上村実生


「伝えること」「伝わること」に興味津々のWEBプロデューサー&デザイナー。
まっとうな事も、そこに感動やエンターテイメントがなきゃ伝わらない。
いろいろある今こそ、納得できる人生を、らしく生きるチャンス。
おいしいお酒と肴、猫と昼風呂を愛してます。
(2012年2月 国立「上村邸」にて)

ながらの楽しみ方

(清水宣晶:) えええーー!?
これは、、スゴい!!


(上村実生:) 清水さんが来たら、
普通のご飯じゃつまんないぞと思って、
清水さんのブログの「好きな食べ物」に載ってたものを、
とりあえず詰め込んで作ってみたの。

これは、
激烈にものスゴいよ。

たぶん、好きなもの、
15種類くらいは入ってると思うんだ。

こんなに、
好きなものをいっぺんに食べられるなんて、
普通の生活の中では、あり得ないでしょう。

好きなものだからって、
一緒に食べたくはないかもしれないんだけど(笑)。

いや!
特製お子様ランチを前にした子供のように、
テンション上がってますよ。

大人のお子様ランチみたいでしょ。

ではありがたく、いただきます。
実生さんて、
1日に何回も風呂に入るって言ってたっけ?

そう、自分ちのお風呂に、
何回も出たり入ったりする。

それ、どういう時に入るの?

タバコ吸う人と、同じようなタイミングだと思うな。
ちょっと一休みしたい時とか、ちょっと考え事する時とか、
はたまたちょっと疲れた時とか。
だから、1日に3~4回入ったりするときもある。
お風呂入るっていっても、湯に浸かってるだけで、
毎回洗うわけではないんだけど。

あ、じゃあ一日の最後に入る時が本番で、
それまでは、本番に向けて、
少しずつ温めてる感じなんだね。

そう、だから、銭湯行く前にも、
お風呂入ってから行ったり(笑)。

ぶはははは!
銭湯にも、お風呂入ってから行くの!?
相当な時間を、湯の中で過ごしてるね。
湯に浸かりながら、本読んだりする?

うん。
清水さんも、お風呂入りながら、
マンガ読んだりご飯食べるって言ってたでしょう?

いや!
さすがに、ご飯は食べないね。

あれ?
それで私と一緒だ、
って思った覚えがあるんだけど。

風呂でご飯食べるの!?

食べるよー(笑)。
夕飯じゃなくてお昼ご飯ぐらいだけど。
ラーメンとか。

ラーメンて!
浴槽のフタの上に置いて?
それはハンパないなあ・・。

マンガは読むでしょう?

うん、風呂でマンガは読むのはすごい好き。
半身浴しながら、ゆっくりと。

私も半身浴。
でも、活字の本は、
意外と読めないかもしれないな。

そうだよね。
気合入れて3冊ぐらい持って入ったりするけど、
長い時間入ってても、1冊読めなかったりする。

やっぱり、
マンガぐらいがちょうどいいよね。

最近は、マンガをスキャンして、
iPadに入れてるんだけど、あれはすごくいい。
普段、電車に乗る時間があんまりないから、
風呂に入る時が、本読むのに一番いいね。

わたし、何かと何かを一緒にやる、
「ながら」が好きなんだと思う。

ああ!同じだ。
僕も、「ながら」で出来るものじゃないと、
習慣として定着しない感じがする。
ジョギングも、走りながら他のことが出来ればいいんだけど、
走りながらだと、本が読めないでしょう。

わかる!
私、ネイルにあんまり行く気にならないのは、
やってる途中、本読んだり出来ないでしょ。
だから、ネイルの2時間てもったいない気がして。

やってもらってる間、
手がふさがっちゃってるからね。

だから、走ってるだけじゃもったいないって思う気持ちは、
すごいわかるなあ。

なんか、複数同時にやりたくなっちゃうんだよね。
映画館で映画観てても、
ボールペンとメモ帳持ちながら、
頭の半分では映画観て、もう半分では考え事してると思う。

私、とっても好きなのが、
舞台を観に行って、考え事をすることで。

ああ!
わかるなあ!

もちろん、始めから考え事をしようと
思っているわけではなくて、でも、
面白い舞台の時ほど、考えがまとまるの。

その感じ、わかるよ。

いい歌舞伎や芝居だと、集中して感情移入するし、
物語から得たものに対して、
考えがどんどん浮かんでくる時があるんだ。
だから途中聞いてないところもあるかもしれないんだけど、
それも含めて、芝居楽しかったなあ、って思う。

なるほど、なるほど。

あと、これはもう、
単なる失礼なんだけど、
私、歌舞伎で時々寝てしまうのも好き(笑)。

ぶはははは!

うふふふふ!

観ながら寝ちゃう、
っていうのが好きなの?

歌舞伎役者からしたら、
「寝るなよ!」って感じだと思うんだけど、
でも、その、寝てる時に私が得てるものを知ったら、
「ありがとう」って言うんじゃないかと思う。

(笑)いや、さすがに、
「ありがとう」とは言わないと思うんだけどね。

自由に過ごしてくれてサンキュー、って。

そうか、つまんなくて寝てるわけじゃなくて、
むしろ、最高に歌舞伎をエンジョイしてるからこそ、
寝てるんだ、と。

そう。
少しウトッとしてしまう時間も含めて、
楽しみのひとつなのかも。

わかるなあ!
でも、その真意は、
なかなか伝わらないだろうなあ!

歌舞伎って、お菓子とかお弁当とか食べながらでも
観ていいものでしょう。
その自由な感じがすごく好きで。

うんうん。

それを含めて、リラックスして帰る、と。
個人的にはすっごく歌舞伎を楽しんだよ、
って感じなんだけれど。

それはほんとに楽しんでると思うよ。
やっぱり、DVDで映画を観てる時は、
気兼ねをまったくせずに自由に楽しめるってのはいいなあ。
誰かの講演を聴きに行く時なんかは、
前のほうの席だと気兼ねしちゃうから、
一番後ろの席に行って、
仕事しながら聴いてたりする。

へえー、それはやったことないけど、
はかどりそうだね。

周りから見たら、
ちゃんと聴いてないように見えるかもしれないけど、
でも、そういう時って、すごく集中して聴いてる。

わかる!
静かな部屋に一人で居るよりも集中できるし、
話もよく聞こえているんだよね。

人の声がする環境って、なんか感覚が開くんだろうね。
スタバとかに行って仕事するのが好きなのも、
周りの人たちの会話をBGMにするのが、
一番集中出来るからなんだと思う。

舞台だと、すごく真剣に演じている人がいて、
それをすごく真剣に観ているたち人がいて、
場に、とてもいい「気」があるでしょう。
そういう中で考え事するときは、とてもはかどる。

うんうん。

だから、DVDを観ている時とはまた違うよね。
その空間の、「気」みたいので上がるっていうか。
一流の人たちが舞台から放つ「気」につられて、
自分の中で考えてたことが動いてまとまるの。
これは、素晴らしい舞台じゃないと起こらないんだよね。

変わった楽しみ方であるけど、
それはでも、すごくわかるなあ。

コンセプトを考える

清水さん、外に出かける時に、
本を持ってないっていうことある?

ほとんどないんじゃないかな。
海外行く時、最近はiPadに全部入れられるから助かるけど、
iPadがなかった頃は、途中で本を読み終わって
読むものが無くなっちゃうかもって不安があるから、
かなり過剰に持ってってたよ。


私もそうそう。
旅行じゃない時でも、読み始めて、
もし面白くなかったらどうしようってのが心配だから、
1冊だけじゃ心もとなくて、3冊ぐらい持ち歩く。

ぶははははは!
そこまで心配してるんだ!?
でもやっぱり、手持ち無沙汰になった時に、
読むものがなかったらどうしようっていう
潜在的な恐怖は、常にあるよ。

私たちは何に追われてるんだろうね(笑)。
二人とも、すごいせっかちだよね。


今日は実生さん、
何の本を持って出てきた?

えーと、、これ。
塩麹の本とか。

塩麹?

今月(11月)の28日に、友達2人と、
一日限定のカフェをやるのね。
そのメニューを考えようと思って。

そういえば最近、
いろんな料理を作ってるよね。

カフェのことを考えてた時に気づいたんだけど、
私、どっちかっていうと、
ご飯を作るっていうことよりも、
どういうメニュー構成にするかとか、
どういうコンセプトだとお客さんが喜ぶかとか、
どんなメニューブックにするかとか、
そっちのほうが楽しい、って思ったんだよね。


それは、わかるな。
実生さんが、facebookで料理の写真を
アップしてる時も、どっちかっていうと、
企画寄りな面白さの部分にフォーカスしてるよね。

そうかも。
外で食べる時は、単純に美味しいものを食べたいんだけど、
自分で作る場合は、盛り付けをどうするかとか、
これとこれを合わせたら面白いんじゃないか、
とか考えるほうが好きかもなあ。

うんうん。

「とことん美味しいものを作ってください」
って言われるよりは、
「とことんいいセットを作ってください」
って言われるほうが、
出来そうだし、燃えると思う。

テーマを決められたほうが燃えるって感じだよね。
自分でプラスアルファの工夫を考える面白さかな。

そう、それに気づいた。


店行っても、やっぱり、
食べ物だけじゃなくて、
店自体の作りとかにも興味ある?

そうそう。
食べ物そのものというよりも、
コンセプトとかの部分に興味があったりするからね。
店のオペレーションとかに、意識が向いちゃう。

お手伝いから始まる縁

最近ね、
webの仕事をやってて良かったなって思う事があって。
去年から、特に3.11の震災のことは大きいと思うんだけど、
普通に暮らすための安全、みたいなことを、
個人個人が考えるようになったじゃない?


うんうん。

そういうのをなんとかしたいって、
真剣に活動をされている方っていっぱいいるんだけど、
この人の活動を応援したいな、って思った時に、
ボランティアで、webでお手伝いしますよ、
っていう切り口があると、すごく入っていきやすいの。

どんな活動をやるにしても、webっていうのは、
たいてい必要になってくるからね。

そう。
活動って、情報発信が特に重要だったりするから、
役に立てることがあったりするし。
で、ボランティアとしてだったら
関わらせてもらえることって、世の中に結構あるから、
本当に自分の好きなことが出来るんだよね。
やってみたいこととか、会ってみたい人がいた時、
すぐに、一緒に何かをすることが出来る。


わかるなあ。
オレも、仕事以外の場面でwebシステムを
作らせてもらったおかげで生まれた縁て、
たくさんあるよ。

デザインって、割りとどんな分野でも、
あれば役立つものだったりするでしょう。
だから出来るだけ、仕事の時間は密度を濃くして、
「これ手伝いたい」っていうことがあった時に
すぐに手伝えるような時間を持っておきたいって思う。

デザインっていうのは、
そういう時間のシフトが出来る仕事だよね。
もともと、独立するっていう時、
そういう状態を求めてたところはあるの?


明確に考えて独立したわけじゃないけど、
でもやっぱり、そういうのが好き。
ムダに拘束される時間が、すごくイヤなんだと思う。

実生さんがwebを作る時って、
何か、自分なりのやり方みたいなのってある?

どうなんだろう?
何かあるのかな・・
まず、相手の話しをとことん聞くかもしれない。

うんうん。

清水さん、会社のホームページに、
『自分で決められる人と仕事をしたい』って
書いてたじゃない?
それは私もすごく同感で、
自分がどうしたいかっていう本人のマターとして発言する人と
仕事をするっていうのが、話しが早いし、面白い。

「私の一存では決められないので、上と相談してみます」
みたいなことを言われると、テンション下がるよね。

だから、話しをしてる本人が自分のサイトを作りたい、
って思ってる制作を、引き受けるようにしてる。
そうすると、そのサイトに載せること以外でもいいから、
相手のことをとにかく聞きたいって思う。
その人の趣味のことでもいいし、
今みたいな感じで話してる雑談でもいいし。

根本にある熱い想いとかが理解できてれれば、
出来上がるものが、
相手の要望から大きくズレるってことはないよね。

たとえば、大企業の担当者の人と話しをしてて、
その人の想いで始まってるわけじゃないものって、
その担当者のバックボーンとかは、別に関係ないじゃない?
だから、ちょっと張り合いがないなって思う。

なるほど、なるほど。

聞くとイメージも湧くし、
向こうからしても、
話してるからこそ通じてる、
っていうコンテキストが出来るっていうこともあるし。


わかるなあ。
自分自身の中に「こういうものを作りたい」
っていう気持ちがしっかりとある人と話すと、
あらゆる話しがヒントになるし、
それがないと、まず作れないよね。

そう、
webで何をしたいかっていうことじゃなくても良くて、
会社として何をしたいのかとか、
何をメッセージとして伝えたいのかがわからないと、
一歩も動けない。
もちろん、言われた通りのものを
そのまま作るわけじゃないんだけど、
まず聞かないと始まらないって思う。

うんうん。

「こんな、サイトに関係ない余計なことまで
いろいろ話しちゃったけど、大丈夫ですか?」って
お客さんによく言われるんだけど、それがいいの。

(笑)凄腕だな、それ。
そんなに引き出しちゃうの!?


逆に、たくさん言ってもらって、
すごく助かります、って思っちゃう。

これも、オレと実生さんが似てるところだと思うんだけど、
自分で旗を挙げて「これをやります」って発信するよりも、
人の話しを聞いて、それを膨らますほうが好きなのかもね。

ああ!
最近、それはすごく思った。
何かをやってる人に、
「もっとこうしたら良くなるんじゃないですか」とか提案して、
手伝うのが好きなのかもしれない。

誰かに出されたお題に応える、
っていうことに燃える性格だよね。

お題を出されるって、すごく好き。
で、それにどう応えるかとか、
いかに相手の想像を上回るかとか、
考えるのが面白い。


受け身と言えば受け身なんだけど、
癖のあるサーブをレシーブすることに快感を覚えるんだよなあ。
実生さん自身では、
何か、サービスを立ちあげたいっていう気持ちはあるの?

意外と、自分で一から何かやりたいっていう情熱は続かないのかも。
それよりは、課題があったり、すごい情熱があったりする人を
助けたりとか、違う視点から手伝ったりとか、
そういう方が楽しいんだね。
だから、webの仕事も続けられているのかもしれない。

webっていうものは、
そういうポジションには絶好の道具ではあるよね。
単独で主役を張るんじゃなく、
脇を固めるほうに向いてる。

でも、そうやって、
仕事の形でもボランティアの形でも、
手伝っているうちに、
自分自身でやりたい何かが見つかればいいなとも思ってる。
今は、自分がピンと来るものを探すために、
興味ある事にいろいろ関わってみようっていう感じかな。
(2012年11月 渋谷「PUBLIC HOUSE」にて)

清水宣晶からの紹介】
実生さんは、常に想像の上を越えていくwebデザイナーだ。
10年前に出会って以来、いくつものwebサイト制作の仕事を一緒にやり、サイトのデザインをしていただいたけれど、どの時でも、彼女は必ず、要求された以上のオリジナルな工夫を加えてきた。
そういう姿勢や、相手の望んでいるものを汲んでさりげなく形にするホスピタリティーもふくめ、実生さんほど信頼が出来て、一緒に仕事がやりやすいデザイナーはいない。

仕事と関係のない場所で上村さんと話すと、これもまた面白い。興味や知識の幅が広く、小説やマンガなどのヒットするツボが共通していて、話題が尽きるということがないので、いくらでも話し続けられる気がする。
話すたびに新しい気づきがあるのは、きっと、面白いと思うポイントがお互いによく似ているからなのだと思う。
今回の対話も、振りかえってみれば、何回言ったかわからないぐらい「わかるなあ!」という言葉を連発していることに気がついた。

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