出口治明


2008年、還暦でライフネット生命を開業。12年、上場。社長・会長を10年勤める。18年1月より、立命館アジア太平洋大学(APU)学長に就任。24年1月より、学長特命補佐。
@p_hal 
(2024年1月 立命館大学東京オフィスにて)

繰り返し読みたい本

(清水宣晶:) 出口さん!

(出口治明:) こんにちは。


こんにちは。
お久しぶりです。

そうですねえ。
どうぞ(イスを勧める)。

ありがとうございます。
最近は、体のお加減はいかがですか?

お加減は・・・まあまあ。
声が出にくいのが、問題ですね。


手で書くほうは。

左手を使って書いていますが、
そうですねえ・・
(かかる時間が)10倍くらい。


すごく、左手を使う
練習をされているんですね。

出口さんの名前は、
直線が多いから書きやすそうです。

(笑)そうですね。

今も連載を続けてらっしゃいますけれど、
原稿は、書くよりも、話すほうが楽ですか?

どちらでも。
まあ、五分五分かな。

今は、読書はいかがですか?

本は・・
今読んでいるのは、これ。
これは、面白い。


『GREEK TO ME』。

もうすぐ、読み終わります。


ギリシアについてのエッセイなんですね、
面白そうです。
本を読む量は、以前と変わりましたか?

2倍、時間がかかる。
理解するのは、前とおんなじだけれど、
ページをめくるのに、2倍、時間がかかるね。

電子書籍なら、こう、
パッと、指でめくれそうですけど。


僕は、本はこういう(紙の)本が好きだな。
清水さんは、電子書籍は読みますか?

私も、基本は紙の本ですが、
実物がもう手に入らない本は、電子書籍で読みます。

そうですか。
それは、いいですね。

出口さんは、
何回も繰り返し読みたいと思う本は、
何冊ぐらいあるんですか?

20から30冊ぐらい。
『道しるべ』、これが一番。
あと、『ハドリアヌス帝の回想』
これは、ぜひ。

読んでみます。

今までもこれからも、おんなじ

今は、講演のような形でお話しをする、
ということはされているんでしょうか。


それは、もう少し、
時間がかかりますね。
あと1年、待っててください。
そしたら、もうちょっと。

おおお!そうですか!
この1年ぐらいでも、
とても回復されていますよね。

うん。
理由ははっきりとわからないけど、
ちょっとずつ。
はじめは、全然言葉が出なかった。

出口さんがリハビリについて
書かれた本も、読みました。

あの本?


そうです、『逆境を生き抜くための教養』。
人間って、うまく行っているときよりも、
逆境が訪れたときのほうが、その人らしさが出るなと思いました。

出口さんのふるまいを知って、
自分も、逆境になったときには、
諦めずに、自分が出来ることで
一番前向きなことを選ぶようにしようと、
心の中で思っているんです。


いいねえ。
素晴らしい。

ライフネット生命の時も今も、
出口さんは、自分もこうなりたいと思えるような
ロールモデルであり続けています。


本を1冊、持って行って。
どれでも好きなのあげる。

ええ?
どれでもいいんですか?

いいよ。


じゃあ、まだ読めていない、この本をいただきます。
ありがとうございます。

新しい本が1冊、もうできています。
あさってに出る。

そうですか!

だいぶ前に書いた原稿がまだ残ってるから、
手直しを加えて、また少しずつ出ていますね。


「旅」では、
行きたいところというのはまだ残っているんですか?

まだまだ、あるねえ。
たとえば、アフリカとか。

アフリカ!
どのあたりでしょう?

(書く)


真ん中へんですね。
コンゴや、タンザニア。

はい。
これと、


エジプト、モロッコ、南アフリカ。
ああ、いいですねえ。
日本の中は、もうほとんど行きましたか?

僕はもう、国内はだいたいすべて行った。
あなたは、見ていない県はある?

佐賀と、長崎と、大分は行っていないです。
最近は、長野から日帰りで行ける場所を、
よく旅行しています。

そう。


出口さんは今も、やりたいことというのは、
変わらず、人、本、旅なんでしょうか。

やりたいことは、今までもこれからも、全部おんなじ。
面白い人に会って、本を読んで、旅をする。

僕も、生きているかぎり
人と会って、本を読んで、旅をしたいと思います。

ええ。
まだまだ、清水さんには時間があるね。

そう思います。
そう思えるのはやっぱり、
出口さんを見ているからなんです。

出口さんは60歳で会社を興すということをやったんだから、
いくつになっても、
新しいことができない理由はないだろう、と。

そうだね。


本当に、今日は出口さんと
お話しできて嬉しかったです。
ありがとうございました。

また、きっと、
お会いしましょう。
(2024年1月 立命館大学東京オフィスにて)

清水宣晶からの紹介】
僕が敬愛してやまない、出口治明さんに聞いたお話しをまとめました。

出口さんは、APU(立命館アジア太平洋大学)の学長をつとめているさなか、脳出血で倒れ、失語症と右半身麻痺の後遺症を抱えることになりました。

とても大きな環境の変化だったと思いますが、出口さんは極めて理性的に、自分が直面している事態を「変えられないファクト」として受け入れて、できる中で最善の治療方針をみずから選び、懸命のリハビリを続けました。

その後、発語の面でも回復をみせて、ふたたび学長の職務に復帰を果たしています。
ものすごいレジリエンスだと思います。


出口さんには以前、ライフネット生命の社長をされていた時に、「読書論」というテーマでお話しをお願いしたことがありました。

その時に語られたことを文字起こしした時、ほとんど編集が必要ないほどに話しが明晰で、理路整然とした内容だったことに、とても驚いたのを覚えています。


僕が今回聞いた中で、ものすごく印象に残っているのは、「あと1年待ってください。またお話しをする時には、もっとしゃべれるようになっていると思います。」という言葉でした。

当たり前のように、いつも前を向いて、よりよく生きようと考えているのです。


僕は、人間は、逆境の時にこそ本当の真価が試されると思っています。

出口さんの生き方から、僕はいつも進むべき指針を与えられていて、心の中で常に、僕もこういう歳の重ね方をしたい、と思うようなロールモデルで在り続けています。

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