世話になってるんですよ。
それを見て、面白いなと思って。
co-baのスタッフとして雇ってるのに、別の人が育ててくれるんですよ。
人の家の子供を叱ってるような感じです。

昔の長屋みたいな、共同体ですよね。
みんなで子供を育ててる、みたいな。

そうなんですよね。
co-baのイベントをやる時なんかも、
一緒に買い出しを手伝ってくれたりして、
ほんと、長屋的なところはあります。

ライブラリーの機能

3月19日に正式に発表するんですけど、
次に僕らが考えてるのは、
co-baライブラリーっていうのを作ることで。


本を置くんですか?

将来的に、スタッフが変わっていく時、
人から人に引き継いでいくと、その過程で、
入居者のことがわからなくなるっていう欠落が出るので、
情報を属人的にしたくはなかったんです。
で、なにか他の媒体になるものがないかって考えた時、
本だったんですよ。

それ、面白いですね!

人の家に行って、本棚を見るのって、
めちゃくちゃ面白いじゃないですか。
「あ、意外とこういうのも読むのね」とかって。

ありますあります。

そういうのが、本棚にはあらわれる気がしたので、
各個人の属性を示す、本の集合体を作りたくて。
ジャンル別でも作家別でもなくて、
提供者別に本を並べるんです。

なるほど。

その本棚を見た人が、
「自分の趣味に近い本はないかな」って探した時、
「あ、ここらへんの本、近いな」って思ったら、
そこに、twitterアカウントが書いてある、っていう。
そうすると、僕が今、管理人としてやっている、
入居者の紹介みたいなことを、本を通じて出来ると思うんです。

本棚ってのは、自己表現になりますよね。
自分の趣味嗜好をあらわすだけじゃなくて、
こうありたいと思っているんだ、
っていう思想も示したり。

そこにも、たぶんノイズが生まれるんですよ。
ブクログで自分と趣味が合う人の本棚をフォローして見るのと違って、
まったく今まで読まなかったような本が、
その本棚にはあったり。

自分の意思と関係ないセレクトだから、
そういう本もあるでしょうね。

co-baの入居者の本棚なので、
たとえば、3年後、5年後には、
置いてある本のラインナップがまったく変わってると思うんですよ。
図書館て、アーカイブの機能が中心だったのが、
ストックの場からフローの場に変わると思うんです。
その転換をしたくて。

面白いなあ。
新しい図書館の姿ですね。
図書館て、ほうっておくと量を増やす一方になるから、
そのサイクルの中に、取捨選択をするプロセスがないと、
質的にはどんどん劣化していきますよね。

アーカイブの機能だったら、
もう、iPadでも充分なんです。
だから、それよりも、
本を選別するキュレーションの機能のほうが、
図書館には必要になると思います。
でも、たとえばブックセレクターみたいな権威の人がいて、
その人が選んだ本や価値観を享受する、みたいなのは、
ちょっとイヤなんですよ。
それよりも、みんなが選んだものを集めたい。

シェアの文化ですね。
一人の人が選ぶんじゃなくて、
何十人ものセレクトの集合っていうのは、
そこにノイズとか、予想できない偶発性が入ってきますよね。

そう、予想できないんです。
それがしかも、入退会を繰り返す中で、
流動的に変動していくっていう。
固定化されない本棚っていう、生き物であるかのように。

ライブラリーっていうと普通、
過去の入居者の記憶をストックするためのものになるところが、
リアルタイムな現在の姿を表すものになるんですね。
co-baと、
新しく作るライブラリーっていうのは、
役割の棲み分けをするんですか?

今、co-baをやってみて思うのは、
会員制のスペースに寄りすぎてるなっていう反省があって。
事前にメールとか予約しないと対応出来ないので、
一見さんが入りにくいんですよね。
もうちょっとパブリックに寄ったスペースを作りたいので、
ビジターの機能は、ライブラリーに移行したいって思ってます。

ノイズっていう意味では、ビジターの人が常に、
ある程度流動的に入ったほうがよさそうですね。
その時そのタイミングで、渋谷にいた人が立ち寄るっていう、
誰がいるか予想がつかないランダムさがある場っていうのは、
面白いのかなと思います。

それはほんと同感で。
僕らは、固定会員とビジターを、
「村人と旅人」って言ってるんですけど。

おお!
それは、ぴったりな表現ですね。

その比率をどこに設定するかで、
コミュニティーの質って変わってくると思うんですよ。
旅人が多すぎると、コワーキング出来ないと思うんです。
コミュニティーとして結晶していかないから。

単なるカフェに近いものになっちゃいますよね。

でも、村人が多すぎると、コミュニティーが固定化して、
勢いが落ちていっちゃうと思うので。
今、村人:旅人の比率は8:2ぐらいなんですけど、
co-baライブラリーが出来た時には、
旅人の比率を増やしていきたいですね。
(2012年3月 渋谷「PUBLIC HOUSE」にて)


清水宣晶からの紹介】
中村さんと話していて感じたのは、今という時代の潮流をとても正確に理解していて、それに自然と沿うように日々を過ごしているということだった。ソーシャルメディアの風通しの良さを、呼吸をするように取り入れながら、アナログなつながりの面白さも欠かすことなく活用するバランス感覚がある。

ちょうど、話しを聞いた日の一年前の3月13日に、肺に穴があいて入院したことが、自分自身で仕事を始めるきっかけになったと言っていたけれど、そういう身体のメッセージを感じ得るのも、とても敏感なセンサーを持っているからなのだろう。

co-baを立ち上げるプロセスや運営の仕方は、オープンであるために、そこに関わる人々のモチベーションやアイデアのとてもいい循環が起こっていて、その話しを聞いていて、僕自身が学ぶところがとても多かった。
次に何が起こるかわからない予測不可能性を、不確実なものとして忌避するのではなく、歓迎するべきノイズとして楽しむことができる柔軟な精神の持ち主であるからこそ、中村さんは、居心地のいい場を作りだすことが出来ているのだと思う。

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