本田温志

本田温志(ほんだあつし)
1972年10月21日生まれ。
長崎県出身。

横山式筋二点療法講師養成コース修了
長崎にて整体院を開業後、
上京し、都内の治療院にて勤務。
表参道のアロマサロンにて、整体法の講師を務める。
2004年、東京・鵜の木にて、「ありがとう生体院」開業。
http://ariga10seitai.net/
(2011年2月 鵜の木「ありがとう生体院」にて)

場の力

(清水宣晶:) ん?
どこからか、ウグイスの鳴き声が聞こえるね。

(本田温志:) 向こうの部屋で、
そういうBGMを流してるんだよ。

あ、スピーカーからの音だったのか。
水の流れる音もするし、森の中にいるような気分になるね。

(本田三佳:)あっきー、
飲み物はコーヒーで大丈夫?


いいねえ!

温志さん、コーヒーメーカーのスイッチを押してもらってもいい?
なんか、温志さんが押すと、美味しくなる気がするのよ。


それは、あると思うよ。
スイッチを押す人によって味が変わっても全然不思議はないと思う。

整体の流派って、いろいろあると思うんだけど、
あっちゃんのやってるのは、どういう種類のものなの?

僕が最初に習ったのは、「横山式筋二点療法」っていうもので、
その創始者の人に、3年くらい教わって、
そこに、自分なりのやり方を加えてる。

その療法は、何か、
他の流派にはない特徴ってあるの?

視点がちょっと面白くて。
「肩が凝ってたらどうする」っていう時、
一般的には、肩をもむでしょ?

間違いなく、もむね。

でも、筋二点療法は、
肩凝りは、「結果」として生じてるわけで、
その原因は肩にはない、っていう考え方をする。

根本の原因から取り除かないと、
またすぐ肩凝っちゃうよ、っていう?

そうそう。
ただ「結果」にアプローチをしただけだと、
その部分が一時的に麻痺して、スーッとした気にはなるけど、
筋肉は全然ゆるんでないから、一日たったらまた同じ状態になっちゃう。

凝ってる部分とは別のところに原因があるの?

そう、凝ってるところに直接じゃなくて、
関連している筋肉に刺激を与えると、
凝っているところの筋肉がゆるむ。

あ、それで「筋二点」っていうのか。

そう、痛いところと、反応する部分の二箇所。

それ、対応する場所って、必ずあるの?

ほぼ、あると思う。
結果には、必ず原因があるから。
それは、筋肉じゃない場合もあるんだけどね。

精神的なものだとか?

そう、あとは、環境だったり、
ストレスだったり。

あっちゃんの治療っていうのは、
マッサージみたいなフィジカルなことだけじゃなくて、
メンタルな部分も、すごく考慮してるよね。

二点療法っていうのは筋肉の作用をみるんだけれど、
それ以外の部分も調整出来れば、より効果が上がると僕は思っていて。
治療をするにあたって、一番わかりやすいものでいうと、
そこがどういう空間かによって、答えが変わってくる。

そうなんだ!?

たとえばの話しで言うと、
渋谷の雑踏の真ん中でベッドを置いて治療するのと、
山奥の滝の近くで治療をするのでは、
まったく同じようにやったとしても、答えが違うと思うし。

なるほどなあ。
それは、同じことをやっても、
場によって治りやすさが違うっていうことなのかな?

治りやすくなるっていうこともあるんだけど、
それだけじゃなくて、
良い環境でやる時と、あまり良くない環境では、
自分のやり方も変わってくる。

あ、そう!
やり方まで変わってくるもんなんだ?

僕が治療の時に一番重視しているのは、自分の中の反応で。
たとえば、腰が痛いっていう人がいた時、
そこと対応する、肩とか腕の部分を刺激するっていうセオリーは一応あるんだけど、
僕の体で、さっきまでなんともなかったところが痒くなったりピリピリしたら、
自分が触れている相手の同じ部分を押さえてあげると、腰が楽になる、
っていうことはあるんだよね。

それ、面白いなあ。

そういう反応って、なにかが自分に教えてくれてるからだと思うんだけど、
いい環境にいると、よりたくさん感じるようになる。

それは、あっちゃん自身も、
なんでその、ピリピリした部分を押さえると楽になるかっていうのは、
わからないことなの?

最初のうちは、全然わからなかったんだけど、
いろいろと勉強をさせてもらったり、体を診ているうちに、
だんだんと関係がわかってきた。

後づけで理屈がわかってくるんだね。
誰かに聞いた話しなんだけど、合気道っていうのは、
相手と自分を合わせて一つのエネルギー体として考えるみたいで。
だから、相手の感覚と自分の感覚が合わさって
区別がつかない状態っていうのが理想的な状態らしいんだけど、
それと似た感じがするよ。

まさにその通りで、
僕が治療をしている時も、二人で一つの空間をつくっている、
っていう感覚でやってる。

なるほどなあ。

僕と同じように、人間の体を治す、
マッサージをする人とか整体師さんとかお医者さんとかは、
治療の時に相手からマイナスの影響を受けてしんどい、
っていう話しをする人が多くて。

それ、話しにはよく聞くよね。

僕も最初、
みんなが言ってるから、そういうもんだと思ってたんだけど。
そう思ってるときは、そうなるんだよ。

おぉ!?

でも、二人で一つの空間をつくっている、って考えると、
片方が良くなってる時は、もう片方も良くなってるはずなんだよね。
だから、そう思うようになってからは、自分がしんどくなることはなくなった。

スゴいなそれ!
そのWin-Winな関係、素晴らしいよ。

そうなるためには、やっぱり場の力っていうのは大きくて。
人が生きるためにはエネルギーが必要なんだけど、
水と一緒で、エネルギーも高いところから低いところに移っていくんだよね。
エネルギーが高い場所で治療をすれば、二人ともに元気になるけど、
そうじゃない場所だと、どちらかは元気が吸い取られてしまう。

治療に行って元気を吸い取られるってのは、
ひどい話しだな。

そう、治療院が力のない場所だと、
逆にお客さんからエネルギーを奪ってしまうことになっちゃうんだよね。
「ありがとう生体院」はそういう場所になっちゃいかん、と思って、
常にエネルギーに満たされるように、環境づくりに力をいれるようにしてる。

体の反応

あっちゃんが、そういう、
整体の技術的な部分だけじゃなくて、
場のエネルギーみたいな、見えないものに注目するようになったのは、
何かきっかけがあったの?

一番大きかったのは、
長女にアトピーが出たっていうことで。

そうか。
あすみちゃん、生まれてすぐに
アトピーの症状が出たんだったよね。

その時、なんとか治す方法を見つけたくて、
とにかく、色んな試行錯誤をした。
最初は、ステロイドを塗って、すぐにキレイになったから、
「なんだ、治ったじゃん」って思ったんだけど、
ステロイドを止めた途端に、全身にバーッて湿疹が広がって。

治ったんじゃなくて、
単にフタをしただけだったんだな。

そこで、いろいろと勉強させてもらった中でわかったのが、
エネルギーが足りてないっていうことで、
お風呂の水とか、飲み水とかから改善をしていって。
それで少しずつ良くなっていく様子が、わかったんだよね。

子供の体って素直だから、
良いものも悪いものも影響を受けやすいんだろうね。

そう、やっぱり、
感覚が鈍感になってくると、
良くない場にいたりしても、気づかないことが多くなる。

でもそれ、気づかないっていうだけで、
影響を受けてないわけじゃないんだよね?

僕が考えるイメージだと、
みんな、それぞれ許容範囲のあるコップを持っていて。
そのコップに、悪いものが少しずつたまっていって、
それがあふれないうちは、表面には出ないんだけど、
いっぱいになってあふれた時、必ず症状が出る。

そうか。
じゃあ、やっぱり、
良くない影響に気づいて、
それを避けるっていうのは重要なことなんだな。

正常であれば、
良くないものを体に取り入れているような時は、
拒否反応を示すはずなんだけど、
その反応が逆になってしまってる人も、結構いるんだよね。

悪いものを取り入れている状態が心地いい、っていう?

そう。
そこまではいかなくても、まったく体が反応しなかったり。
しばらく風邪をひいたことがない、っていう人がいるんだけど、
それは、抵抗力があるっていう場合だけじゃなくて、
風邪をひく力がない、っていう場合もある。

そうなんだ!?

風邪の菌が入ってきた時、
健康な状態であれば、発熱して体温を上げて菌を殺す作用が働くところを、
入ってきても体が反応できないことがあるから。

なるほど。
風邪をひくのも、必要なことなんだな。

だから、風邪ひとつひいたことがないっていう人が、
ある時コップがあふれて、
突然大病になって倒れるっていうことも、結構ある。

それはコワいね。

ウチの長女は、生後二ヶ月で
アトピーを出すことができたけど、
今考えると、それはすごくありがたいことだったと思う。

そうだね。
ずっと蓄積していって、
後になって症状が出てしまうのもツラいことだし。
その時は、いろいろな治療を試したの?

それこそ、あらゆる方法を試して、
ドクダミの葉がいいって聞けばそれを試して、
でもうまく効かなくて、、の繰り返しで。

うんうん。

今考えると、それは、ドクダミの質にも関係あったんだね。
人間よりも高いエネルギーのドクダミならいいんだけど、
今、自然が劣化しているから、エネルギーの低いドクダミっていうのもあって。

それ、新しいな!
「ドクダミが体にいいか悪いか」ってのは考えるけど、
「ドクダミにも、いいドクダミと悪いドクダミがある」っていう視点では考えたことなかったよ。

栄養学なんかでも、たとえば、
カルシウムは、成人で一日600~700ミリリットル必要っていわれてるんだけど、
それで本当に大丈夫かっていうと、わからないんだよね。
表現としては「Ca」として全部同じになっていても、
質の違いはあって、いいカルシウムじゃない場合、
やっぱり骨粗しょう症になっちゃう。

なるほど、なるほど。

目に見えないもの

何十年か前は、質の悪いカルシウムなんてのは存在しなかったから、
単純に、量の概念だけでよかったんだけど、
牛さんの育つ場所とか、牛さんの食べるものとかが、
エネルギーの低いものが多くなってきたから、
だんだんカルシウムの質も変わってきてしまったんだよね。

それはほんと、
今まで気づかなかった視点だよ。

その、質っていうことを考えるきっかけになったのは、
人間の体は、その中に分子があって、原子があって、素粒子があって、クォークがあるわけだよね。
ドクダミにしても、細かくみていくと、やっぱり同じようにクォークが無数に集まって出来ているもので、
そのドクダミのクォークがどういう状態かによって、人間への影響も変わってくるはずで。

うんうん。

体に触れて、肩の凝りを治そうとする時、
その意識を、肩の筋肉に向けるのか、
それとも、その筋肉を構成している分子や素粒子に向けるかで、
同じことをやっているようでも治り方が違ってくるんじゃないかと
思うんだよね。

それは、絶対に違ってくると思うね。
もうそれ、肩の凝りっていう結果の、
原因の原因の原因の原因・・って
ずーっとさかのぼってる感覚なわけでしょう?

意識的には、そう。
そこまでたどり着けてるのかってのはわからないんだけど、
空間のエネルギーとかっていうことを考えてからは、
そういう、目に見えないものを高めるっていうことをイメージするようになってきた。

そう思いながら治療をするのと、
何も考えないで治療するのとじゃ、
やっぱり効果は違うと思うよ。

お母さんが料理を作るとき、
ニコニコしながら作ったのと、イライラしながら作ったので、
分量や手順がまったく一緒でも味が違うっていうのと同じで。
さっきの、コーヒーメーカーのスイッチの話しもそうだし。

素粒子のレベルになってくると、
人間がそれを見ただけで、挙動が変わるっていうけど、
それはもう、人間の意識が素粒子に影響を与えてるってことだよね。

そう、意識が持つ力は、やっぱりすごく大きいと思っていて。
思考態っていうものが一番発達したのは人間だから、
意識と言葉と文字っていうのは、人間が持ってる一番大きな能力だと思う。

そういうのって、
目に見えないから、
普段気づかないよね。

気づかないまま、ずっと生きられればいいんだけど、
気づかないままじゃ生きられない時代になってると思うから、
それを伝えたい、っていう思いはすごくある。
自分が生まれた時よりも、いい時代にしてから、
子供たちの世代に引き継ぎたいって思うし。
でも、なかなかこういう、
「意識」や「エネルギー」の話しって、他の人には伝えにくい。

それはわかるなあ。
初対面で深く話せるような話しじゃないし、
誰にでもすんなり理解されるような内容ではないからね。

昔は、それを、
なんとかして教えなきゃ、っていう勢いで、
みんなに分からせようと思ってた。
今考えると、傲慢だったんだね。

人それぞれのタイミングっていうのもあるんだと思う。
あっちゃんも、どっかで、
スッと自分の中に入ってきたタイミングがあったわけでしょう?

うん、
空間づくりっていうことを考えている人がいることや、
勉強会みたいなものが開かれていることは、
だいぶ昔から知ってはいたんだけど、
長女のアトピーが出る前までは、そこに関心は向かなかった。

そこで知ったことが、
それまでやっていた整体とつながってくるっていうのは、
すごく面白い話しだね。

そう、だから、
「早く勉強しなさいよ」っていうことを、
あすみが、体を張って教えてくれたと思うんだよね。
それは、本当に彼女のおかげだと思ってる。
ほんと、ありがたかばい。
(2011年2月 鵜の木「ありがとう生体院」にて)

清水宣晶からの紹介】
あっちゃんは、人間の身体についてのプロフェッショナルというだけではなく、
それよりももっとずっと大きな「宇宙」や「生体」の仕組みについて、深い理解をもっている。
これは、僕が関心を持っていることとぴったり一致していて、
話しを聞きながら出てくるのは、どれも興味の尽きない話題ばかりだった。

あっちゃんは、自分から多くを語るということをしない男だけれど、
彼の経験や技術を必要としている人に対しては、惜しみなくその知恵を分け与えてくれる。

「ありがとう生体院」は、施術をする場でもあり、家族5人が暮らす生活の場でもある。
あっちゃんは、そのホームグラウンドの環境を良いものにすることに常に気を配ることで、
とても多くの人の命を養っている。
場のエネルギーを高めることによって、
その場を、少ない資源を奪い合うゼロサムの場にするのではなくて、
そこにいる全員が生きられる、太陽の下にいるような場にしているのだ。

あっちゃんは、電磁波や農薬のような、
一般にダメと言われているものを排除しようとする考え方を「引き算の考え」と言い、
それらを受け入れた上で良いものに変えようとする考え方を「足し算の考え」と表現した。

彼が理想とする、足し算の考え方というのは、
この先何十年かかけて、着実に人々の認識のメインストリームになるような、
息の長い種類の思想なのだと思う。

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