石井千尋

1978年11月16日生まれ。
趣味は、フラワーアレンジメント・なんちゃって裏千家・へなちょこ護身術。

(2008年3月 渋谷センター街にて)

小学校時代の努力

(清水宣晶:) スケジュールをばーって詰め込むのって好き?

(石井千尋:) そうですね。
中学受験の時に、そういうスタイルが身についてしまって。

ん?
千尋って中学受験だったの?

そう、もうバリバリの。
小学校の時に先に頑張って、あとは楽をしようと狙ってました。

小学生の時から、そんなことたくらんでたんだ!

私、本を読むのが本当に好きで。
本が好きすぎちゃって、友達といるよりは一人で本を読んでるほうが気楽でいいやって思って、友達と全然遊ばなかったんですよ。

うんうん。

で、さすがにウチのお母さんが心配になって、学校で、父兄のミーティングの時に「娘と遊んであげてください!」って言ってまわったみたいで。

それ、必死だなあ。

そしたら、その後、今まで話したこともなかった友達が「ちーちゃん遊ぼう」って声かけてくるようになって。
で、連日声をかけられて、遊んでみたら、それが結構楽しかったんですね。
ある時、「ちーちゃんのお母さんがウチのお母さんに遊んでくださいって言ったから遊んでるんだよ」って言われて、ちょっとショックだったんですけど。
でもまあ、そういう経緯がありつつも、友達と遊ぶのが楽しくなってきたんです。

本以外の、新しい楽しみを知ったんだね。

私たちの世代って、習い事世代で。
まあ、あっきーさんとは世代が違うかもしれないんですけど。

いや、だいたい同じ世代だと思っていただいて結構ですよ。

まあ、世代は違うんですけど、みんな必ず何かの習い事に通ってたんですよ。

あー、オレらの世代ってそうだったよね(むりやり)。

で、友達と遊びたいと思っても、みんな習い事で忙しいんですね。
そうすると今度は、時間をもて余すんですよ。

その頃はもう、本は読んでないんだ?

並行して読んでるんですけど、なんかそれじゃ満たされなくなっちゃって。
そのもて余した時間を使って、今のうちに頑張って勉強しておいて、その分、あとで遊ぶことにしようと思って。

勉強は、楽しかった?

すっごい楽しかったです。
やるほどに自分が進化していくのが実感できたんですよね。

勉強に向いてるんだなー、きっと。
やった分だけ伸びていく感じが楽しいんだろうな。

裏切らないですからね、勉強は。

ぶはははは!

やった分だけダメになるとかいうことはないですからね。
勉強は誠実ですよ。
恋人なんて、愛した分だけ離れていったりするじゃないですか。

たしかに!
スゴい悟りようだわ。
社会の仕組みに見事に適応出来る人だな。

当時はそうだったんです。
四谷大塚って知ってますか?

うんうん、
55段階制とかいうやつでしょ。

それは四谷学院なんで(笑)。
四谷大塚は、毎週末にテストがあって、その結果が全国で集計されて、週報でランキングが配られるんです。
準会員と会員っていう区分があって、私は最初、準会員のドベで入ったんですけど、しばらくして、その週報に名前が載るようになったんですね。

それは楽しいだろうなあ。

ゲーム感覚でしたね。
それにハマって、深夜2時くらいまで勉強して。

小学生でか!

中学受験をする小学生では、結構普通だったんですよ。

その後、準会員から会員になったの?

そう、急成長してランキングの上位のほうに入るようになったんですよ。
今考えれば、サクセスストーリーですね。

ほんとだよ。
準会員から幹部まで登りつめちゃった、ア○ウェイの成功談みたいだよ。

そしたら、親もだいぶ本気になってきて。
小学校が終わると、時間がもったいないからって、お母さんが校門で自転車で待ってて、学校の帰りにそのまま塾まで乗せて送っていくんですよ。

マジで!?
お抱え運転手みたいだね!

それから夜の10時くらいまで勉強して、家に帰ってからも勉強して。
お風呂とかも3日にいっぺんぐらいしか入ってなかったんですよ。

むちゃくちゃだなー。

ホントのホントに頭がいい人は、そんなことしなくてもすんなりいい学校に入ったりするんですけど、私はそういうタイプじゃなかったので。

努力型だね。
後から伝記になった時には、そっちのほうがはるかに面白いよ。

逆方向に振り切れる時

その後、中学、高校では勉強はあんまりする必要なかったの?

ところが、私が行った学校は附属の大学がないんですよ。
まあ一応これから6年間は安泰だけど、どうしたら安全牌を引けるかと。

6年間は安泰だけれど(笑)。
また、今後の戦略を練ったわけだね。

で、一つ思いついたのは、推薦っていう方法があったんですよ。
中高6年間いい成績を維持して、いい大学の指定校推薦をもらうっていう。

それ、逆に大変だろ!

今考えれば、そうなんですけど。
まあでも、間違いない保険がどうしても欲しかったんですよ。
受験を回避して、確実に大学に行けるようにしたいと。

孔明ばりの戦略家だなー、しかし(笑)。

で、成績を絶対落とさないようにして、予定通り指定校推薦を取ったんですね。

思ってたプラン通りに進んだね。
大学では何をやってたんだっけ?

ここからが転落人生なんですけど。
私、中高6年間女子校だったから、女の子としか話したことなかったんですよ。
その間話したことがある男の人は、お父さんとお兄ちゃんとホームレスのおじさんだけです。

ひえーー!

私のいた商学部なんか男女比10:1で。
女子の健康診断でもクラスの男の人が受付やってて、もうカルチャーショックですよ。
で、どうなるかっていうと、もう遊びまくりです。

いきなり!?

高校生まではウチの門限18時だったんですけど、大学入って一年経たないうちに、ファミレスとかで夜通し話して朝帰り、とかが当たり前になっちゃって。

そりゃまた突然、逆方向に振り切ったなー。

入ったサークルが、同期の男の子10人いないぐらいの小さなサークルなのに、最終的には、その中の4~5人とつきあいましたからね。

真性のサークルクラッシャーだな!
よく気まずくならなかったね。

気まずかったですよー。
そこらへんの社会性がなかったんですね。

中高で免疫が出来てなかったからね。

そういうことしたらどうなるか、想像がつかなかったんです。

いやー、極端で面白いよ。

そのままスレてっちゃったら良かったんですけど、元が埼玉の田舎もんだから、洗練されてなくて。デートに行く時もオーバーオールですよ。
オーバーオールって、知ってます?

マリオが着てるやつだよね。

そうそう!
当時はすっごいカッコいいと思ってたんですよ。

実在の人物が着てるの、チャップリンしか見たことないよオレ。

結局大学4年まで、一年中そればっかり着てました。

ホントかい!

まあ、最初の2年間はそんな生活してたんですけど、3年生になってからは、今度はゼミでひたすら勉強と研究生活ですね。

また、逆に振り切ったねー。
そこから真面目生活に戻ったんだ?

はい。友達の家に集まって、議論しながらパソコン打って、5日間くらいまったくお風呂入らないで。
5日全部合わせても1時間寝てなかったと思いますね。

今度は5日間風呂入らずか・・。
やるときゃやる人だなあ。

その一番激しかったときは、私、家に帰った瞬間に意識を失って。
お兄ちゃんの友達が私を見つけて「目を開けながら死んでるぞ!」って騒ぎになったんですよ。

床で気絶してたんだ?
そりゃ死体に思われるよな・・。

その後のヒストリー

どうですか?
もっと聞きたいですか、私のヒストリーを?

いや、興味は尽きないんだけど、まあ今日はこんなところで。

感想聞かせてください。

うん、非常にね、物語にしやすくていいね。
ストーリーテリングのツボをおさえてる感じでいい。
長澤まさみ主演でドラマ化出来るよ。

男性遍歴も、ちゃんとたどって話すと面白いんですよ。
ネタ的に面白いってだけじゃなく、最終的には聞いてる人が「ええ話しや」って涙するような話しばかりなんですよ。

いかんなー、これ、インタビューの中じゃとてもコマ数が足りないな。
あと、聞いてもインタビューとして載せられなさそうだし・・。
まあじゃあそれは、オフレコの時にまた。
(2008年3月 渋谷センター街にて)

清水宣晶からの紹介】
千尋は、非常にサービス精神がある。場がおとなしくなってきたら、みずから盛り上げようとするし、インタビューをするとなれば、きちんとその空気を察して、面白おかしく話しを聞かせてくれる。
インタビューだけを読むと破天荒だけれど、実際にはしっかりした考えを持った、かなりの気配りが出来る人だ。千尋と話しをするのはとても面白くて、それは、世間の価値観に流されず、常に自分の頭で考えているからなのだと思う。インタビューの文章だけでは、なかなかその魅力を伝え切れないのが残念だ。

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