田中藍

(2008年1月 自由が丘「タパスタパス」にて)

絵で表現するもの

(清水宣晶:) 絵はさ、藍にとって表現の手段なのかな?
藍の描く絵は抽象画じゃなくて、風景の絵が多いけれど、絵で何かを表現しようとしてるの?

(田中藍:) 自然を描いている時、私は心が休まったり、爽やかないい気持ちになってるのね。
それをそのまま閉じ込めて、見た人が、私が感じたのと同じ心境になれるようにと思って絵を描いてる。

静物とか人物を描くこともあるの?

そうだな・・やっぱり、自然がすごく好きだから。自然を描きたくなる。
もし、私がすごく好きな静物とかがあったら描くかも知れない。

自然の絵って、難しいよね。
人工的な物だったら一色しかなくても、自然て微妙な色合いのものが多いじゃない。
技術的な壁って感じることある?
どうしてもこれが表現できない、っていうような。

そういうこと、あるね。
木なんて本当に難しくて、たくさんの種類の木がひしめきあってるから、その葉一枚一枚を描き切るのって難しい。根気と時間の問題なんだけど。

そうか。
逆に、根気をもって時間をかければ、どんな絵でも描けると思う?

うん。その、時間をかけるということが、絵の魅力につながるんじゃないかと思ってる。
そこをさらっと、こぎれいに描いちゃうと、それだけで済んじゃう感じがして。
時間をかければキレイな絵になるとは限らないんだけどね。
自分の絵を魅力的にするには、そのあたりがキーワードな気がしていて、丁寧に絵を描くことで、見た人も、その絵をずっと飾っておきたいっていう気持ちになるんじゃないかな。

自分の絵って、他の人と較べて何が違うと思う?

私の友達に、「共感覚」がある人がいるのね。
目が見えない人が、音から何かの形を感じたり、肌触りを何かの色に感じたりするような、そういう、ある感覚がそれと違う種類の感覚に変わって感じられるものなんだけど。
私の友達は、画像を肌触りで感じる人で、「あなたの絵は空気が動く」って言っていた。
それは、人の意見だから私にはその感覚はわからないんだけど、私も、違うところは空気かなって思う。

確かに、藍の絵って、川の水とか、流れてる感じが伝わってくるよな。
絵の分野で、この人はスゴい!って思う人いる?

昔は、天野喜孝さんの絵は好きだった。

天野喜孝さんの絵って、妖艶でオシャレだよね。

構図が素晴らしくて、憧れた。彼の絵は模写したりしてたな。
あと、サン・テグジュペリの絵は、イラストレーションをしてた時に参考にした。

絵を描くスタイル

絵を描く時間って、下絵と仕上げとで、それぞれどのくらいかかるの?

下絵は2~3時間くらい、ものよっては6時間くらい。
色塗りは10時間弱くらいかな。

結構、時間かかるもんなんだなあ。
写真は撮らないで、帰ってから記憶で描くものなの?

下絵はその場で描いて、仕上げは後からする。

下絵はその場でだろうけれど、後で描く時、色は写真で確認するの?

一応、写真は参考に撮っておくんだけど、あんまり見ないね。
見すぎると、よくない。

風景の細かいところまで覚えてられないんじゃない?

細かいところは、自分がどういう表現をしたいか、によって絵の中に入って決めていく。
自分が一番何が印象が残ったかってことは覚えているじゃない。
たとえば、木からの木漏れ日がキレイと思ってこの場所を選んでいたら、そこを引き立てるように描く。
何が描きたいかということが第一で、それをどう表現したいかによって、後から変わってくる。

じゃあ、実際とは違うかも知れないんだ?

実際よりも鮮やかに描くことが多いね。実際の写真を見ながら描くと、影をつけたり、グレーが多くなったりして、くすんだ感じになっちゃうの。
水彩だと、特にそう。

まったくの想像で描くことってのはないの?
こういう風景があったらいいなあ、っていうイメージで描くことって。

まったくの想像っていうのはない。
イラストレーションの時は、想像で描くことが普通なんだけど、風景画はその場に行くこと自体が好きだからね。

これから描いてみたいものってあるの?

これからは春夏秋冬の四季を描いてみたいな。

夏の絵が多いもんね。

秋の紅葉は、時々描くことあるんだけどね。
冬の雪の絵とかも描いてみたいな。

絵以外の表現

絵以外の表現では、やってみたいと思ってるものってある?

歌うのはずっと好きで、一時期、ジャズのボーカルも習ってた。
それと同じ時期に、ジャズのライブハウスでも働いてた。

楽器じゃなくて、歌なんだ?

小さいころはピアノも習ってたけど、それは練習しなかったし、あんまり好きじゃなかった。

今、さやちゃん(和田清華)もボーカルのレッスンに通って、歌をやり始めてるよ。

そうなんだ?
いいなあ。私もそれ、やってみたいなあ。
私の友達がね、コモンビートっていうミュージカルの団体で、来月舞台に出るの。
それも、見たら絶対やりたくなりそう。

踊りにも興味あるの?

うん、大好き。昔、学校で習ってたの。
自己表現をしたりとか、美しいものを表現するのが好きなんだね。
踊りは、ジャズダンスと、クラシックバレエを習ってたの。
セツモードセミナーで絵を勉強してた時、同じ新宿で週3回ぐらい通ってた。

そんなに色々と興味があったのか!

うん、でも色々あった興味が、今は絵に一本化してきた。

英語の勉強

今、藍は「アリーマイラブ」のテレビドラマを見たりして、英語を勉強してるじゃない。それで何かやりたいことがあるの?

アメリカに叔母が住んでるんだけど、昔そこに遊びに行った時、みんなが話しかけてくれるのに、全然しゃべれなくて。
私は将来、世界中あちこちにスケッチブックを持って、絵を描く旅をしたいのね。
だったら、英語必要でしょう?

そうか。そのために英語をマスターしたいんだ?

うん。アフリカのキリマンジャロとか、ニュージーランドとか、自然があるところに行って色んな絵を描きたい。

なるほどなー、絵を描くことって、スケッチブックさえあればどこでも出来るもんなあ。

海外で個展とか、海外のコンペに出すことになるかも知れないし、
もしかして、ひょんなことから海外に住むことになるかも知れないし。
そうやって、人生の可能性を増やしてくれるものだと思うから、英語は勉強したいな。
(2008年1月 自由が丘「タパスタパス」にて)

清水宣晶からの紹介】
藍は、実に芸術的感性に恵まれていて、日常生活の色々な部分から楽しみを見出している人だ。
絵筆を取れば、その表現は絵という形で表現されることになるけれども、絵筆がなかったとしても、身の回りにある様々なものを使って、いかようにも自分を表現出来るのが彼女の才能なのだと思う。
チャレンジ精神がやたらとあるところもスゴい。自分がやったことがないことは、とりあえず何でも挑戦してみようとする。人生を心から楽しむ「マスターオブライフ」の才能を持つ、豊かな芸術家だ。

田中藍さんとつながりがある話し手の人


対話集


公開インタビュー


参加型ワークショップ