シミズヨシユキ

複数のプロジェクトをまたいで活動中。「人と人を結ぶ仕事」をキーワードとして、現在に至る。
トラブル発生時や、困りゴトがあると駆けつける、解決屋さん。

有限会社ズィープロダクション 代表
http://www.z-pro.jp

人を幸せにする物

(清水宣晶:) ぜっつん(シミズヨシユキ)はやっぱり、
物を作るっていうことに興味があって、今の仕事を始めたの?

(シミズヨシユキ:) そうだね。
最初のスタートは、実際に手で触れられるものが好きってことで、それを作るところから始まったんだけど、webの仕事をやるうちに、
だんだんとその、実際に物を作るってところは遠のいてしまっている。

今はあんまり、現場で物を作るってことはないんだ?

ずっと現場から離れているうちに、自分自身の技術は落ちてしまっているから。
それよりは、作る技術がある人をサポートするっていう方に、役割が変わってきてるね。

もともと、webじゃなくて、
形があるものとか、触れるものに興味があった?

始めはデザイナー志望じゃなくて。
きっかけは車だったんだよ。
車の開発をやりたい、って思って。

車の開発ってのは、デザインとはまた違うんだ?

見える部分じゃなくて、エンジンとか、内側のほう。
なんだけど、理数系の大学ってハードルが高くてさ。
でも、なんとか車の開発に関わりたいって思って、進んだのがデザインの道だった。

なんで車に興味を惹かれたんだろう?

物が人を幸せにする、ってことにつながってると思ったんだね。
車って、中に人を乗せるものだし、
街の中にあって、周りっからも見えるものだし。

たしかに、人と関わる時間が長い物だよね。

車って、下から見ると、意外にみんな一緒なんだよ。

下って・・「真下」からってこと?

そうそう。
ミニカーひっくり返すとわかるんだけどさ。
どれも、四角くて、タイヤが4つあって。

(笑)そりゃそうだろ!

そこに、車の限界を感じたんだよね。
なんか、「あれー?」って。
で、車にあんまり思い入れがなくなって。

ぶはははははは!
そこで見切りをつけたんだ!?

今でも、趣味としては好きなんだけどね。
その先に未来が、、ってところが、なんか打ち消されちゃって。

舞台裏を見ちゃったみたいな
空しさを感じたのかもね。

作品が残るという責任

で、車じゃなくて、なんかもっと身近なものってことで。
たまたま、その時、大学で手にしてたのが、
ハンドメイドのクラフトだったんけど。

素材はどんなやつ?

木材とか金属とか。
漆の工芸もあった。
とにかく、自分で作った物に触れられるってことが嬉しくて。

それはわかるな。
具体的な物があって、誰かに直接渡したり出来るものって楽しいよね。

うん。それと同時に思ったのは、
僕が、このコップを作ったとして。
作った後に交通事故で死んでしまったとするじゃない?
だけど、この「作品」は残っているじゃない。
その責任。

おお!
うんうん。

それは今でもそうなんだけど、
自分がこの世から亡くなったとしても、責任を持てるかって考えた時に、
それからものづくりについて真剣に悩むようになって。
生み出したものがしっかり成り立ってないといけないと。

なるほどなあ。

そこまでの物を作れないのであれば作っちゃいけない、とも思っていて。
今、自分が制作の場から離れているっていうのは、そういう理由もある。

ん?
というと?

今は、自分自身が作って、責任が持てるだけのものを作れる自信がないっていう。
中途半端なものを残せないっていう意識がどうしても働いちゃうから。

ものづくりのほうに行っちゃうと、
とことん突っ走っちゃうってことか。

うん、やるなら山ごもりになっちゃうよね。
だから、たとえば陶器を作るなら、
最高の陶芸家を呼んで、作ってもらいたいって思うようになった。

みずから作る代わりに、
その人に、自分のイメージを伝えて、ってことだね。

そうそう。
「こういうシチュエーションで、こういう人が使うんだけど」ってことを説明して、
で、さらにそこにその人自身のノウハウとか、蓄積してきたものが入ってきてさ。
僕の想像以上のものが出来上がる可能性がある。

わかるわかる。
自分だけで完結してしまうと、自分の幅を超えたところには絶対にいかないからね。

そのほうが、世の中にとっていい物である可能性も高くなるじゃない。
で、そういう投げかけをしていく人は必要だろうと思うから、
今は、自分は、そういう役割になったんだろうなと思ってる。

作る人と使う人の橋渡しをする、
仲介役みたいな感じだね。

そう。
そのためには、自分がいいと思ったものを、
他の人に伝わる形で説明するっていうことが大切だと思っていて。

うんうん。

たとえば、このコップのことを説明するのに、
今までだったら、ヴィトンのブランドです、とかって言えばみんな買ってたかもしれないけど、それって本来の良さを全然伝えきれていないじゃない?
そこをどう伝えていくかっていう、情報の伝え方は考えるべきと思うんだよね。

オレはね、物語があるものって伝わりやすいと思ってる。
ある製品を作るまでにどういうプロセスがあって、どういう想いが込められてるのかっていうところが相手の心に響くと、本当に好きになるんじゃないかな。

それで思い出した話しなんだけど、ニューヨークのエリート金融マンの間で、倉庫を家に改装して住むのがステータスだったんだって。
それがいつ出来た倉庫で、どういう品物を扱って、アメリカに対してこれだけ莫大な利益を生み出した倉庫なんだ、っていうことを、家に招待した人たちに説明する、っていう。

そういうストーリーまで込みで、不動産屋が倉庫を売ってるんだな。

アメリカ人ってそういうところに燃えるのかもね。

シリコンバレーで起業するような人も、ただ儲けるってだけじゃなくて、
いかにカッコよく会社を作るかっていう物語にこだわってる人が多い気がするな。

今と昔とこれから

「転職してスキルがアップする」って
よく聞くけどさ、どう思う?

それは、メディアとか、就職業界が作った幻想じゃないかって思うな。
普通に考えたら、単に転職しただけだったらスキルは下がるよね。

スキルを積むために会社を辞めます、っていう人が最近多くて。
矛盾してると思うんだけどね。
あと、自分がやりたいことが会社と違うので、申し訳ないから辞めます、っていう。

なんとなく思うのは、
悩みがあった時、少しずつ解決するんじゃなくて、リセットするように一気にやり直したくなっちゃうんじゃないかな。

辞めないで、その場でがんばるほうがリスクは少ないんじゃないかって思うけどね。
俺たちの時と今とでは、感覚が違うのかな。
でもそれは、いつの時代も言われてきたことかもしれないけどね。

ああ、「最近の若いモンは・・」ってやつね。

そうそう!
「最近の若者は・・」って嘆いた日記が、
大昔の粘土板にも刻まれてるっていうじゃない。

(笑)そういうよね。
人類に普遍的なボヤきなんだな。
少年ジャンプとかもさ、
「オレたちが子供の時はあんなに面白かったのに、今はこんなにレベルが下がっちゃって・・」とか思うけど、実はきっと、昔と大して変わってないんだよね。
自分の視点が大人になっちゃったっていうだけで。

そうなんだろうね。
あと、今ってさ、ホントに景気悪いのかな?

オレはね、
言うほど悪くないんじゃないかって思う。

言うほど悪くないよね?

不景気だってみんなが言ってるっていうそのことのせいで、
悪くなってるところあると思うよ。

そう、悪循環だよね。
そういう雰囲気だとみんな、
新しいことに挑戦するのは止めとこう、ってことになるし。

身をもって、「そんなに悪くないんだ」ってことを
実証する人が増えれば、その循環も止まるんじゃないかな。

意外と未来は明るいんじゃないかって思うよね。
俺はそんな気がしてる。
(2009年1月 日本橋にて)


清水宣晶からの紹介】
ぜっつんと話していると、話しがどんどんと広がっていって、もともとの話しが何だったかわからないぐらい遠く離れたところにたどり着くことがよくある。
でも、会話の面白さというのはそういうところにあって、僕自身まったく想像もしていなかったようなところに運ばれていく、彼との話しの中では予想外の創発が生まれることも多い。

今回も、話しをしながら、そのほとんどの部分はとりとめのないおしゃべりという感じで、コーヒー一杯を注文しただけで、そのままずっと喫茶店に居座り続けてしまいそうな心地良さがあった。
しかし、その中でも、やはり物作りということに対してのぜっつんの思い入れは際立ったものがあって、そのテーマについてだけは、常に変わらず一貫したポリシーを持ち続けているということがわかる。
この、柔らかさと硬さのバランスはぜっつんの大きな特徴で、その絶妙さゆえに、彼にしか解決出来ない問題や仕事というのがこの世のあちこちに生まれる。そこらじゅうに落ちている面白い部分にいつも目をつけている彼にとってはたしかに、不景気というのは最も縁のない出来事に違いない。

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