KERA


宮城県石巻市赤十字病院にて出生。
千葉県市川市育ち。現在は品川区在住。
0歳6ヶ月から心臓病にかかり、入退院を繰り返す幼少期を送る。中学より自分が五体満足である事に感謝し、本格的に身体を動かし始める。
2002年にPoppin'というダンスのジャンルを知る事になり、ニューヨーク出身の黒人ダンサーに半年間マンツーマンで学ぶ。
その後、ダンスイベントを中心にソロ、チームで活動。
2007年よりダンスを手段として、人の根底にある感情を表現し、見る側と対話したいという想いから、ダンスパフォーマーとして新たな活動を始める。現在は、年間に300回以上のパフォーマンスを行なっている。
お客様との双方向(インタラクティブ)が成り立つエンターテイメントは大道芸にしか見られない。

無声の中に白い仮面、モノトーンの衣装。
卓越したダンステクニックと、見る人の心を一瞬にして動かすイリュージョンな世界、独創的なスタイルを持っている。
2007年より現在まで、東京ディズニーリゾート「IKSPIARI」パフォーマー。

公式ホームページ
http://www.kerapop.com/

心の時代のパフォーマンス

(KERA:) (パフォーマンスの後片付けが終わって)
どうも、お待たせしました。

(清水宣晶:) おつかれさまでした。
今日のKERAさんのパフォーマンスを見てて、
やっぱり、ストリートって面白いなって思いました。
予期できない出来事がたくさん起こるんですね。


いろんなアクシデントが起こります。
でも、お客さんが「観たい」っていう気持ちを持ってる時って、
心の門が開いてますから。
じゃあ、こっちもそれに応えて、何があっても、
いいものを見せよう、っていう気持ちになります。

見ててすごく面白かったのは、
最初、誰もいなかったところから、
KERAさんが何かをやるたびに、どんどん観客が増えて、
「これから何が始まるんだろう」って、
ワクワク感が、その場に生まれてるんですよ。


お客さんとの波長が合ってくるんですね。
その反応に合わせて、ショーの内容も変えていきますし。

ストリートでパフォーマンスをやるっていうのは、
やっぱり、楽しいですか?

最高に楽しいですね。
たった30分っていう時間で、
まったく知らない人たちとつながるっていうのは、
他にないと思います。

そう、ついさっきまでまったく知らない人だったのが、
感動して、最後には「ありがとう」って言われるまでになるって、
スゴいことだと思いました。

パフォーマンスの時間としてはすごく短いんですけど、
一つ一つの、数秒の動作に、何年もかかってるんです。

そうでしょうね。
パッと見には簡単に踊ってるように見えても、
たくさんの積み重ねが凝縮されてるんだろうと思います。

難しい動きでも、大変そうに見せるんじゃなくて、
なるべく、サラッとやっているように見せたいっていうのは、
自分の目指してるところです。

パフォーマンス中のMCを聞いていて思ったんですけど、
KERAさんは、ダンスを通じて、美学とか、
想いを伝えようとしている感じがしますね。

今のパフォーマンスは、
心の時代になってると思うんです。
いいパフォーマンスをやって対価をいただくっていうだけじゃなくて、
僕らパフォーマーも、社会の一部として、
どう関わっていくべきか、っていうことは考えます。

はい。


あと、人間にしか出来ない要素があるっていうのも、
大事なことと思います。
ゲームとかテレビじゃない現実に触れることもそうだし、
パフォーマンス中に起こるハプニングもそうですし。

さっきのパフォーマンス中に、
見回りの警備員さんが中に入ってきちゃったっていう
ハプニングも、見てて緊張しましたけど、面白かったです。

あれは、なかなか見られない場面なので、
今日見れたのは、ラッキーだったと思います(笑)。

ここで終わりになっちゃうかも、ってなった時、
お客さんが、「えーー?」って空気になって。
で、パフォーマンスが再開出来る、ってなった時、
みんなが「良かった!」っていう気持ちで、
一体感が生まれたのが伝わってきましたよね。

あれも、一瞬の勝負なんですよね。
間が空いちゃうとダメなんです。
スッと、すぐに前に出ていって、「やるかい?」と。
その反応を見て、「よし、やる」と。
で、曲も戻すんじゃなくて、さっきの続きから。

ああ!
そうでした。

あれを、戻して同じことやると、
また同じことやるのか、って、
テンションが下がっちゃうんです。

面白いなあ。
ほんと、そうだと思います。

ちょうど、最高潮になってるのがわかってたので。
一瞬のつかみっていうのは、ありますね。

それは、でも、KERAさんの経験値があるからですね。
ストリートに出たばっかりっていう人だったら、
中断しちゃった後、とても立て直せないと思います。

回数を重ねてたからっていうのはありますね。
ずっと、路上でばっかりやってきたから。


落とした手袋を、観ていた子供に拾ってもらったり、
お客さんと絡む場面がありましたけど、
あれも、相手によって反応が全然違うのが面白いですよね。
喜んで行く子供もいれば、コワがって逃げちゃう子もいたり。

そう、いろんな反応があるんですけど、
それに合わせたパターンも、色々用意してあります。

どうしようもなく、相手がノッてこない時ってのは
ないんですか?

あります。
でも、その時は、その時の流れがあります。
手袋を誰も拾ってくれなかったら、
自分で、ポケットから新しい手袋を出したり。

なるほど!
ちゃんと、その流れも用意してあるんですね。

非日常に連れていく

KERAさんは、マスクをしてパフォーマンスをやりますけど、
見ていて、僕は、マスクをかぶってる時のほうが、
人間っぽさから離れることで、感情移入しやすいって思ったんです。

それは、すごく鋭い見方をされてますね。
マスクは、キャンパスみたいなもので、
それを見て、素顔を知りたいって気持ちになる人もいたり、
感じ方は人それぞれで。
表情がないからこそ、能でいう、
「照り」と「曇り」みたいな感じを出せるんです。

ああ!
そうだ、能の面と一緒ですね。


あとは、おっしゃるように、
感情移入を促したり、場面転換をしたり、
っていう使い方もありますね。

KERAさんは、どうして最初、
パフォーマンスの時に仮面をかぶろうって思ったんですか?

自分じゃない人間になりたい、
っていうのがあって。

おお!?

僕は結構、中に入り込むっていうのが苦手だったので、
入り込む要素を作るために、仮面をつけはじめたんです。

なるほど。
役者でも、舞台に出る前にメイクをすることで、
気持ちのスイッチが切り替わるってありますよね。

僕も、メイクを勉強したことがあるんですけど、
やっぱり、ストリートでメイクは難しいものがあって。
汗をかくからとれやすいし、
汗に強いメイクをすると、今度落とせなくなっちゃうし。

そうですよね。

だから仮面ていうのは、僕にとっては、
ものすごくいい素材の一つなんです。

あの仮面を見ていると、自分が、
普段と違う空間に入っているような気持ちになりますね。

みんなを、非現実みたいな、
違う世界に連れて行きたいっていうのはあります。
旅行をさせてあげるような役目が出来ればいいなと思って。


ダンスが踊れるっていうのは、うらやましいと思いました。
あんなに一瞬で、通りすがりの人を引き付けるものって、
他にないと思うんですよ。
スピーチは、まとまった時間聞いてもらわないと伝わらないし、
音楽でも、人が立ち止まるまでには時間がかかると思うし。

そうですね。
あと、遊び心が命というところがあって。
みんな遊びを求めてると思うので、
遊び心をふんだんに出そう、と。

遊び心を。

僕は、さっきの場所で、火曜サスペンス劇場の音楽を流して、
倒れてるだけで、人が集まるんじゃないかと思うんです。

ぶははははは!
それは面白い。

それだけで絶対、異空間になると思うんです。
ちょっと、続きを観たいじゃないですか。

ヒモを人の形に置いといたら、
「ん!?」って、立ち止まりますよ。

そこから物語が始まっていったりしたら、
楽しいですよね。

通りすがりの人との出会い

パフォーマンスの前の、だんだん人が集まる様子って、
なんか、社会実験的で面白いと思いました。
2回目のパフォーマンスの時は、
KERAさんがただ、じっと動かないで固まってるだけで、
「なんだ?」って思った人が足を止めてましたね。


みんなそれぞれが、違う考えを持って、
いろいろ、想像しながら見てるんでしょうね。

KERAさんの身体の動きっていうのは、
見てて、ものすごく不思議なんですけど、
人の身体っていうのは、あんなに自由にコントロール
出来るもんなんですか?

コントロール出来ますね。
僕は最初に、ニューヨークから来た黒人の先生に、
身体の使い方を教えてもらったんですけど。
それで知ったのは、筋肉がある場所は、
どこでも動かすことが出来るっていうことで。

ええ!?
それは、訓練で出来るようになるんですか?

訓練・・というより、
なんか、「こうなりたい」って思うものがあれば、
たぶん、やれてしまうと思うんですよ。


(笑)まず、
「こうなりたい」って強く思うんですね。

あとは、いいものを見るっていうことです。
いいものを見て、こういうのがあるんだなって理解して、
それをやってみる、っていうことの積み重ねですね。

身体を動かす時に、頭の中のイメージの比重ってのは、
やっぱり、結構大きいんですか?

イメージの持ち方っていうのは、大きいですね。
身体が動くことのスペシャリストもいれば、
イメージがすごく豊富な人っていうのもいて、
その両方を練習しなきゃいけないんですけど。

身体とイメージ、
両方必要なんですね。

そう、それは天秤の両側なので、
あわせて練習しないと、
ただ動きだけになっちゃうんですよ。

動きが速いだけ、とかってことですね。
そういえば、KERAさんのダンスを見て驚いたのって、
動きが速いとかいうことじゃなくて、
「なんでこんな動きが人間に出来るんだろう?」
っていう驚きでした。

ありがとうございます。
僕の場合、波長が合ったんでしょうね。
自分の身体が喜ぶことをやった、っていう。

身体が欲している動きなんですか?

たとえば、人によっては、
インラインスケートが得意な人もいますけど、
僕からしたら、なんであんな動きが出来るんだろう?
って思いますし。

そうか、そこは、
やっぱり向き不向きがあるんですね。


自分の身体が喜ぶ動きって、あると思うんですよね。
それを、僕は開放しただけです。

自分がやりたいものをやって、
見ているみんなが求めているものを吸収して、
それを材料にして、ろくろを回す、みたいな感じです。

なるほど、
その場で、器を作っていくんですね。

みんな次第で、器は大きくも小さくもなるし。
あと、僕は、折り紙っていう表現も、
パフォーマンスに近いと思います。

折り紙?

折り紙も、正しい折り方をしておかないと、
出来上がりが汚くなっちゃうじゃないですか。
だから、基本的な折り方はちゃんと勉強しないといけないんですけど、
それでどんな作品を作るかっていうのは、その人の想像力次第なんですよ。
ストリートでやってると、突然子供が入ってきたりして、
作りかけてたものを、グシャっていったん潰されちゃったりするんです。

(笑)子供の動きは、予想外ですよね。

でも、その時、
実はこうやって折り直したら、
こんなのができちゃいました、みたいなことが起こったり。

それは、折り方の引き出しがたくさんあるっていう、
自信があるからでしょうね。
どう潰されても、そこから作り直せる、っていう。

あとは、その場で飛んできた物を、どう活用するか。
潰れた紙に、飛んできた棒を挿したら、
綺麗なバラになっちゃった、とか。

それがキマった時は快感ですね!

それは、その場にいるみんなの力ですよね。
みんなが入らなかったら出来上がらなかったもので。

今日のパフォーマンスは、
見ている人の中に、小さい子供も多かったですね。


パフォーマンスの時は、子供たちには、
やんちゃしてもいいし、もっと遊んでいいよ、って思うんです。
中に入ってきてくれれば、僕が全部受け止めるから、って。
それでも、ラストのダンスは大人の本気だから、
やんちゃしてても、雰囲気を読むんですよ。
ここから先に入っちゃいけないっていう枠の中には、
絶対入ってこない。

今はジャマをしちゃいけない、
っていう空気が伝わるんでしょうね。

大人たちも、
今まで騒いでた自分の子供が静かになって、
あの時、瞬きもしないで見てた、ってことに感動を覚えたり。
夜にやる時には、ちょっとグレちゃってるような子も来ますけど、
そういう子って、ストリートダンス大好きだから、
2回、3回って見ていったりして。

誰が通りかかるかわからない空間だから、
いろんな出会いがありますね。

そういう子には、
「今度は、後ろから観てみな」って言うんです。
後ろから見たら、また違うものが見えたりするから。

うんうん。


ああいうショーをやってると、いろんなことがわかるんですよね。
お客さんが僕の先生でもあるし、その反応によって、
自分自身のパフォーマンスも成長していく、
っていう繰り返しだと思います。
(2012年7月 溝の口駅前の路上にて)


清水宣晶からの紹介】
KERAさんにお会いする前、DVDでパフォーマンスを観て、その芸術的な動きと表現力に圧倒された。今回、お話しを聞く直前に、実際にストリートでのパフォーマンスを目の前で観た時には、更に多くの驚きがあって、中でも一番強く実感したのは、ほんの一瞬の動きだけで、通りすがりの人が思わず足を止めてしまう、強烈な吸引力だった。

路上では、観ていてハラハラするようなアクシデントも起こるのだけれど、KERAさんは、そのすべてを吸収し、自分の中に取り込んで、パフォーマンスを魅力的なものにするための素材に変えてしまう。
仮面をつけたKERAさんが踊り始めた途端に、観ているみんなの視線がその動きに釘づけになり、見慣れた景色が非日常の空間に変わっていく様子を目の当たりにすると、本当に何かの魔法にかけられているような気持ちになった。

KERAさんは、何かを説明しようとする時の、言葉の選び方や、比喩の仕方がとても上手い人だ。
レッスンで、人に踊り方を教えていく上で身についた感覚だと思うのだけれど、それ以上に、KERAさんは、自分が生まれた石巻や、次の世代に対して、メッセージを伝えていこうとする志を持って、日々考え続けているからこそ、きちんと気持ちを表現する言葉が出てくるのだと思う。

KERAさんとつながりがある話し手の人


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